第6話:猜疑心


 漆黒の呪蛇じゅじゃが消滅すると同時、慈愛に満ちた光の手は、役目を終えたかのように霧散むさんする。


「……な、何が起きているの……?」


 ウェンディが呆然と呟いた直後、


「ぅ、うぅん……っ」


 仰向けに寝かされたテーラーが、もぞもぞと動き出した。


「お、お母さん……!?」


 慌ててベッドへ駆け寄り、母の状態を確認する。


(うそ、あざが……消えてる……!)


 テーラーの顔を覆っていた紫の痣は、きれいさっぱり消え去り、冷たい土色に染まっていた肌は、健康的な温かみを取り戻していた。 


「お母さん、聞こえる!? 私よ、ウェンディよ……!」


 娘の呼び掛けに応じるように、母のまぶたがゆっくりと開かれる。


「……ウェン、ディ……?」


「お、かあ、さん……っ」


 ウェンディの瞳から流れ落ちた雫が、テーラーの頬にポトリと落ちた。


くらい闇の中でも、あなたの声はずっと聞こえていたわ……ありがとう。それから――ごめんなさい、随分と迷惑を掛けちゃったわね」


「うぅん、全然そんなことない……っ。私の方こそ、ごめんなさい……あのとき、逃げて……怖くて、助けられなくて……っ」


「あなたが謝る必要なんてないわ。大きく立派に育ったわね」


「~~っ」


 ウェンディは泣いた。

 嬉し涙が止まらなかった。

 普段は冷静な彼女だが、このときばかりは、感情の制御がつかなかった。


 母と娘はお互いに抱き締め合い、十年ぶりの『再会』を喜んだ。


「――ウェンディ、お母さんはもう大丈夫だから、そろそろ泣き止んで、可愛いお顔が台無しよ? さぁほら、あなたの素敵なお友達を紹介してちょうだい」


「……うん……っ」


 ウェンディは袖口で涙を拭い、コクリと頷いた。


「こちらがルナさん、ローさん、サルコさん、王国聖女学院でできた、私の大切なお友達」


 紹介にあずかったルナたちは、


「はじめまして、ルナ・スペディオです」


「ロー・ステインクロウです」


「サール・コ・レイトンですわ」


 それぞれ丁寧な所作でお辞儀をする。


「私はテーラー・トライアード、娘がお世話になっております」


 テーラーはペコリと頭を下げ、ルナの目を真っ直ぐに見つめた。


「眠っている間も、ぼんやりとお話は聞こえていたのですが……。ルナさんのポーションで、魔獣の呪いを解いてくださったんですよね?」


「えっと……一応、はい」


「やはりそうでしたか。――此度このたびは本当にありがとうございました。私が今こうして無事でいられるのは、全てあなたのおかげです。この御恩は、一生忘れません」


「いえ、どうかお気になさらず、私は当然のことをしただけですから」


 ルナはそう言って、慈愛に満ちた顔で微笑んだ。

 いつもは泣けてくるほどにポンコツな彼女だが、このときこの瞬間に限っては、まるで本物の聖女様のようだった。


「――さて、私もずっと寝てばかりじゃ駄目ね。そろそろ動かないと」


 ベッドから立ち上がろうとするテーラーに対し、


「ちょっ、何しているの!?」


 ウェンディは慌てて「待った」を掛けた。


「何って……立とうとしただけじゃない」


「お母さん、十年間も寝たきりだったんだよ? 筋肉とか骨とか、いろいろ弱っているはず。しばらくの間は、安静にしておいて」


「いや、それがねぇ……。不思議なことに、体の奥から力が湧きあがってくるの。なんだかむしろ若返った気分だわ」


 テーラーはそう言って、冗談っぽく笑ってみせた。


 しかしこれは、錯覚でもなんでもない。

 実際に彼女は、若返っていた。


 聖女の魔力は万物を浄化し、その性能を最大限に引き出す。

 ルナが作った最高級のエリクサーは、魔獣の呪いを粉砕するだけに飽き足らず、寝たきり状態で衰えた筋肉と骨を完璧なコンディションに引き上げた。


