第288話 ◆団体戦の果てに。

『決ちゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああくっ!!!!!! クラン【命謳】!! 大会覇者である【大いなる鐘】を打ち倒し、新たなる覇者としてここに君臨っ!! 最後の伊達選手と越田選手の一騎討ちは正に圧巻っ!! 日本史上類を見ない壮絶な戦いとなりましたっ!!』


 司会【御剣みつるぎ麻衣まい】の絶叫とも言うべき興奮した説明の後、観客の歓声が更にわっと大きくなる。


『伊達選手、山井選手、鳴神選手、川奈選手が観客たちに大きく手を振っております!! 観客の声に応えながらも、負傷した【大いなる鐘】に対し回復魔法を施しております!!』

『い~い男だねぇ……』


 唸る荒神に、御剣も大きく「はい!」と返す。

【ツイスタX】では【命謳】の優勝に際し、凄まじい量の反応が流れていた。


 ――全人類が泣いた。

 ――映画化決定!

 ――うぉおおおおおおおお!!!!命謳最強!!!!

 ――このクランが最初新人部門に出ようとしてたって本当ですかね?

 ――いや、逆に観たかったかもだが…いやいやこれ以上の結末はねーか

 ――「命謳優勝」世界トレンド1位おめでとうございます!

 ――めい!おー!めい!おー!めい!おー!めい!おー!


 そしてそれは、招待席でも起きていた。


「やった! やったよみこと!」

「優勝! お兄さんたち優勝したよ!」


 伊達みことの友人、桐谷きりたに明日香あすか山下やましたれいみことの肩を揺さぶりながら興奮して言うも、当のみことはただぼーっと観客席に手を振る玖命を見ていた。

 桐谷と山下は顔を見合わせ、


「み、みこと……?」

「だ、大丈夫……?」


 そう聞くも、やはりみことからの反応はない。

 横に座っていた四条がみことの前に立ち、その頬を両手で包む。


「おめでと、みこと


 そんな四条の言葉に、みことはようやくソレを実感したのか、ただただ静かに、大きな滴を瞳から流した。

 双眸そうぼうから流れる涙、涙、涙。

 止めどなく溢れる涙を目にし、桐谷と山下はみことの隣に腰掛け、静かに寄り添った。


「おめでとう、みこと

「良かったね、みこと

「……ぅん……うんっ!」


 嗚咽おえつ交じりの返事に、桐谷、山下、そして四条は、ただ微笑みを浮かべた。

 そんな中、四条のスマホに着信が入る。


「…………ん? …………んっ!?」


 スマホの画面に記されていた名前は――伊達玖命。


 四条が玖命からの着信に気付いた同時刻、【樹子姫のGoToヘブンチャンネル】、通称【姫天ひめてん】では、とんでもない事態が起こっていた。


『ダメだっていっちゃん! まだLIVE配信中!』

『こばりん!! 皆まで言わずともわかってるのぉおおおっ!! でも行く!! 東京行くのぉおおおおお!!!! 今! 今すぐっ!!』

『飛行機どうするの!? もう絶対席とれないよ!?』

『現金積んで誰かと席代わってもらう!』

『変な噂広まるからやめてっ!』

『お金で鎮火すればいいんだよ!』

『だからLIVE配信中だって!!』

『私のリスナーならわかってくれるっ!!』

『くそっ! 否定出来ないっ!!』


 ――いっちゃん東京行ってらー

 ――つーか明日の便はとってるんだから明日でいーだろ

 ――今がいーんだよ、今がな

 ――つーか伊達、回復魔法も使えるとかどんな化け物なんだ!?

 ――やべぇ…越田が伊達と握手してる……

 ――新たな世代にバトンタッチって感じか

 ――いやいや、まだまだ越田は若ぇよ

 ――まぁ、元々【命謳】と【大いなる鐘】は同盟組んでるしな。ここまで早く開花するとは思わなかったけど、いや、ほんとすげーわ

 ――伊達が一瞬引っ込んだけど、どうしたん?

 ――スマホ手に持ってる?誰かに電話してね?

 ――家族に報告?

