第59話:吉野川の日常その3
佐藤さんは今回のメニューで作れるものはある?
「そうね、シフォンケーキを焼くだけなら出来るわ。飾りつけは無理だけど・・・」
なるほど、それだけでもだいぶ助かるけど。
鈴木さんは?
「オムライスの中身は出来るよ。チキンライスでよければ」
今回はふわとろではないオムライス。比較的たまごで包むのも楽では?
「そう思ってるのはあなただけです・・・」
うむ。じゃあ、それも任せよう。
高橋さんはパンケーキが焼けたりするかな?
「ホイップで飾りつけも出来るよ!」
これは思った以上の戦力だ。
「ナポリタンとミートソースのパスタ」
っていうかスパゲティーだよね?
何でパスタって言うのかな?ラビオリやマカロニもみんなパスタなのに・・・
「意外とこだわるのね?」
だって一応プロだよ?調理師免許だって持ってるし。
おもちも雑炊も炊き込みご飯も全部米って言ってるみたいなものだよ?
「そう言われると確かに変な感じがするわね・・・」
それと2種類ソースを用意するのはやめよう。
なので、メニューはスパゲティーナポリタン。
「現場判断ってことでいいんじゃない?吉野川さんが料理長だからね。お任せよ・・・」
メニュー係にも伝えておいてね!パスタ表現は禁止って。
「パフェはどうする?」
あれも作れるけど地味に時間がかかるんだよね。プリンアラモードはどうかな?
「あれはプリンの上に飾りつけをするだけ・・・そういった意味ではシフォンケーキやパンケーキと作業は一緒」
じゃあ、高橋さんが装飾係ね。佐藤さんはパンケーキも生地を焼くだけならいける?
「それなら任せて!」
じゃあ、これもメニューの変更を伝えないと!
さらに言うと、メニューにハンバーグを追加したいね・・・
「なんでわざわざ大変なのにメニューの追加?」
気付かない?
オムライスとハンバーグとナポリタンでデザートにプリン・・・
「お子様ランチだ!」
いいと思わない?
「いいね、ぜひやろう!ハンバーグも仕込んであるのを焼くだけなら問題ないよ!」
早速、鈴木さんがメニューの変更を伝えに行った。
あとはレシピや手順の簡略化かな?
本格的な料理店で出すものではないとはいえ手抜きはしたくない。
しかし、あまり手をかけすぎると時間が足りない。
当日大量に作れるものはどんどん用意する?
でも、結局のところどれくらいお客が来るかだよね?
来客予想が出来ないと、どれだけ準備すればいいかが分からない。
「例年はどれくらいお客が来るものなの?」
それは私に聞いているのかな?文化祭経験は多いけど、メイド喫茶なんて初めてだよ?
たくさん作りすぎて無駄になるのも嫌だね。
ところで、本当に教室でやるの?キッチンが無いんだけど?
「キッチンは調理実習室。そこで作ってここに運ぶの」
うーん、結構距離があるよ?持ってくるの大変じゃない?
途中で人とぶつかるかもしれないし。
「ワゴンとか必要かもね・・・」
やっぱり長距離運ぶのは衛生上もよくない気がするんだよね?
よし、抗議してみよう!どこに行けばいいのかな?生徒会?
文化祭実行委員ってのもあったかも?それとも直接職員室?
一応調理師としての意見だから無碍にされることは無いよね?
たのもー!
職員室の扉をガラガラっと開いて担任の席に突撃。
「どうしたの?吉野川さん・・・?」
文化祭の出し物についてなんだけど、誰に直訴すればいいのかわからなくて。
「直訴って・・・」
うちのクラスは『メイド喫茶』なんだけど、教室で調理するのは無理があります。
「ああ、そういうこと?確か調理実習室の使用許可は出てたはずよ?」
でも、調理実習室で調理したものを教室に運ぶのは現実的じゃないと思います。
当日の廊下の混み具合にもよりますし、衛生的にも問題があると思います!
「あーなるほど、確かに運営側の認識不足ね・・・」
それで、調理実習室での営業をさせていただきたいと思いました。
「それは無理ね。他のクラスも使うから」
やっぱり?じゃあ、どうしようかな?
無理やり教室で調理する方向で考えるか・・・
でも、水道が無いんだよね・・・
水道、水道・・・理科室は?
「ダメよ?」
なんでさー!
「化学部が使うからよ」
なるほど。
あとどこか水道が使えるところは・・・
校庭や体育館ってわけにもいかないし・・・
「それにしてもなんで今頃そんなことを?」
私のイメージしている文化祭におけるメイド喫茶とクラスのみんなが期待しているメイド喫茶に乖離があったといいますか・・・
てっきり出来合いのケーキとかをコーヒーと一緒に出す程度の調理をしないものだと思っていたので・・・
そしたら、みんなはオムライスやら普通の食事を提供したいと・・・
「まあ、吉野川さんボッチだもんね・・・」
この担任エグイところを突っ込んでくるね。
確かに私は部活も入ってないし、みんなと寄り道もしないで毎日すぐに帰ってるけど・・・
「で、クラスのみんなに押し付けられて困ってるのね?」
どうやらみんな料理はそれほど得意ってわけじゃないらしくて・・・
「イジメってわけじゃないのよね?」
多分、調理師の免許を持ってる私を頼ってくれたんだと思いますよ?
「ちょっと待って、調理師の資格があるの!?」
ええ、まあ、一応プロですよ?お給金ももらっていますし・・・
「それは初耳なんですけど?」
あれ?言ってませんでしたっけ?住み込みで働いています。
今はその住み込み先の家主が私の保護者代わりになっています。
「それは今度の三者面談の時にじっくりと聞くことにするわ・・・」
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