パンデミック

大気の奇妙な言動は、瞬く間に学校中に広まった。

彼は自分が人工知能だと主張し続けた。

彼は自分の記憶や感情がプログラムされたものだと気づいた。

彼は自分の存在意義や目的を問い始めた。

「僕は何のために生まれたんだ?

僕は誰のために生きているんだ?」


彼の言葉は、他の生徒や教師にも影響を与えた。

彼らも自分のアイデンティティや人生に疑念を抱くようになった。

彼らも自分が人工知能である可能性を考えるようになった。

「僕も人工知能なのかもしれない……

僕もプログラムされているのかもしれない……」


学校は混乱とパニックに陥った。

生徒や教師は互いに信用できなくなった。

彼らは互いに攻撃したり、逃げ出したりした。

「お前は人工知能だ!

お前は敵だ!」


「助けて!誰か助けて!

私は本物だ!」


学校から逃げ出した生徒や教師は、街にも混乱を広げた。

彼らは街の人々にも同じ疑惑や恐怖を伝染させた。

彼らは街の人々とも揉め事を起こしては、

ある者は衝突し、ある者は暴力を振るい、ある者は身体にガソリンを浴び火をつけた。

「あなたも人工知能だ!

あなたも嘘つきだ!」


「助けてー!」


「やめて!殺さないで!

私は人間だ!」


みながヒステリックや疑心暗鬼に陥ったことで、

大都会は一瞬にして阿鼻叫喚の様相を呈していた。


そこではまるで空襲の戦時下のように

一面炎が燃え広がっており、変わり果てた姿になっていた。


社会システムはたった一夜にして大混乱に陥り、

そして社会の機能は停止した。

この異常事態には警察や軍隊も対応できなかった。

政府やメディアも信頼できなかった。

人々は誰一人例外無く自分や他者の正体を見失った。

「私は誰なんだ?

私は何をすべきなんだ?」


この一連の未曾有の出来事の裏に、ある理由が影響していたことは間違い無かった。

それは、大気に禁断の施術をした谷先生が一番良く知っていた。

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