第9話:採用決定

それと、聞きづらいし、あまり聞いていいことでもないと思うが、確認しないと。

交際相手とかに泊めてもらうとかは?

「交際相手はいません。恋愛は禁止ということでしょうか?」

一応ね。彼氏を連れ込まれてもかなわないし、仕事に専念してもらわないといけないし。

さっきからなんかモジモジしてるな。

「それと、あの、その、夜伽とかもするんですよね?経験ないのですが、未経験でも大丈夫と書いてあったので」

夜伽?未経験?そっちか!?

いきなり服を脱ぎだした。ビックリしたけど、とりあえず服を着てもらう。

「一応未使用であることを確認していただこうかと思いまして」

何この子?ズレているにも程がある。

夜伽とか必要ないし。だいたい女同士だし。

「女同士でもする方法はあります」

もしかしてそっち系の人?色も黒いし。遊んでる系?でも未経験?謎すぎる・・・

なんか俺の理解を超えてるんだが?最近はこれが普通なのか?


面接 -side:吉野川-

「高校生って書いてあるけど、留年とかしてるの?」

あー。やっぱりそこ気になるよね。19歳で高2って計算合わないよね。

肌の色が黒いのも遊んでるように見えてそうだし・・・まずいかな?

でもここで嘘ついて仕事できないと困るし、正直に話そう。

家庭の事情とか。印象良くないよね。

両親がダブル不倫で離婚して、しかもママも男と逃げたって、どう考えてもマイナス要素しかない。

ここで住み込みの仕事をゲットしないと来月から家がないし。


「学校の寮とかは?」

普通そう考えるよねー。2ダブの私と相部屋になってくれる子がいなかったんだよね。

同級生とか、先輩、後輩関係なく色々手を出したのもまずかったとはいえ、ちょっとした遊びじゃん。


「交際相手に泊めてもらうとかは?」

本命はいないけど、いろんな娘に手は付けてたんだよねー。

でも、ここで聞かれてるのは男性との交際ってことだよね?

それだったら全く経験ないし。オモチャとかも使ってないから新品だし。

「一応ね。彼氏とか連れ込まれても困るし、仕事に専念してもらわないといけないし」

そういうことか。


それと、募集要項には未経験可って書いてあったけど、夜伽とかあるよね。メイドだし。

経験者のほうが良かったのかな?これは失敗だったかな?でも、処女は処女で価値があるよね?

お嬢様は女の子だからオモチャとかを使うのかな?初めての相手はバイブなのか。

でも、こんな日のために処女守っといてよかった。

ああ、持ち物の確認もするよね。スカートとパンツだけ脱げばいいか。

処女膜ってどうやったら見えるかな?

とか考えてたら、服を着ろって?

あれ?確認とかしないんだ。

お嬢様、私のこと信用してくれてるのかな?

夜伽もしなくていいの?メイドには必須かと思ってたのに。


面接 -side:真白-

この娘のメイド知識の出処が気になるけど、新しく探すのも難しいし、合格にしよう。

あとは給料の話とか、いつから来てもらうかとか。

「給料は・・・」

「要りません。ここに置いていただくだけで結構です」

「いつから・・・」

「できれば今すぐでも!」

おおう。マジでか。


「でも、準備とかあるし明日からにしましょう」

だいたいこの娘が寝る場所も用意しないと。

ベッドをもう一個置くのは無理だから二段ベッドに買い換えるか。

でも、注文してもすぐに手に入らないよな。


「そうですね、私も荷物を取ってこないといけないですし」

そうだよ。この娘の荷物だってあるじゃん。

高校生だってそれなりに色々あるわけだよ。

「引越し業者とか手配しないと」

一人暮らし用のパックで大丈夫だろう。

「私が一人で運びます。家具などは処分しますし、それほど荷物も多くはありません」

そんなに今の家にいるのが嫌なのだろうか?


仕方がない。後で一緒に荷物を運ぶか。でも寝る場所ないぞ?

とりあえず家の中を案内する。1LDKだ、書斎兼寝室の俺の部屋とリビングと小さなキッチンがあるだけ。

はっきり言って狭い。でも、この狭さの割に風呂とトイレは別だ。

それに1人で住むにはこれで十分だった。

何よりも地下駐車場にこだわった。その結果がこの部屋ってことだ。

「ここがリビング・ダイニング、そっちの扉の奥が寝室。あっちはお風呂、その隣がトイレ」

一生懸命メモを取っている。根は真面目なんだろう。

「お風呂とトイレは別でちゃんと洗面所もあるんですね」

今まではそうじゃなかったってことか。ユニットバスだったのか?

トイレや風呂場を覗いてメモを取っている。

「洗濯機はここ。ドラム式の洗濯乾燥機よ」

去年買い換えたばかりだ。


「コンロはガスじゃなくてIHでガスとは勝手が違うから気をつけてね」

なにげに、このマンションはオール電化だ。お風呂も電気で沸かしている。

「調理器具も一通りあると思うけど、足りないものがあったら言ってね」

自分では電子レンジやオーブントースターや全自動コーヒーメーカーしか使わないからな。あと炊飯器か。

食器棚や冷蔵庫の中身などを確認してメモを取っている。

「寸胴は無いのですね・・・」

一般家庭には普通無いと思う。何に使うつもりなんだろう?


最後に寝室の中を確認する。風呂トイレ別を優先した結果寝室は4畳半だ。

書斎も兼ねているので、作業用の机もある。その上にあるノートPCで仕事をしている。

「もしかして、Wi-Fiが使えますか?」

ああ、高校生だからスマホとかも持ってるよな。だいたいそれを使って応募してきたんだろうし。

「光回線と無線LANがあるからWi-Fiでスマホとかの接続もできるわ」

そして、ベッドに目をやる。ごく普通のシングルベッド。これで部屋はいっぱいだ。


シングルとは一人用ということ。

「吉野川さんのベッドが届くまでは私はリビングで寝るから」

置き場所の関係で、自動的に二段ベッドしか選択肢はないが。

もしくはベッドを廃止して布団にするか。無理すれば2枚敷けるかもしれない。

どちらにしても今すぐに用意はできない。


リビングのちゃぶ台は実はコタツだ。こたつ布団をセットすれば寝ることもできるだろう。

「いえ、それには及びません。このベッドでも十分二人で寝れます」

ごく普通に同衾を申し出られた。やはりそっちの趣味なのだろうか?貞操の危機なのだろうか?

まあ、今の俺は小さいお子様だ。二人で寝ても窮屈ではないと思う。

「私のことは抱きまくらとでも思ってくださって構いません」

ズレてるよな?今はこれが一般的な感覚なのか?俺が狂ってるのか?

それとも、それが普通な世界に転生したっていうことなのか?

今までと同じ世界で、自分の身体だけが変わったと言う認識は間違っているのかも?

やはりファンタジーなのか?

おかしいのはこの子だよな?

やはりここは異世界なのかもしれない・・・

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