雑草メンタル

第1話

「お店のお皿割ったの誰ですか？」

「はい！　私です！　ごめんなさい！」

「財布落としたよ！」

「ありがとー。拾ってくれて助かったよ！」

「ぎゃあああ、カラスにフン落とされた！」

「どんまい！」

「分かったがんばる！」

「立ち直りはやっ！」

　バイトでやらかした時。

　登下校中に財布を落とした時。

　学校前でフンを落とされた時。

　ずっとは落ち込まない。

　一つ一つの事に時間をかけてられない。

　そんな私のメンタルは、きっととてもしぶとい。

　引っこ抜かれても、雑草のようにやる気を生やしてくるから。

　だって、失敗しても、落ち込んでなんていられないもの。

　人生は有限。

　短いから、あっというまになくなっちゃう。

　ぼうっと生きていたくはないの。

「どうしてそんなに前向きなの？」

　みんなはそう言うよ。

　だから、私はいつも答えるよ。

　生まれてきてすぐ亡くなってしまった、私の兄弟の事を。

　たった数日しか生きられなかった兄弟の事を。

　人生は短い。

　いつ終わるか分からない。

　病気にかかっていなくても、怪我をしていなくても。

　いきなり死んじゃう事もある。

　兄弟の死で、そう意識した、させられた。

　だから私は、落ち込む事で時間を無駄にしたくない。

「おーい高瀬、提出物出してないぞー。罰として、掃除追加な」

「ごめーん先生！　次はちゃんと出すから！」

　何かあってもすぐ気持ちを切り替える。

　雑草メンタルで、心の中にやる気を生やすんだ。