何でも願いが叶うと聞いたので、異世界転移を頼んでみた。

無名の猫

第一話 ババアの女神に興味は無い

 薄暗い部屋。

 ここはどこだろうか。

 意識が朦朧もうろうとして居る。

 何があったんだっけ……覚えてないや。

 俺がそんな事思って居ると誰かが話しかけてくる。

 

「あ、起きた?」


 誰だ? 誰が僕に話しかけて居るんだ?

 聞いた感じ女の人っぽいんだけど……

 目が見えない。どうやって見れば…… 


「っあ見えてないじゃん! ったく面倒臭さいんだから! ホイ!」


 ふざけた声と共に僕の視界は開ける。

 すると目の前には1人の美少女がいた。

 向こう側を向いて居て顔が見えないが、声を聞く限り可愛い子と言う事は分かった。

 僕の視界が開けてから数秒後にその美少女はこちらを見る。

 そしてこちらに向いた顔は可愛い可愛い美少……老婆がだった

 腰は曲がって無いが、顔にしわがよって居る。

 顔見なきゃ最高なのに……どこぞの顔バレする前のVtuberだよ。それ。

 すると例の老婆(Vtuber)は言う。


「何だよその顔! 仕方ないじゃ無い! どんなに不死の女神だって歳には勝てないんだから! だからその顔辞めろって!」


 どうやら顔に出てたらしい。

 声可愛かったら容姿も気になるじゃん。

 そして綺麗じゃなかったからね。誰でもそうなる。元より、老婆ババァは想像できなかったせいか、更に嫌な顔をして居るのだろう。

 そう言えば老婆アイツ女神って……何だと? 女神だと? 


「おいさらに嫌そうな顔辞めろよ! おい!」


 僕はアークプリーストの駄女神を想像したから現実に戻って更に嫌な顔をしてしまった。

 こんな本当に何もできそうに無い駄女神、呼んで無い!

 

「もう良い、人間ーーいや迷える魂よ。何を知りたい」


「何を知りたいって……全て知りてぇよ。なんで僕は此処に居るんだよ。老婆ババァ


「っあ! 女神に向かってその言い方悪く無い? 悪く無い⁉︎」


 老婆がまだそんなことをほざいで居る。女神だなんてほざくな。老婆ババァ老婆ババァだ。どう頑張ったって変わらない。


「はぁ」


「ため息付いた! 酷い! 酷い!」


 目を閉じよう。そしたら美少女が頭に浮かぶ筈だから……駄目だ。さっきのインパクトが強すぎて老婆が思い浮かんでしまう。


「……ゴホン、取り乱したわ。我の名はマリン。お主ーー小宮こみや 蒼真そうまは死んだ。のでこの場にいる。死因は……『笑い過ぎ』だ。……そんな宮には願いを一つだけ願いを叶えてやろう。来世のことだ。自由にやって良い」


 おい老婆コイツ、僕の事ザコ宮って呼んだぞ? 女神としてどうなんだ? そうだった、老婆コイツ老婆ババァだった。忘れてた。

 来世かぁー。そうだな。


「貴族の家に生まれて美人でエロい体つきした若いメイドに囲まれながら育ちたいです。出来るなら10人以上。『蒼真様っ! お背中流しましょうか?』とかさ、『蒼真様大好きです!』って感じにハーレム生活を……」


「無理です。クソウマ。お前にはメニュー表やるからコレ見てみろ」


「何で駄目なんだよ! 『貴族になってメイドとハーレム』! ってか何だよ! メニュー表って!」


 そう言いながら僕は例のメニュー表を開いた。

 なになに? 『異世界転移』、『貧乏生活』、『地獄』、『記憶を抹消してまた日本人として生活』? クソ過ぎないか? 流石に。


「どう言う事だよ! 異世界転移以外ハズレじゃ無いか! どう言う事だよ!」


「どうもこうもありませんよ。クソウマさん。お前はクソのクソウマ何だから」


 何だよ老婆コイツ、死人に向けてそれはひどく無いか? 一つ願い事が叶う訳じゃ無いの!?

 だとしてもまだ希望があるのが一つ。いや、一択しか無いだろ。コレ。


「異世界転移でお願いしますクソ老婆ババァ


「っあ! ババァって言った! 酷い! 酷い! ……まぁ良い。了解した。異世界転移な。準備する」


 マリンが魔法陣を描き始める。

 六角形の星描いて……? 丸!


「完成!」


 おい待て良くそれ小学校の頃ノートに書いてたぞ。

 中学の頃は腕にも。あらまぁ痛々しい。

 そしてマリンに導かれるままに魔法陣の真上に立つと、マリンが言う。


「クソウマ、最後に言い残すことは無いか?」


 え? 僕殺されるの? まぁいい。言い残す事はある。コレは僕の意思証明になるのだから。

 「すぅ」と大きく息を吸ってから言う。


「異世界で大成功してハーレム生か……」


「転移」


「おい待……」

 

 僕は声と同時に光に包まれて目を閉じた……!


