第9話 深層の攻略講座2
俺は深層にやってきた。
深層は、下層よりもさらに危険な場所だ。
普通に戦っていたのでは、命がいくらあってもたりない。
かくいう俺も、深層に潜れるようになったのはここ1年くらいのものだ。
最初は少しづつ潜っては逃げての繰り返しで、情報を集め、攻略法を極めた。
深層は下層以上に知識と経験が生きる場所だ。
だから俺としても解説のしがいがあるな。
深層に降りた直後、現れたのはデュラハンだった。
デュラハンは首のない騎士のモンスターだ。
かなり剣の腕が優れていて、まともに戦えばまず勝ち目のないモンスターだ。
しかも深層の中だとあまり遭遇率も高くないから、完全に初見殺しなんだよなぁ……。
「さて、デュラハンの倒し方ですけど、これはかなり難しいです」
デュラハンの単純な戦闘能力なら、深層の中でもずば抜けて強い。
まず剣術でこいつに勝つことはできないだろう。
だが、こいつにも弱点はあるのだ。
俺は何度もダンジョン探索を繰り返すうちに、こいつの弱点もつかんでいた。
「はい、じゃあデュラハンの倒し方行きます。こいつは首がないので、実は目も見えないし、音もきこえてません。こいつは魔力を探知して相手の位置を把握しています。なので、まず身体の魔力を閉じてください」
俺は、感覚を研ぎ澄ませて、身体から魔力を消し去る。
「はい、これで魔力で感づかれることはなくなりました。ただ、完全に魔力を閉じてしまってるので、こちらの防御力はないも同然です。気を付けていきましょう。攻撃が当たると最悪即死します」
魔力を絶ったからといって、これだけで勝てるような単純な相手ではない。
なにせ相手は剣の達人だ。
俺はさっそく、剣でデュラハンに斬りかかる。
しかし、少し反応がおくれながらも、デュラハンは見事に俺の剣を受け止めてみせた。
魔力も感じられない、目も見えない、音も聞こえない。
だが、デュラハンは第六感的なもので、俺の攻撃に反応してくる。
さすがに魔力を感知されているときほどではないが、それでもデュラハンは俺の動きに合わせてくる。
それほどデュラハンは強かった。
魔力を絶っているから、こちらはダメージを喰らうわけにはいかない。
デュラハンはなにも見えないままでも、俺のことをじりじりと追い詰めてくる。
そして、デュラハンの攻撃が俺に当たる。
俺の腕が、切り落とされてしまう。
「ぐ…………っく…………」
さすがはデュラハンだ。
なにも感じないはずなのに、それでも俺のことを追い詰める。
それだけデュラハンの剣は優れていた。
「腕を斬られてしまいました。だけど大丈夫です。すぐにエリクサーを飲めば回復します」
俺はエリクサーを飲む。
すると、斬られたはずの腕が生えてきた。
デュラハンには基本押し負けるが、こうやってエリクサーを飲めばなんとか耐えられる。
こっちは魔力を絶っているから、まじで命がけだ。
あと少し位置がずれていたら、即死していた。
だが、デュラハンの前で魔力を使用するわけにはいかない。
魔力を使った瞬間、デュラハンは俺のことを正確に把握して瞬殺してくるだろう。
「こんな感じで、エリクサーを飲みながら耐えてください。そのうち隙ができます」
基本的にデュラハンのほうが圧倒的に格上だ。
だから、こうやって攻撃に耐えながら相手の疲れを待つ。
まさにゾンビ戦術だ。
こっちにはまだまだエリクサーがある。
「そこだ……!!!!」
デュラハンにできた一瞬の隙を、俺は見逃さない。
俺はデュラハンの鎧を貫き、心臓を葬った。
「よし……!」
なんとか倒すことができた。
「いやぁ、いきなりデュラハンとは運が悪かったですねぇ……。さすがに深層の敵の中でも最強なだけある……。ちょっと今日はもう疲れたので、終わりにしたいと思います。ここまで動画を見てくださりありがとうございました」
俺はさすがに、そこで撮影を切り上げることにした。
深層最強のデュラハンの攻略を撮れたら、取れ高としては十分だろう。
かなり質のいい講座動画を撮れたと思う。
「これで初心者もみんな立派なダンジョン探索者になれるだろう!」
あとは春日さんに動画を渡して、編集してもらえば任務完了だ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
607: 名無しのダンチューバー
マジで深層の動画もあって草
608: 名無しのダンチューバー
ソロで深層はやばいって
609: 名無しのダンチューバー
え……デュラハン……!?
なにこれ……!?
