赤恥ロンダリング

グカルチ

第1話

 あるタレントの男、若い男はさんざんむちゃをやったし恥ずかしいこともたくさんやったというが、いまでは聖人扱いされている。それを疑うものもいるが、彼はひどい人格者だ。黙っていても自分の失敗を恥じるし、感謝をすぐ口に表す。人からとても信頼され好かれている。故に彼はそれに誇りをもち、数々の過去の罪を洗い流そうとした。ケンカ、浮気、裏切り、etc彼にとっては小さいものを。


 それでも彼にも消したい過去がある。とても恥ずかしいものなのだ。それを彼の敏腕マネージャーだけが知っている。彼とは20年来の親友で、戦友である。男は彼に依頼をした。

「私の“恥ずかしい記憶”を消してくれ、買収でもなんでもいい」

 マネージャーは言われた通りにする。とある業者に依頼し、順調に事はすすんだ。ゴシップ記事でかかれることもあった彼の悪い噂さえ封じることに成功した。

 だがそれから半年ほどたって別の問題が起こる。業者のやり方がずさんで、彼に関する噂を、別のものにおしつけて悪役にしてしまう。だが悪役にしてしまったものも金や脅しで黙らせる。あまりにずさんでこれでは、別の問題や悪評が広まると憤ったタレントの男は業者に直接問い合わせる。

「いったい、どんな杜撰な仕事をしてくれたんだ、何かあれば俺の名前を出すつもりじゃないだろうな」

「そのつもりですよ、私たちだって、これまでいろんな仕事をしてきたんだ、だがグループはきれいな仕事にも手を付け始めている、過去の杜撰な仕事、そのロンダリング……とはいわないがあなたと同じで"箔をつけたい"あなたの悪評を沈めたということでね……その悪評自体あとで沈めればいいだけで、もはや運命共同体です」

「貴様!!」

「おっと、私に何かをしようとしても無駄です、この件は腹心の部下数人と共有していますから、一度に彼らの口を封じることなんて、いくらあなたでも不可能です、そうして過去の恥を上塗りすれば、あなたはまた罪を犯す……それが嫌だから私に依頼したのでしょう?……"また過去が恥ずかしくなったらご依頼を、このことはご内密に、あなたの悪評や恥の情報はたくさんもっているのですよ"」

 男は歯ぎしりをたてた。男の事を疑念に想いながら、どこかでは信頼していたことを……この男とはふるいなじみだったが、この仕事の後に殺そうとおもっていたのだ。……そして彼が一番恐れている"恥"消したい過去とは、ライバルを大勢この男に頼んで殺してきたことだった。

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赤恥ロンダリング グカルチ @yumieimaru

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