              *


 再び僕が目を覚ますと、僕は道のど真ん中に居た。


「ギャグガァ⁉︎」


 二足歩行のトカゲーーリザードマンがこちらに向かって走ってくる。


「危なっ!」


 僕が急いで道の端に寄ると、リザードマンが何かを引いてるのが分かった。

 馬車。それは馬車だった。

 リザードマンが二匹、その後ろに居た馬車の操縦者が僕の横に来ると通り過ぎる瞬間に言って来た。


「危ねぇんだよ! ガキ! ちゃんと前みろ!」


 よし、決めた。コイツの顔一生忘れねぇわ。

 

              *


 本当に来ちゃったなぁ。異世界。

 なんかこう、実感湧かねー。

 右を見れば居酒屋らしき茶色いレンガで出来た建物。

 左を見れば武器屋らしき赤と茶色で構成されたレンガで出来た建物。

 今俺は道を歩いている。道じゃ適当過ぎるって? 仕方ないでしょ、ここ商店街とも住宅街とも言えないもん、初めて見る光景過ぎて。

 時代の中世ヨーロッパ感がえげつない。

 此処に送ってくれた老婆マリンにも感謝かもな。

 どうするか? 魔王軍を倒す程の戦力を手に入れるか、それまで好き勝手生きるか。

 サキュバスでも狩りに行くか? 狩るってよりかは乱獲だけど。

 駄目だ。サキュバスが全て友好的とは限らないからな。辞めるか。

 取り敢えず異世界の定番『ギルド』にでも行くか。


           *


「此処がギルドか」


 馬鹿デケェ教会あるなって思ったらギルドでした。デカ過ぎ。

 そして馬鹿デケェギルドの目の前に立ち、無駄にでかい扉の前に立ち、扉を開ける。

 

「お、重ぇ……お願いします、ギルドの登録って此処ですか?」


 扉を開けた後、大きな声でそう言うとすごくわかりやすい位置に『ギルド登録』と言う看板があって頬を赤く染めた。恥ずかしい……!

 とある壁にはクエストが張られて居る所、とある所には物品売買場がある。

 何故かわからないが、今日は人が少ない。俺の親父の毛と同じくらい少ねぇ。


「ギルド登録の看板に着いたんだが、コレどうすれば良いん?」


 人がいっぱい並んでいる。俺の友達の数より多いでこれ。凄。

 なんかどっかのディスラワニーランドみたいな行列だな。

 

「はぁ。並ぶか」


       

           *


 進みが遅ぇ。カレコレ3時間並んであと少しなの何故なの? そう言うイベントなno……

 受付のお姉さんが、可愛いだと……?

 やっぱ最高だな。異世界。

 

「次の方は……ソウマ・コミヤさん、こちらへお願いします」


 可愛い受付のお姉さんに呼ばれた! やった! やった!


「それじゃあソウマさん。この契約内容をしっかり呼んで、血液を数滴落として下さい」


 えっ? 嫌なんだけど。無理無理無理無理無理……

 俺が顔を振って居ると、受付のお姉さんがこっちを向いて話した。

 

「血液が無理なお方はこちらにサインを」


 出来んのかよ! サイン! 驚いて損したわ。本当に。

 契約内容長っ! 読むのにざっと5分掛かりそう。

 行列の原因多分これや。(確信)

 

          5分後


 やっと……やっと読み終わった! 契約長い! 契約長ぁーい!

 んじゃ此処にサインを……


「小宮っと……」


「何語なのです? それはいったい」


 ん? 漢字分かんないの? この世界。はぁ。


「コレは漢字って言って、母国の文字だよ」


 コレ言いたかった! 母国語! でも何で文字読めたんだ? そこら辺は楽で良かったぉ


「カンジ? まぁ良いです、それじゃあ此処に手を置いて下さい」


 そう言って受付のお姉さんが宝石の挟まった木の板を渡して来る。

 手を置く? 何をするんだ? 一体。

 一応乗せる。

 数秒すると受付のお姉さんは、木の板を僕から取り、木の板を見つめる。


「ステータスは……おお! 1高いです! 防御が3079で、魔法耐性も有る! HPも16876あるし、走力も高い! ……ですが攻撃が100で、魔法攻撃力が50。SPは5……おまけに知力は……100⁉︎ 知力だけ平均値ですよ! 凄いです! 貴方は、タンクがお似合いで……」


「剣士でお願いします」


 即答する。こう言うのは決まってるんだよ。剣士って。それに1レベの癖にが癪だし。


「え? け、剣士ですか?」


 お姉さんが戸惑いながら聞いて来るのでまた言う。


「はい、剣士です。1レベのステータスが低く立ってタウリンとかで252振りしたら伸びますよね? なので。努力値なら借金してでも振りますので」


 僕が超早口で言うと、お姉さんは勘弁したように言う。


「分かりましたよソウマさん。じゃあ、ギルド登録しときますね」


 どうやらギルド登録が出来たらしい。あっさり……いや、並ぶ時間が長かったけど、良かった。この世界でもニートは辛いから。

 

               *


 次に俺が向かったのはクエストと依頼だった。

 防御とHPは高かったから体を使うけど高くて楽なやつ……有る訳ない……


「あった!」


 それは一件の依頼だった。

 依頼内容は『魔道具実験の試験台になって欲しい』と。

 皆さん危ないと思うだろう? 下手に一生治んないような傷負わせられたりされないだろう。大丈夫。何故って? 依頼の下に『タンクの方歓迎』と書いてあったからだ。いや別にタンクって認めた訳じゃないし? 

