第9話 唇
「今夜、君の唇を奪いに行くよ」
なんて言うから、期待しちゃってさ。
口紅も気合い入れて選んだのよ。
何回も鏡の前で塗って、笑ってみて、拭いて。
上品に、清楚に、でも少しだけ強気に。
透明感のある赤にしたの。
彼、気に入ってくれたみたい。
唇、引きちぎって持ち帰っちゃった。
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