 ――てか、こんなとんでもない試合の後に、新人クラン部門やるのか。

 ――新人クランの連中が不憫ふびん過ぎて泣ける

 ――全体wwww視聴率wwww91%wwww

 ――しばらくは日本安心だな

 ――そういや、伊達ってBランクなんだっけ

 ――明日の個人戦どうなるんだww

 ――優勝クランのサイン色紙応募したわ

 ――めっちゃ欲しいわ。わいも応募しよ

 ――感動して泣いた。つーか途中からずっと泣いてた

 ――ふぁ!?四条が出て来たぞ!?!?

 ――なっちゃああああああああああんっ!!

 ――どゆこと!?どゆことなのっ!?

 ――さっきの電話、四条呼んでたのかww

 ――あー…そういう?

 ――表彰台に四条を呼ぶあたり、伊達の人の良さがわかるな

 ――四条、めっちゃ照れてるやん

 ――なっちゃん可愛い……

 ――伊達が金メダル凝視してる…何でだろ?

 ――純金かメッキか気になってるんだろ

 ――流石にそれはないだろwwww


「あちゃー……何でバレちゃったんだろ……?」


 控室に戻った玖命が、ネットの書き込みを見て呟く。


「……ん? 家族グループから?」


 スマホに反応があり、玖命はToKWトゥーカウを起動し、メッセージを確認する。


 最強の妹――おめでとう!!

 最強の父――おめでとう!!


 そんな2人からのメッセージに、玖命は呆れながらも、顔を綻ばせる。


「まったく……最強の家族でありがたい限りだよ……」


 そう呟き、くすりと笑ってから、すんと鼻息を吐く。


ヘッドぉ! 打ち上げだ打ち上げっ!」

「伊達さん! 買い物に行くんでしょうっ!? 早く早く!」

「ほっほっほ、確かに腹が減ったのう! 玖命、駆け足じゃ!」

「きゅーめー! 早くしろ! 皆、待ってるぞ!!」


 翔、川奈、山井、四条の呼びかけに反応し、スマホから顔を上げる玖命。

 みこと一心いっしんが待つ家族グループに送信されたメッセージには、たった3文字の言葉。


 玖命――――国産牛!!!!


 立ち上がった玖命は、皆の……【命謳なかま】の下に向かうのだった。そう、足早に。














 ◇◆◇◆◇ 後書き ◇◆◇◆◇



 これにて、『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』の第五部を幕とします。


 皆様、第五部はいかがだったでしょうか?

 1300円のコーヒーを呑むという大成長を遂げた玖命。パパラッチに変な事を書かれ、カシャンカシャンと音を発する怖い存在が現れたり、【ポ狩ット】の米原樹が東京に来たり、モンスター相手に実用可能な銃が登場したり、荒神所長が命謳Tシャツ着て登場したり、事務所オフィスを一括で購入されちゃったり、それが八王子支部の正面だったり………………【天武会】があったり(遠い目


 ホント、大変でした・x・


 でも、何とか上手くまとまってくれたかな? という感じも否めなくないでは? という結論に達しました٩( ᐛ )( ᐖ )۶


 特に、【大いなる鐘】との一戦は、物語の大きな区切りとして精一杯書かせて頂きました。皆様の中で、熱い物語になっていれば幸いです。






 さて、次は第六部ですね。

 物語りは徐々に世界へと動いていきます。

 言語の壁はありますが、多分翻訳とかそこらは無理中の無理なので、きっとどこかの青ダヌキ君がお腹の袋から出すこんにゃく的な機器が登場するでしょう。

 異世界ファンタジーの【言語理解】みたいな能力は難しいので、現代ファンタジーならではのチート機械をKWN的な会社が作ってくれているはずです(言い訳)。


【インサニア】の件、番場の件、御剣の司会の件、【はぐれ】の件、【天獄】の件……色々ありますが、徐々に書いていけたらなーと思っております。あ、【天武会】の個人戦は……伝聞形式とかダイジェスト的な感じで小出ししようかなーと思っております。


 書きたい事がまだ盛り沢山な今後ですが、これからも、玖命ひいては【命謳】をよろしくお願い致します。






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 それではまた、いつかの後書きでお会いしましょう。

 次話からもまた、よろしくお願い致します。



       壱弐参



 追伸:別の作品も連載してたり完結してたりするので、是非ご一読ください。

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