610: 名無しのダンチューバー
嘘だろ……初めて見たわ
611: 名無しのダンチューバー
デュラハンが映像に残ってるのって世界初じゃねえか?
612: 名無しのダンチューバー
デュラハンとかよく撮れたな……
てかなんで生きてる
普通デュラハンとか出会って生き残るやついないだろ
613: 名無しのダンチューバー
めっちゃレア映像じゃん
デュラハンとかめったに遭遇できないだろ
614: 名無しのダンチューバー
>さて、デュラハンの倒し方ですけど、これはかなり難しいです
そりゃあそうだろ……
615: 名無しのダンチューバー
ていうか、まるで倒せるような言い方だな……
616: 名無しのダンチューバー
いやまさか……
さすがに深層のモンスターは倒せないって
617: 名無しのダンチューバー
深層とか実質アイテム拾いにいくだけだからな
普通深層のモンスターとか出会った時点で死
618: 名無しのダンチューバー
>はい、じゃあデュラハンの倒し方行きます。こいつは首がないので、実は目も見えないし、音もきこえてません。こいつは魔力を探知して相手の位置を把握しています。なので、まず身体の魔力を閉じてください
え……? そうなの……?
619: 名無しのダンチューバー
デュラハンって目見えないんだ
はじめてしった……
620: 名無しのダンチューバー
どこ情報だよそれ
そんなこと知ってるやついないだろ
621: 名無しのダンチューバー
wikiにも載ってないぞ
国家機密レベルだろその情報……
622: 名無しのダンチューバー
身体の魔力を閉じるってどういうこと……?
623: 名無しのダンチューバー
おまいら魔力閉じれる……?
624: 名無しのダンチューバー
無理ゲー
625: 名無しのダンチューバー
>はい、これで魔力で感づかれることはなくなりました。ただ、完全に魔力を閉じてしまってるので、こちらの防御力はないも同然です。気を付けていきましょう。攻撃が当たると最悪即死します
いや、そりゃそうだろw
626: 名無しのダンチューバー
防御捨ててて草
627: 名無しのダンチューバー
どうするつもりだ
死ぬぞ
628: 名無しのダンチューバー
うわあああああああああ
腕斬られてるじゃん!
629: 名無しのダンチューバー
グロすぎ……
630: 名無しのダンチューバー
いや、そりゃ負けるだろ
これは無理だな
631: 名無しのダンチューバー
でも動画あがってるってことは生還してんじゃね?
632: 名無しのダンチューバー
こっからどうやって勝つんだよ
633: 名無しのダンチューバー
さっさと動画見たいけど読み込みクッソ遅い
634: 名無しのダンチューバー
世界中が見てるからなw
635: 名無しのダンチューバー
>腕を斬られてしまいました。だけど大丈夫です。すぐにエリクサーを飲めば回復します
あ…………?
636: 名無しのダンチューバー
全然大丈夫じゃなくて草
637: 名無しのダンチューバー
いやだからそのエリクサーがないのよ
638: 名無しのダンチューバー
エリクサーを飲めば回復しますじゃねえ
639: 名無しのダンチューバー
真顔でとんでもないこと言ってて草
640: 名無しのダンチューバー
もっと焦ろよw
なんで冷静なんだよw
641: 名無しのダンチューバー
痛みを感じないのか……?
642: 名無しのダンチューバー
エリクサーがそもそも手に入らないってw
643: 名無しのダンチューバー
>こんな感じで、エリクサーを飲みながら耐えてください。そのうち隙ができます
いやどんなw
無理wwww
644: 名無しのダンチューバー
ゾンビアタックで草
645: 名無しのダンチューバー
お前にしかできんわそんなことw
646: 名無しのダンチューバー
やべえ、言ってる意味はわかるけどわからねえ
647: 名無しのダンチューバー
>そこだ……!!!!
うおおおおおおお
マジでデュラハン倒してる……!!!!
648: 名無しのダンチューバー
杉田つえええええええ!!!!
649: 名無しのダンチューバー
ありえないwwww
650: 名無しのダンチューバー
バケモンかよこいつ……
651: 名無しのダンチューバー
>ちょっと今日はもう疲れたので、終わりにしたいと思います。ここまで動画を見てくださりありがとうございました
乙!
652: 名無しのダンチューバー
いや、やばかったな……
653: 名無しのダンチューバー
めちゃくちゃ濃い動画だった……
654: 名無しのダンチューバー
なんっにも参考にならねえw
655: 名無しのダンチューバー
>これで初心者もみんな立派なダンジョン探索者になれるだろう!
なれるか!
656: 名無しのダンチューバー
これのどこが「ダンジョン探索者なり方講座」なんだよw
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます