堕天使転生~ダメダメな私の異世界生活~

鳩胸ぽっぽ

第1話

「久しぶりの外だ」


 爽やかな風……とはいいがたい蒸し暑い日航が差し込む真夏。私はジャージ姿で外に出ていた。

 私はいつも退廃的な生活を送っている。いわゆる引きこもりという奴だ。女の子で引きこもりという言葉で想像するのはいじめとかだろうが、そんなことはない。私は容姿完璧、頭脳完璧、メンタルも鬼のように強く、いじめも何のその。学校なんて余裕で通っていたのだが……。


「ああー! かっくいー! ギャラオンのエビル公爵様かっくいー!」


 私が大ハマりしているオンラインゲーム、ギャラクシーオンラインというゲームに出てくる人間のイケメン貴族、アードロイド・エビル公爵。イケメンでダメ人間にも優しいまるで仏のようなキャラクター。

 何を隠そう、私の推しなのである。私はまず面で惚れた。それはもう、ひとめぼれだった。中学二年生のころには中二病まで患っていた私の中二病を完治させるほど、その顔面の威力は強かった。これが公式からお出しされた瞬間、私は公式を拝んだ。


「エビル公爵のフィギュア倍率高かったぁーーーーーー! 今日はウキウキ気分で帰れるぅー!」


 私はフィギュアをリュックにしまい、バスに乗り込もうとした時だった。

 なぜだか知らないがめちゃくちゃ速度を出して走ってるトラックがこちらに来ている。不幸がこちらにやってきているな?

 だが、私はそんな不幸に見舞われるほど馬鹿じゃない。私はトラックを躱した。トラックはそのまま電柱に突っ込んで止まった。


「あぶねえあぶねえ。事故に巻き込まれるのはごめんだからな。っていうかなんでトラックがこんな豪快に突っ込んできてんの?」


 まったく。

 私は一応警察に電話しておいて、バスに乗り込んだのだった。バスの中はとても涼しい。

 あー、生き返るぅ。外は暑かったからなぁ。私は席に座り、ゆっくりしていると。今度はバスの運転がなんかおかしい。めちゃくちゃ蛇行運転だった。


「ちょっと運転手さん!? なに……気を失ってるーーーーっ!?」


 なんで!? 

 バスに乗り込んでるのなぜか私ひとり。運転手さんが気を失っている。車の運転なんて知らんし! 

 どうしようどうしよう!? なんで今日こんな死に目にあうことおおいの!?


 バスは周囲の車を巻き込みながら突き進んでいく。そして、そのまま建物に突っ込んでいきはじめたのだった。曲がれるわけがない。

 私は扉をこじ開け、運転手を引きずり外に身を投げ出した。なんとか脱出出来て、私は少しケガを負ったが無事生き延びた。が。


「リュック持ってく余裕なかった……」


 エビル公爵様が……。

 くっ、人の命には代えられない。なんで今日こんなに私は死にそうになってるんだ。

 運転手を失ったバスはそのままビルに突っ込んでいった。今日はやけに事故にあう。


 私は救急車を呼び、運転手さんを救急車に乗せて、見送った。警察もやってきて事故の聴取をされて、私はお金も何もなく、家までパトカーで送ってもらうことになったのだった。


「嬢ちゃん、ついてないね」

「私ひとりで乗ってるバスの運転手さんが気を失って事故って……。さっきもトラック突っ込んできたんですよ」

「……あの電柱につっこんだトラックの事故現場にいたのかい?」

「はい。トラックが私めがけて突っ込んできて。なんとか躱して帰ろうとしたときバスが」

「お嬢ちゃんお祓い行ったらどうだい? 二回もこんな事故にあうなんてついてないよ」


 警察さんの言う通りです。

 今日なんでこんな死に目にあってんだろ。と思っていると、踏切で突然、パトカーに衝撃が走った。

 車がつっこんできたのだった。前と後ろから。車がぐにゃりと変形し、私の足がはさまっていた。


「大丈夫かい!?」

「足挟まって……」

「待ってろ、今緊急停止ボタンを……」


 と、言っている矢先、カンカンという音が鳴り響く。

 踏切が下りて、電車の姿が見えたのだった。


「もうきた!?」

「なんなんだよ今日! ちょ、動けない……」

「止まれ! 後ろの車の運転手と前の車の運転手は何してるんだ! 発煙筒! ボタンを押して発煙筒!」


 警察の人がスムーズに対応してくれていた。

 電車もそれに気づいたのか、目の前で止まってくれている。


「危機一髪……。君、なんでこんな災難ばかり起きてるんだい……?」

「私が聞きたい」

「とりあえず救助しよう。応援を今呼ぶ!」

「……なんかガソリン臭くないですか?」

「えっ……。オイル漏れだ!」

「えっ」


 ガソリンが垂れ流されているようだった。

 ちょ、なんか嫌な予感がする。今日はなんか世界が私を殺そうとしてきている感じがしている。この流れだったらもしかして。

 私の予感はあたった。

 私がガソリンのほうを見た瞬間、後ろの車のバッテリーが突然ショートしたのか火花を放った。そして。


 大きな爆発が私もろとも包み込んだのだった。










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