 そのためテーラーの肉体年齢は、十五年ほど若返っているのだ。


「とにかく、私は大丈夫よ。ほら、ちょっと見ててね? ――よっこいしょっと」


 彼女がベッドから立ち上がろうとして、介助用の手すりを掴んだその瞬間、『バギッ』という豪快な異音が鳴り響く。


「……あら、もろくなっていたのかしら?」


 テーラーの左手には、見るも無残にひしゃげた、木の手すりがあった。


 これは手すりが脆くなっていたわけでも、不良品だったというわけでもない。

 彼女がその手その力で、むしり取ったのだ。


 ルナ本人はまったく知るよしもないのだが……彼女の作るエリクサーには、重篤じゅうとくな『副作用』があった。


 まず大前提として、『聖女の魔力は万物を浄化し、その性能を最大限に引き出す』。

 聖女の魔力を体内に取り入れた者は、全身の細胞が異常なほどに活性化し、そのスペックが大幅に向上する。

 普通のムーンウルフであるタマが『月下の大狼』と化したように、テーラーもまた人の域を超えた力の片鱗を手にしたのだ。


「ほら見て、ウェンディ。お母さん、もうすっかり健康体でしょ?」


 テーラーはハキハキと元気よく、自室の中を歩いて見せた。


「た、確かに……」


「ふふっ、もしかしたら聖女様の御加護があったのかもしれないわね」


 テーラーのちょっとした冗談を受け、


(あ、あわわわわわわ……っ)


 ルナは泡を吹きそうになった。


「せっかくウェンディのお友達が、こうして遊びに来てくれているわけだし、今日は飛びっきりのごちそうを作っちゃおうかしら! ――あっそうだ、主人にも連絡しておかないと! ルナさん、ローさん、サールさん、またお夕飯のときに会いましょう」


 テーラーがそう言って、パタパタと自室を出た直後、


「お、おおお……奥様ぁ……!?」


「な、何をしている、急げ! 大至急、旦那様へ連絡をするんだッ!」


嗚呼あぁ、奇跡だ……聖女様に感謝を……っ」


 使用人たちの狂喜乱舞する声が聞こえた。


 トライアード家が歓喜に包まれる中――ウェンディは改めて、ルナと真っ直ぐ向き合う。


「ルナさん、お母さんの呪いを解いてくれてありがとう……本当に、本当にありがとう……っ」


 ウェンディはルナをギュッと抱き締め、何度も何度も感謝の言葉を繰り返した。


「いえいえ、お気になさらず(……大丈夫、だよね? 私が聖女だって、バレてないよね……? サルコさんのフォローもあったし、きっと大丈夫……なはず)」


 ルナは内心あわあわしつつも、ウェンディの背中を優しく撫ぜた。


 その後、ルナにしっかりと感謝の気持ちを伝えたウェンディは、クルリと振り返る。


「サルコさんとローさんも、本当にありがとうございました」


「ふふっ、私達は何もしておりませんわ」


「そーそー、ルナのポーションが凄いだけだって」


 サルコとローは柔らかく微笑み、穏やかで優しい空気が流れる中、ウェンディが何かを思い出したかのように「はっ」と手を打った。


「――あっ、そうだ。みなさんをお部屋に案内しなきゃですね」


 そうしてルナたちが、テーラーの自室を後にしようとしたそのとき――とある『ブツ』を目にしたサルコが、顔を青褪あおざめさせる。


「ウェン、ディ……っ。あなた、これ・・をいったいどこで……!?」


 彼女の視線の先――戸棚の上に飾られているのは、両の掌に乗るサイズの黒い蛇をした彫刻だ。


「それは呪い祓いの魔道具。お医者様が『テーラーさんの回復祈願に』って、置いてくれたんですけど……あれ? どうして壊れているんでしょうか」


 蛇の彫刻は、何故か頭部がぐしゃぐしゃに粉砕されていた。


「ウェンディ……落ち着いて聞いてください。この置き物は、呪い祓いの魔道具なんかではありません。神国しんこく西部の少数民族が、誰かを呪い殺すときに使用する、『呪像彫刻じゅぞうちょうこく』ですわ」


