第2話

 その時、ぼくと目が合った。

 怒った顔だが、とても綺麗な目をしていて、彼女は本当にとても可愛い女の子だった。


 ぼくは、何気ない仕草も可愛いと思った。けれども、ふと、ぼくは思ったんだ。今日は彼女はその仕草が何か悩みを抱えている風だったことに。


 いそいそと厨房へと向かう彼女の横顔が、時々元気がなさそうに見えることからもわかるんだ。


 もし……その悩みをぼくに打ち明けてくれたなら……。

 きっと、解決してやれるだろう。


 ぼくにはそれができると確信していた。

 

 さっきの可愛いウエイトレスがパタパタとトレイを持って来た。ぼくの注文通りにトマトサラダにペンネのボロネーゼ。そして、オレンジジュースが載っていた。


「ご注文は以上で!!」

「いや、後もう一ついいかい? 不躾ですまなけど、君の悩みも注文してもいいかな?」

「え?! どうしてなの?」


 彼女はトレイを胸元へ寄せて驚いていた。


「ねえ、注文はまだかなあ?」

 

 無情にも、さっきのお客に彼女が呼ばれてしまった。 

 ぼくは心底がっかりして彼女の後ろ姿を見つめていた。

 彼女が運んでくれたランチをゆっくりと食べて、このレストランの閉店時間まで粘ろうと思ったけれど……。


 いつの間にか、彼女の姿はない。


 結局。


 彼女の悩みは……。

 その日は最後まで聞きそびれてしまった。


 ラストオーダーが終わって、レストランのレジを済ませてからぼくは考えた。


 きっと、また彼女に会いに来よう。

 

 その日からぼくの悩みは、彼女が何か悩みを抱えていることになったんだ。

 

 週末のお昼に時間が少し空いた。

 ぼくは東京の有名な大学に通っている。でも、その学内では成績は微妙だった。


 それにしても、彼女はどんな悩みを抱えているのだろう?

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