Ep.6 兄さまと葵

SE:廊下をスリッパで走る音

「わぁーーー!!」


SE:ガラス扉を勢いよく開ける音

「父さまも母さまもひどいです!!」

//少し怒り気味


「昨日の晩、あれっだけお願いしたのに!!」


「アラーム設定もしてました、スヌーズ機能も3分毎に設定していたのですよ。・・・なのに・・・なのに・・・・・こんな大事なときに寝坊をしてしまいました・・・。兄さまに顔向けできません・・・。あっ、兄さまには葵が寝坊したこと、絶対に言わないでくださいよね。絶対の絶対ですからね!!」


「本当にわかっていただけていますか?・・・もぅ、父さまも母さまも笑いすぎです。この家には葵の味方は1人もいませんね・・・。」


「それはそうと、お食事の準備をしなければ!!あと1時間しかありません。母さま、急いで準備をしましょう。父さまは・・・お迎えの準備をお願いしますね。」


SE:食器の音


SE:木製玄関の扉が開く音

「兄さまです!!」

//嬉しそうに


SE:2人の足音

SE:ドアの扉開く音

「おかえりなさい、兄さま。・・・・・・・ようこそお越しくださいました、かなでさま。あちらの居間にお食事の準備をしておりますので、どうぞお入りください。お2人とも、お飲み物は何になさいますか?」


「わかりました。すぐに準備してお持ちしますね。」


「ふぅ・・・。この調子で大丈夫・・・。」


SE:話声

「失礼いたします。お飲み物をお持ちしました。奏さまのと兄さまのです。」


「お初にお目にかかります、妹の葵です。以後お見知りおきを。」


「歳は今年で20歳はたちになります。ご存じかと思いますが、兄とは16、離れております。」


「えっ!!??・・・いつも兄から私の話を聞かれているのですか?」


「兄さま、一体奏さまに何を言っておられるのですか?」

//少し怒り気味に


「かわっ・・・・んぐ・・・かわいいだなんて・・・滅相もないです。」


「奏さまからすると兄はどのような存在ですか?」


「お2人の出会いをお聞きしてもよろしいですか?家にいてもほとんど奏さまのお話をしてくださらないですし、恋人の存在すら感じませんでしたよ。」


「私は奏さまとお話をしているのです!!」


「さぁさぁ、お聞かせください。」


「大学でお知り合いになられたのですね。」


「歳の離れた妹の話を淡々と・・・。兄さまが今の私と同じ年齢の頃・・・と言いますと、兄さまが20歳で私が4歳・・・。幼き頃の記憶が・・・、ほぼありませんよ。」


「その年齢だと、確かに兄さまの子どもと言われてもおかしくないです・・・・。」


「私・・・幼い頃から大学に出入りしていたのですか!!それはそれで・・・なんと言いますか・・・。んっ?父さまや母さまの研究室にいたのではなく、兄さまや奏さまの研究室にいたのですか?」


「となると・・・・、その当時の奏さまにもお会いしていた・・・ということですか?」


「研究室のアイドル・・・・・どこかで聞いたことがあるような・・・・。」


「兄さまから変なことを聞かれていませんか?」


「今、声に覇気がありませんでしたよ。何か隠していませんか?」

//耳元で低めのトーン


「それなら良いのですが・・・。いい機会ですので、兄さ、兄のことでお伝えしておきます。」


「まず1つ目、寝起きはかなり悪いです。目覚ましのスヌーズ設定をお忘れなく。2つ目、寝相が悪いせいか、100%の確率で髪がはねています。いつも兄が使っているワックスは1か月程度でなくなりますので、ストックを置いておくことをおススメします。3つ目、食事に対する欲があまりありません。基本的に好き嫌いはありませんが、その日の気分で何かを避ける傾向があります。4つ目、お酒を飲むと笑い上戸になります。うるさいようでしたら、その辺に寝かせておいてください・・・・。5つ目・・・、」

//フェードアウト


「このように、挙げればキリがありませんが、それも含めて兄なんです。」


「兄が私を大切に思ってくれているように、私にとっても大切な存在です。年齢が離れていようが、兄は兄です。こんな兄を、どうぞ末永くよろしくお願いいたします。」


「そういえば、父さまや母さまとも面識があったのですよね。何も言われませんでしたか?」


「・・・きっと大学時代の奏さまをご存知で、人柄が良いからですよ。私は正直・・・驚きました。」


「ですが、こうしてお会いして、たくさんお話をして、奏さまの事を知ることができました。今は家族が増える嬉しさでいっぱいです。」


「奏さま、どうぞ兄をよろしくお願いします。」


SE:食器を洗う音

「兄さま。」


「奏さま、ステキな方でしたね。」


「葵に何も言って下さらなかったのは・・・何か理由があるのですか?」


「・・・複雑ですか・・・・。」


「普通って何でしょうね。」


「十人十色。人の考え方は様々です。兄さまの事ですから、葵の反応が怖かったのではないですか?」


「ふふふ、葵はお見通しです。」


「今までの葵にとって、兄さまはたった1人でした。・・・でも、今日から2になるんです。なんて心強いんでしょう。」


「兄さまも、奏さまも葵の大切な兄さまです。賑やかになりそうな予感です。」

//だんだんと声が小さくなる、フェードアウト


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