良い買い物
店主はナタンの体格や腕の長さなどを確かめると、飾り棚から一振りの片手剣を取り出した。
「特殊な合金製だから並の人間にとっては重くて扱いにくいが、これなら『
ナタンは店主に渡された剣を構えてみた。それは、初めて持つのに、吸い付くように手に馴染む剣だった。
しかし、値札を見て、彼は眉尻を下げた。
「これ、すごく良いものだとは思うけど、結構高いね……」
「予算は気にしなくていいぞ。隊商の護衛で、結構な額の謝礼をもらったからな」
フェリクスが、口を挟んだ。
「兄さん、あんたが
店主が、フェリクスに目をやり、言った。
「そうだ」
「差し支えなければ、ちょっと見せてもらえないか。俺は、武器の蒐集が趣味でもあるんだが、『
「構わないが」
フェリクスは、事もなげに答えた。
ナタンも、そこで初めて、フェリクスが
彼の「
すっかり商売そっちのけで
フェリクスの外套に隠されていた「
「『
黒い
「この重さは、
「それは貰い物だが、元々は海に沈んでいたものだと聞いている。銘も無いから、作者も不明だ」
フェリクスの言葉に頷きながら、
「おっと、つい夢中になっちまった。そうそう、武器の他に装備品も欲しいって言ってたな」
店主は店の中を歩き回って幾つかの品物を取り出し、
「……とりあえず、これだけ揃えれば当面は何とかなると思うよ。さっきの剣と合わせて、これでどうだ」
ナタンは、店主が差し出した
「ずいぶん、安くない?」
「いいもの見せてもらったからな。ご機嫌割引きってところさ」
言って、店主は笑った。
――何だか適当な気もするけど……無法の街だけに、定価なんてものは無いということか。
考えていたよりも出費を抑えられたことに、ナタンは安堵の溜め息をついた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
当作品に登場する「刀」は、あくまで、この世界で「刀」と呼ばれているものであって、「日本刀」とは異なるものです。
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