「……えっ……」


 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。


「呪像彫刻の頭部には、猛毒に浸け込んだ髪の毛が大量に埋め込まれており、呪いの依り代として使われるのですが……。この呪蛇じゅじゃの頭部は、何故か・・・粉微塵に・・・・なって・・・いる・・ので、おそらくもう危険性はないでしょう」


 テーラーに掛けられた呪いが、聖女のエリクサーによって圧殺あっさつされた結果――呪いの起点であった呪像彫刻は、強烈な跳ね返りを受けて砕け散ったのだ。


「とにかく、こんなものは百害あって一利なし。今すぐに処分してくださいまし」


「わ、わかりました……っ」


 ウェンディはすぐに使用人を呼び、呪像彫刻を破棄してもらった。


 そうして後始末を付けたウェンディは、ルナたちをそれぞれの客室に案内する。


 当然その間、彼女の胸中は穏やかじゃなかった。


(陛下が、陛下の手配したお医者様が……お母さんを呪っていた……?)


 確かに、おかしな点はあった。


 高名な医者にてもらっているのにもかかわらず、母の容態は快方へ向かうことなく、むしろ悪化の一途を辿るばかり。

 世界的な魔獣専門の名医から『呪いとはそういうものだ』と説明を受けたため、無理矢理に納得していたのだが……やはりどこか不信感のようなものはあった。


 そして今回、呪像彫刻という明らかな物証が出てきてしまった。


(……い、いや、そんなわけない……っ。皇帝陛下は慈愛に満ちた素晴らしい御方で、わざわざうちの屋敷にまで来て、お母さんの容態を――)


 そこまで考えたところで、とある可能性が脳裏をよぎる。


 十年前・・・、アドリヌスはトライアード家に足を運び、病床に伏したテーラーの様子を見にきたことがあった。


【――案ずるな。お前の母は必ずよくなる。この俺が保証しよう】


【……はい……。ありがとうございます、陛下……っ】


 アドリヌスはそう言って、幼いウェンディの頭を優しく撫ぜた。

 その言葉は彼女にとって、非常に頼もしく、ありがたかった。


 しかし今になって、その出来事に『別の側面』が見え始めた。


(もしかしてアレは……呪いがちゃんと効いているか、確認しに来ていた……?)


 そこまで至ったところで、ウェンディはブンブンとかぶりを振る。


(駄目、悪い風に考えたらキリがない。……今は任務中、全てを忘れて聖女を――ロー・ステインクロウを監視しよう)


 ウェンディはその強靭な自制心で、心の乱れを抑えつけたのだが……猜疑心さいぎしんの種は、彼女の心に深く根を下ろした。



 大転生祭は明日の正午から開催される。

 王国から帝国への移動疲れもあるため、ルナたちは今日一日、トライアード家の屋敷でゆっくりと過ごすことにした。


 時刻は十八時。


 ルナ・ロー・サルコ・ウェンディの四人が、大広間で楽しくお喋りしていると――コンコンコンとノックの音が響き、女性の使用人が入って来た。


「失礼します。御夕飯の支度ができました。奥様がダイニングでお待ちです」


「えっ、もうそんな時間?」


 すぐに掛け時計を確認したウェンディは、びっくりしたように小さく口を開ける。


「あはは、楽しい時間は一瞬で過ぎちゃいますね」


「なんか損した気分になるよねー。学校の授業とか、めちゃくちゃ長く感じるのにさ」


「大丈夫、今日はお泊りですから、まだまだ夜時間がありますわ」


 その後、ルナたちは使用人に連れられ、ダイニングルームへ移動。


 するとそこには、ステーキ・ローストビーフ・ロールキャベツ・サーモンのグリル・ペスカトーレ・新鮮な野菜の盛り合わせ・多種多様なスープなどなど……とても豪勢な料理が、これでもかと並んでいた。


