【短編】底辺雑談配信者で陰キャの俺が、恋愛相談に乗ってアドバイスをしたら何故か学校でモテモテになってしまった。

みっちゃん

第1話 底辺配信者

「じゃあ、今日の配信はここまで!概要欄やSNSで予定確認してみてくださいね~!それじゃあ、お疲れ様~。あっ、チャンネル登録お願いしま~す。」


俺、岡田 蓮はそう言って配信画面を閉じ、座っていた椅子から立ち上がった。

一日の疲れも溜まっていたので、俺はその足でベットの方に歩いて行き仰向けに倒れ込んだ。


「はぁ~。今日も視聴者数、一桁だったな。」


ちょうど一年ほど前、高校に入学すると同時に俺はこうして「おかちゃん」という名前で定期的に配信をしている。

だが、一年続けても登録者は増えずに、いわゆる底辺配信者をし続けているのだ。

顔出しにはまだ高校生ということもあり抵抗があったので、雑談配信や、顔が映らないように手元の配信などを中心に活動している。


「先週のも未だに再生回数250か。なかなか増えないなぁ。でも、一人でも見てくれる人が居るなら続けないとな~。」


昔、とある人の配信を見た時に自分もこうなりたいと憧れを抱き始めたのだが、結果はこのザマである。


「明日から、また学校か……。」


今日は日曜日。明日から学校がまた始まってしまうと考えると、大きなため息が自然と口から出て来た。

それもそのはず。俺には彼女が居ないどころか、友達もほとんどいない。

学校では陰キャを極めており、学校なんて行く必要はないとも思っている。

だからこそ、俺は配信で少ないながらも視聴者と話すことが心のよりどころとなっていたのだ。


「蓮~。お風呂出来たわよ~。」

「は~い。」


そんなことを考えていると、一階から母さんのそんな声が聞こえたので俺は気だるげに返事をして布団から立ち上がり、重い足取りでお風呂と明日の学校の準備を済ませて今日は眠りについたのだった。






『はぁ、早く帰って配信でもしたいな~。』


翌日、学校に登校した俺は一番窓際の後ろから2番目の席で頬杖を付きながらそんな風に思っていた。

今も、まだ5月末だというのに10月に控えている修学旅行の実行委員決めに誰も立候補せずにダラダラと時間が過ぎている。


「もう、蓮でいいんじゃね?」

「は!?」


沈黙の中、そう口を開いたのは金色に染まった短髪に、焦げた肌色。

気崩した制服に身を包んだクラスのカースト上位に位置している前川大河だった。

彼も早く決めたいと思い、その役を陰キャの俺に擦り付けようという算段らしい。


「本当?やってくれると助かるんですけど……。」


前川の言葉に便乗して、修学旅行の実行委員決めの進行を務めていた学級委員の大沼 寧々さんがそう俯きながら小さな声で声かけてくる。

彼女の眼鏡の奥に見える瞳は、何かを祈り期待するような目だった。

が、俺も目立ちたくはない。ここはきっぱり断らなければ。


「いや、俺は……。」

「部活も入ってないんだし、どうせ家帰っても暇だろ?やれよ!」


俺の意を決して発した断りの言葉は最後まで紡がれることなく、前川が被せて行ってきた言葉にかき消されてしまった。

でも、俺は諦めない。


「別に、暇って訳じゃ……。」


その時、俺の背筋はビクッとした。

クラスのみんなの視線が俺に集まっていたのだ。

そしてクラス中の視線が言っている「お前がやれよ」と。


「やります……。」


こんな感じで俺は気が弱く、何かあるとすぐに周りの言いなりや、空気に流されていたのだ。


『はぁ、厄介なことになってしまったな。』


俺はそんな風に悲壮感に漂っていても、時間は待ってくれずいつものように学校生活を送って帰宅したのだった。





「皆さん、いらっしゃいませ!この配信へようこそ!ここで一緒に素晴らしい時間を過ごしましょう!」


今日も配信の予定になっていたので、俺は学校から帰宅してすぐに配信を付けた。

配信を始めてすぐに2という今の視聴者数が表示される。


”おかちゃん!こんばんは!”

”今日の配信も楽しみにしてますね!”


立て続けに同じ人からのコメントが来る。

おかちゃんというのは俺の配信をするときの名前である。


『この人だけは俺が配信を始めた頃から応援してくれるんだよな』


アカウント名「nanashi」さんは常に俺の配信を楽しみに最後まで見てくれている唯一無二の一人である。

俺は「nanashi」さんのコメントに返事をしていると、新しいコメントが送られてきた。


”初見です。”

”おかちゃんの声、落ち着くわ!ずっと聞いていたい!”


「初見さんいらっしゃい!今日は雑談配信なので、どんどんコメントして行ってくださいね。「nanashi」さんはいつもそう言ってくれてありがと。お世辞でも嬉しいよ。」


”お世辞じゃないよ!”


そんな風にいつも通り「nanashi」さんとの会話を楽しんでいると、さっきの初見の「モブ眼鏡」さんから再びコメントが打ち込まれた。


”少し相談があるんですけど、大丈夫ですか?”


「うん、大丈夫だよ!俺でよければ相談に乗るよ!」


俺は初見さんが長居してくれて、さらにコメントで相談がしたいと言って来てくれたことにテンションが上がって、二つ返事でオッケーしたのだ。


”ありがとうございます!”


「それで、どんな相談かな?」


”えっとですね、相談したいことというのは……”

”うんうん。”


「うんうん。」



”私、好きな人がいるんです。”



それは、彼女が居ないし出来たことも無い俺にとっては一番苦手とする相談、「恋愛相談」だったのだ。




――――――――――――――




配信者名:おかちゃん

登録者数:1

視聴者数:2

同接数:2



――――――――



皆さん、最後まで『底辺雑談配信者の俺が、恋愛相談に乗ってアドバイスをしたら何故か学校でモテモテになってしまった。』を読んでいただきありがとうございます。


6話で完結いたしますので、どうか最後まで読んでいただけると嬉しいです。

もしよろしければ、★★★やコメントを残してくれると嬉しいです!!


今後とも応援よろしくお願いします!!



みっちゃんでした(*'▽')


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る