 下手に死ぬ事は無いだろう。防御は高いって書いてあったし。極め付けは報酬。金貨100枚らしい。やった! これで僕も少金持ちだぁ!

 えーっとで、この依頼どうやって受けるんだ?

 破って取っても……ええい! 取っちゃえ!

 周りが「あの子、行っちゃうの?」とかうるさいけど無視しよう。防御は高い筈だから。

 そして僕は依頼を破って取ってから、依頼人の場所ーー町外れの研究所に行くのだった。


              *


「町外れの研究所って言ったって、雰囲気強過ぎだろ」


 研究所は、言うなれば豆腐ハウスって奴だろう。

 真四角の研究所……逆に雰囲気が強ぇ。

 そしてこの研究所の壁は元々は白だっただろう。

 だが今僕の目の前にある研究所の壁は黒ずんでおり、至る所に落書きがされて居る。うっわぁ。此処だけ治安悪っ。

 ……で、入り口は何処だ? ……あった! 

 緑の扉が少し歩いた正面の左側にあった。


「此処は居るの勇気いるなぁ」


 まぁいい。依頼だ、依頼。

 よし、頑張るぞ。


「あのー、ギルドの依頼できました。ソウマです。魔道具の実験を……」


 僕が扉を開けながらそう言うと、奥から声が聞こえる。


「おー、やっと来てくれたか。ギルドの方よ、こちらへお願いしますワイ」


 爺さんの声が聞こえる。雰囲気はあるなぁ。

 声が聞こえた方に行くと、一本道の廊下を見つけた。

 廊下を少し歩くと、鉄の扉が守って居る一つの部屋を見つけた。

 この部屋なんだろ? まぁ、此処からは聴こえてないし。何かの倉庫だろう。

 鉄の扉を離れて10秒近く歩いた所にもう一つ、鉄の扉があった。声の主は此処からだろう。んじゃあ、行くか。

 扉を開くと、そこには机とおじさんと猫耳の少女ーー亜人が居た。

 博士! 予想通りで良かった! 白髪、眼鏡、髭、白衣。全てが予想通りだ!


「博士。この方ですか?」


 猫耳の少女が言うと、博士は言う。


「そうじゃな。……ギルドの方よ。私の発明品ーーこの嘘発見器を使用してもらう。ので、手を置いてくれ」


 爺さんの言われるままに嘘発見器に手を置くと、爺さんに質問をされる。ってか嘘発見器が魔道具? そこ突っ込んだら負けか。仕方ない。突っ込まずに話を進めよう。


「実は、自分の事をイケメンだと思ってる?」


「いいえ」


 僕が答えると、嘘発見器が点滅しながらブザーを鳴らす。

 え? 嘘吐いて無いけど。嘘吐いて……バリバリ吐いたわ。


「ブー、ブー。ブー、ブー」


 そしてブザーがなり終わったかと思ったら、嘘発見器は点滅し始めた。

 

「え? コレってもしかして……」


「ボオーン‼︎」


 嘘発見器は爆発した。


               *


 僕が気づくと、目の前には猫耳少女がいた。

 ……あれ? 爆発したのに生きてる。そうか! 僕の耐久力のお陰か! ラッキー! でもタンクを認めた訳じゃ無いぞ?

 って何で嘘発見器で爆発するんだよ! 下手したら死ぬぞ⁉︎ これ!

 そして猫耳少女はこちらをゴミを見るような目で見る。

 最っ悪! 

 んだよ! イケメンだと思ってたもん! 駄目じゃ無いもん! もう!


「博士、起きましたよ。報酬を」


 そう言いながら、猫耳少女は部屋を出た。

 数分後、猫耳少女は博士を連れて帰ってきた。


「そうか、目が覚めたようじゃな。……フッ。ミル、じゃあ報酬を頼む」


 博士がそう言うと、猫耳少女ーーミルがお金が入った革製の袋を持って来た。

 ってこの博士、完璧に笑ったよね! 笑ったよね⁉︎ ひどく無い?

 そして僕はその袋を手に取ると、博士が話し出した、


「そんじゃあ、お疲れ様じゃ! 解散で!」


「そんな軽いノリで言われましても自分爆発してるんですけど⁉︎ まあ、報酬が多いので良いんですけど!」


 今日の成果

 爆発して100金貨貰って終わった。

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