「うわぁ、凄いごちそう……!」


 お腹をペコペコに空かせたルナは、キラキラと目を輝かせる。


「ふふっ、お口に合えばいいんだけど」


 テーラーはエプロンを外しながら、柔らかく微笑んだ。

 ここに並ぶ料理は全て、趣味がこうじて調理師免許まで取得した彼女が、腕によりをかけて作ったものだ。


「お、お母さん、いきなりこんなに張り切って……本当に体は大丈夫なの?」


「もうウェンディは心配性な子ねぇ」


 テーラーの身を案じたのは、ウェンディだけではなく、トライアード家の使用人たちも同じだ。


「お客人の料理であれば、我々が最高のものをお作りしますから!」


「今日ばかりはどうか、ご安静にしていてください……!」


「奥様はまだ病み上がりなんですよ!?」 


 使用人一同は口々にそう言って、必死に押しとどめたのだが……。「大恩あるウェンディのお友達には、自分の手料理を振舞いたい」というテーラーの意志は固く、がんとして譲らなかった。


 ちなみに……ウェンディの特技が料理なのは、母の影響を強く受けた結果である。


「さぁみんな、適当なところに掛けてちょうだい」


 ルナ・ロー・サルコ・ウェンディは、それぞれ思い思いの席に着き、


「「「「「――いただきます」」」」」


 両手を合わせて食前の挨拶。


 ルナは目の前にあったロールキャベツをはむっと口に運んだ。


「ん~っ、おいひい……!」


 キャベツの甘みとお肉のうまみが絶妙な調和ハーモニーを成し、口の中が幸せでいっぱいになった。


「こらこら、口にモノを入れたまま喋らないの。行儀悪いよー?」


 侍女であるローは、主人の礼儀作法をすぐにいさめる。


「ふふっ。そんなに慌てて食べなくても大丈夫よ? おかわりはまだまだたくさんあるから、好きなだけ食べていってね」


「ふぁい……んぐっ、ありがとうございます!」


 帝国料理に舌鼓を打った後は、屋敷の中にある天然の大浴場をいただく。


 誰よりも先に頭と体を洗い終えたルナは、肩までとっぷりと温泉につかる。


「あ゛ぁ~、生き返るぅ~……っ」


 お湯の中でスライムのように溶けていると、一拍遅れて、ロー・サルコ・ウェンディが湯船に入ってきた。


「ちょ、ウェンディ胸、でっか……!」


「まぁ、これは凄いですわね!」


「い、いくら女の子同士でも、ちょっと恥ずかしいですよ……っ」


 ローとサルコがきゃっきゃっと騒ぎ、ウェンディは顔を赤くして恥じらう。


(な、なるほど、『着痩きやせするタイプ』ということですか……。さすがはメインヒロイン、なんて立派なものを……っ)


