第15話:読者さまに読解力を求めて良いものなんでしょうか?

 「読者の読解力が足りないから、自分の小説の面白さが伝わらない」


 こういう意見、創作界隈にいるとわりとよく聞きますよね。あとは読者さまの読解力が低くなったから、難解な文は伝わりにくくなったみたいな論調。今日はこれを掘り下げてみようと思います。


 結論から先に言うと「そんなの気にすることないんじゃない?」てのが私の結論です。だって小説なんて読みたい人は読むし、読みたくない人は読まないんですもの。ただそれだけな気がするんですよね。読者さまが自分の読みたい小説を読む、ただそれだけ。個人の読解力もそこに含まれるわけだから、作家側がとやかくいうことじゃないと思うんですよね。でも、ちゃんと? ちょこっとだけ掘り下げます。途中、気分の悪いことをいうかもしれませんが、私の結論は、前述したとおりなので気にしないでくださいね。


 では、論点を整理しますね。「読者の読解力が足りないから、自分の小説の面白さが伝わらない」と主張する人の論点は、主に下記3点だと思うのです。これを私が偉そうに、Yes or Noで答え、私の考えを話していきます。


 ①難解な文を読めないのは読者の読解力不足である

 ②難解な文を読むためには読者は読書等をして読解力を上げる必要がある

 ③難解な文には難解な文なりの味わいがあるので、簡単な文章に直す必要はない 


 まずは①。私はこれはYesだと思います。小学生1年生に中学生1年生の教科書を読んで理解しろって言ったって、そりゃ無理ですもの。人それぞれ持っている読解力に合わせた本を読んでいるのだと思いますし、だから様々な難度の本がある多様的な現状って、私は素晴らしいと思っているんですけどね? どうですかね?


 次に②。これもYesだと思います。私は理系ですし、物理専攻だったので、物理の「難解な文」をかろうじて読めるレベルです。でも、それを文系の人が読むなんて無理だと思いますし、それを読むためには勉強しなくちゃいけないとは思いますもの。その手段の1つが読書と言われれば、否定のしようがありませんので……。


 で最後に③です。これも私の答えはYesです。そりゃ作者がそうしたいのだから、そうすればいいだけですから、そんなのYesに決まっていますよね?


 てことで、物議をかもしそうな①〜③の論点ですが、私は全部Yesでした。どこかの界隈を仕切ってる人と同じ考え方になっちゃってるかもしれないですねw。でも、このような主張をする人と私が一線を画すとしたら、私は①〜③の論点を自分の小説が読まれない「原因」と考えないところです。


 私は、どんなことでも「目的」が一番大事だと思っています。小説でいうならテーマとも言ってもいいかもしれません。つまり自分の小説は「なにを目的で書いているか?」をはっきりさせる必要があると思っていますし、ここがズレるとわけがわかんなくなるとも思ってます。


 例えば、エンタメ小説で、たくさんの人に読んでもらいたいと思えば「たくさんの人に伝わる文」で書きますよね。でも、読者さまに、自分の難解な文章を味わってほしいと望むなら「難解な文」で書きますよね? 私は、ただ、これだけだと思うんですよ。


 結局「文体」なんて自分の伝えたいことを伝えるための「手段」にすぎないと思っていて、自分の目的にあった「文体」で書けばいいと思っています。つまり、自分がメッセージを伝えたい人に伝わる「文体」で書けばいいと思っています。


 たとえば、小中学生向けの児童文芸で「難解な文体」で書く人はいないわけで、「難解な文体」で書いて小中学生に読解力が足りないと文句を言う人はいないわけです。なので「自分が読んでもらいたい読者さま」に対して書いた文を、読者さまが難解でわかりにくいといったのならば、それは作者の責任であり、読者の読解力の問題ではないと私は考えています。


 つまり自分の小説は誰のために書いているか? ここをはっきりさせてから書き始めることって大切な事じゃないかな? と私は思っています。


 ちなみに、よく叩かれますが、私が小説で伝えたいことを箇条書きににすると下記3点です。


 A.読者さまが興味があるけど「難解な知識」を分かりやすく伝えたい

 B.読者さまに「この世界は面白いことで溢れている」ということを伝えたい

 C.心が沈んていて、落ち込んでいる読者さまの心に火を入れたい


 これを達成するために私が心がけていることは、文体はできるだけやさしく、読みやすくです。そして「難解な知識」の説明はストーリーに自然に織り込んで、違和感なく読んでもらうことを心がけています。


 ただ、私の書く物語は「専門知識が多すぎて難解」とは言われます。あと「知識マウント」だの、「マンスプ」だとも言われます。でも、それはそれで仕方がないと受け入れています。だってそれは私の力量が足りていないのですから……。


 そう、常に精進の日々なのですw

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