第4話 前にもお伝えしたはずですが

 しばらく親友2人と世間話を続けていると、


「……?」


 全校生徒に向けて、学校側からメッセージが送信された。


 その内容は……


【本日の講義はすべて休講となります。校内は立入禁止です】


 ……

 

 休講……? 立入禁止……?


「そもそもオンライン授業だから構内にいる人は少ないと思うけど……」

『そうですね……ですが、家のネット環境が整わない人は学校で授業を受けていますよ』そういえばそうだった。『私も美築みつきもそうですし』

「え……? そうなの?」

『はい。しばらく前からネット回線が調子悪くて……こうやって学校で講義を受けています』それから恭子きょうこは呆れ気味に、『……前にもお伝えしたはずですが……』

「ご、ごめん……」


 やはり私の記憶力は悪い。フロッピーディスクよりも記憶できない。いや……フロッピーディスクと比べるのは失礼だな。フロッピーディスクに失礼だ。


 そんな会話をしていると、通話の向こうから誰か別の人の声が聞こえてきた。


 なにを言っているのかは聞き取れないが、どうやら会話をしている様子だった。


 しばらくして、


『……家に帰れ、ということなので……帰宅しますね』

「ああ……うん。気をつけて」


 そういえば校内は立入禁止になったのだった。学校で授業を受けていた2人は帰らないといけないのだろう。その通達に来た人と会話していたのだろう。


『……なにか、あったみたいですね』

「そうなの?」

『はい……先ほどの先生が、かなり慌てていましたから』

「……さっきの講義のこと、かな……?」


 裁きがどうとか……


 ……裁き……講義の中断……立入禁止……


 これらの言葉が相まって、ようやく私は事態は想像より重いのではないかと思い始める。


「……もしかして……」


 ……もしかして、先生が誰かに殺されたのではないだろうか。だから学校が大騒ぎになっているのではないだろうか。だから今日の講義が休講なのではないだろうか。


「なにか、あったのかな……20年前みたいに」

『……20年前……? たまちゃんも、あの事件を知ってるんですか?』

「……うん……お父さんが在学中の事件だったらしいから……」そこまで言って、付け加える。「詳しく聞いたわけじゃないよ? お父さん……私が小さい頃に亡くなっちゃったから……」


 凄惨な事件があった、ということだけは聞いている。


 詳しい事件の概要は教えてくれなかったし、聞こうとも思えなかった。


 とはいえ20年前……この学校で大規模な事件が起こっていることだけは知っている。


 今回も……なにかがあったのだろうか?

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