 ルナとて決して小さくはないものの、ウェンディのそれは非常に豊かだった。


 その後、岩風呂・壺湯つぼゆ・寝ころび湯、天然の大浴場で一日の疲れを洗い流した彼女たちは、寝間着に着替えて大広間に集合する。


 みんなで一緒に布団を敷いたところで――定番の枕投げが始まった。


「そーれ、行きますわよー! ハァ゛……ッ!」


「ちょっサルコ、ガチ過ぎ……!?」


「おーっほっほっほっ! 我がレイトン家の家訓は、『いかなる勝負も全力投球』ですわ!」


「ふーん、そっちがその気なら……こうだぁッ!」


 ローとサルコは子どものようにはしゃぎながら、枕投げの応酬を繰り広げた。


 二人はこう見えて非常に相性がよく、普段から楽しそうにつるんでいる。


「あはは、ローもサルコさんも元気だなぁ」


 穏やかに微笑むルナの顔面に、


「えいっ!」


「ぶはっ!?」


 ウェンディの投げた枕が直撃した。


「ふふっ、隙ありですよ?」


「くっ……やりましたね、ウェンディさん!」


 そうして体を動かした後は、世界的に人気のカードゲーム『UNU』に興じる。


「――ふっふっふっ、これで私の勝ちです!」


「ルナ、ウヌって言っていませんよ?」


「ウヌ゛ァッ!?」


 ひとしきりカードゲームで遊んだ彼女たちは、燭台しょくだいの火をフッと吹き消し――みんなで一つの布団に集まって、『恋バナ』を始める。


「恋バナと言えばこの私、『夜会の女帝』ことサール・コ・レイトン! 今宵の舞台は、私が取り仕切らせていただきますわ!」


『三度の飯より恋が好き』と豪語するサルコが、今日一番の盛り上がりを見せた。


「それではみなさん、まずは軽いジャブとして――好きな殿方のタイプを発表していきましょう!」


 ニッコニコのサルコが、手始めに軽めの話題を提供すると、


「え、えー……っ」


「なんていうか、ちょっぴずいね……っ」


「殿方のタイプ、ですか……っ」


 恋愛経験ゼロの三人は、気恥ずかしそうに頬を赤らめた。


「では、言い出しっぺの私から、時計回りに行きましょう。私の好みのタイプは――家格かかくが高くて、お金持ちで、誠実で、お優しくて、頭の切れる殿方ですわぁ!」


「うん、なんとなくわかる」


「サルコ、欲望に忠実だもんねー」


「夢は高く、ですね」


 サルコの発表が終わり、次は右隣のウェンディだ。


「私は……そうですね。やっぱり優しい人でしょうか」


 彼女の回答は、メインヒロインぜんとしていた。


「くっ、とても『それっぽい』回答ですね……っ」


「まぁ優しいってのは大事だよねー」


「まさに王道を行く答えですわ!」


 今度はローの番だ。


「んー、私なー……」


 彼女が割と真剣に悩んでいると、視界の端にルナが映り――答えが決まった。


「……うん、手の掛からない人がいいな」


 主人に振り回されることが多い、苦労性の侍女じじょらしい回答だ。


「な、なんか今、物凄く視線を感じたんだけど……」


「あらあら、これはまた現実的な答えですわね」


「とてもローさんらしいです」


 そして最後は、我らが聖女様。


「うーん……好きな異性のタイプとか、あんまり考えたことないなぁ……」


 三百年前、ルナの日常は血と死に満ち溢れていた。


 朝起きれば、戦場に出て魔族を殲滅せんめつ

 昼ごはんを食べたら、別の現場で魔獣を駆逐くちく

 夜は日付が変わるギリギリまで、最前線を駆け回る。


 たまの休日や隙間時間には、一人で部屋に引き籠り、私小説・同人誌・ポエム集といった、黒歴史を量産する毎日。

 色恋にふける時間はもちろん、まともに異性と関わる機会さえなく、どんな男性がタイプかなど、ろくに考えたことさえなかった。


「あまり考えたことがないのなら、今がまさにそのチャンスですわ! 将来のミスマッチを避けるためにも、しっかりと好みのタイプを言語化しておきましょう!」


「う、うん、わかった。……でも、好みのタイプかぁ……」


 ルナは眉を曲げながら、しばらくじっと考え込み――とある『答え』を導き出す。


いて言うなら……私より強い人がいいなぁ」


 そんな殿方は、まず存在しない。

 このまま価値観が変わらなければ、ルナは独身街道かいどうまっしぐらだ。


「ふーん、強い人ねぇ(この子が変な男性に引っ掛からないよう、侍女として目を光らせておかねば……)」


「なるほど、ルナには守られたい願望があるのですね!」


「女の子らしくて、とてもいいと思います」


 四人全員が好みのタイプを発表し終えたところで、サルコがバッと立ち上がる。


「ふっふっふっ、いい具合に盛り上がってきましたわね! さぁ次のお題は、『ズバリ! あなたが思わずドキッとする、殿方の仕草は!?』。今度はさっきの反対、ルナから順番に行きましょう!」


「うえ゛ぇっ、私から……!?」


 結局この日、深夜遅くまで女子会は続き――ルナは三百年越しの『青い春』を楽しむのだった。

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