死神の首飾り

白江桔梗

プロローグ

「――貴様、言い残すことはないか? これよりお前を初期化し、転生させる。何か一つ願いを叶えるとは言ったが、輪廻の枠組みから外れることを自ら望んだ奴は初めてだ。人間として産まれることは叶わんのだぞ」


「ええ、良いんです。☐の父と母はあの二人だけで充分ですから」


 ああ、またこの夢だ。

 アタシの身体を使って、誰かがそう答えている。


「……そうか。人間とは分からん生き物だな。であれば、今よりお前を創り変える。見習いとなるがゆえ、本来備わっている力はないが問題ないだろう。願いを叶えたいのであれば、勤勉に働くことだな」


 アタシの頭が強く握られる。

 痛みもなく、怒りもなく、悲しみもない。

 今まで抑圧されてきたはずの想いだって、何が重しだったのかすら分からない。

 ――そうして、アタシはペたりと膝を着いた。


「さらば、人間よ。そして、たったこれより貴様は見習い死神となった。今日から私の下で働いてもらう」


「ミ、ライ……? シニ、ガミ……?」


 見たことがあるという意識があるのに、起きれば忘れてしまう夢。

 何かが分かりそうで、何も分からない。思考を続けようとすれば、途端に靄がかかり始める、それはまるでと言わんばかりに。

 アタシは、死神。死して、行き場を求めている魂を回収するだけの存在。ただそれだけ分かっていれば良いはずなのに、妙にざわつくこの胸は何なのだろうか。


 ああ、ほら、もう、朝が来る。

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