第285話 ◆天恵展覧武闘会14
「っ! はぁあああっ!」
玖命が【将校】の天恵を発動。
いち早く、その恩恵を受けたのは【
【
「何ぃ!?」
驚く山王の脇をすり抜け、山井が向かう先は厄介な援護者。
それは、川奈を魔法で狙い続ける【
【
【頭目】ロベルト・
山井に難なく抜かれた山王が追いかけるも、第5段階よりも更に向上した力を得た山井には追いつけるはずもなかった。
「ほっほっほ! まずは立華を獲るかのう……!」
ギラリと光る山井の瞳。
これに立華は顔を強張らせる。
山井のプレッシャーは凄まじく、その場に立つ事すらままならない。歯を食いしばり、山井を見据える立華が新たな魔法を放つ。
「【ファイアピラー】!」
正面に放った炎の柱……その数10。
燃え上がる柱を前に、山井がニヤリと笑う。
「笑止っ!」
2本の剣が放つ2つの斬撃は炎の柱を一瞬にして消し去った。
だが、その一瞬が立華の追撃を生んだ。
「【ファイアランス】……!」
立華の上部から放たれた炎の槍は、炎の柱を抜けたばかりの山井の眼前に向かった。
「ぬっ!? ちぃ!」
何とかそれをかわすも、立華の気迫の追撃は止まない。
「はぁああああああああああっ!!」
魔力の残量など意に介さぬ全力の魔法発動。
これを受け、山井が目を見開く。
「良く育っておる……!」
後進の気迫、その執念を見、山井の攻撃にもキレが増す。
「カァアアアアアアアッ!!」
炎の槍を捌き、かち上げ、叩き落とし、掻き消す。
魔力を一気に放出した立華に
「勝機っ!」
そんな山井の言葉にストップがかかる。
「そうはいかないですぞ!」
これに山王が追いつく。
山井に斬りかかるのでは分が悪い。それを理解していた山王は、その大盾と巨体をもって、山井にタックルをかます。
――が、
「そうはさせないんですっ!」
山王と山井の間に立ったのは、【
「任せたぞ、ららちん」
「はいっ!」
大盾、加速した巨体をものともせず、川奈は山王の全てを、その大盾で受け止めた。
微動だにしない川奈の身体に、山王が目を丸くする。
「……は、はははははっ! とんでもないレベルに達したな、川奈!」
「ありがとうございますっ! やぁああああっ!」
川奈の気合いと共に、その足が山王に向けられる。
「お……おぉおお!?」
一歩、また一歩と山王が押され始めたのだ。
「わ、私だって……やる時はやるんですからっ!!」
そう言って、川奈は更にその一歩の幅を広げ、会場の床を踏み抜き、山王の身体を押し……駆け始める。
「な、何という力だ……!?」
山王は、姿勢こそ維持しているものの、川奈によって、その身体をすべるように押されている。
山王の身体の行く先は――、
「やぁあああああああっ!!」
「おう、嬢ちゃん、ナイスパスだ……カカカカッ!」
ロベルトを吹き飛ばし、川奈の援護に向かおうと動いていた【拳神】鳴神翔の拳。
「くっ!?」
翔の拳に備えようと背後に意識を向ける山王だったが、肝心の大盾は、川奈の大盾と衝突している真っ最中。
つまり、山王の背は無防備な状態と言えた。
「っ! シャァアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
これを機と見た翔は、山王の背中に向け、ありったけの力をもって拳を向けた。
咄嗟に背中を丸めた山王だったが、その全てを受け切るには、翔の拳は重すぎた。
身体に激痛を走らせながら、その身体を強化ガラスの壁に衝突させる山王。
茜が山王の回復に走ろうとするも、正面には山井が迫る。
「……くっ!」
山井の接近を止めに動いたのは、立華だった。
その接近に魔力の全てを費やした立華は、
だからこそ、立華は、その身という最後の手段を使い、茜の道を作ったのだ。
「ふっ! その意気や良し……!」
山井は、立華の執念を受け止めながらそう言った。
そして、立華を失神に追い込む一撃を放ったのだった。
「集合!」
「くっ!? またでござるか!?」
そんな中、翔に吹き飛ばされたロベルトが川奈に捕まる。
山井が茜、負傷した山王を追い、翔は接戦を繰り広げる玖命の下へ向かう。
「おぉおおおおおらぁあああっ!」
翔が殴りかかったのは越田。
越田は翔の拳を的確に受け、攻撃を加える。
「カカカカッ! 流石はあの越田高幸だ! 受けに迷いがねー!」
「まったく、【
「カカカカカッ! 俺様の
「くっ! はぁあああああっ!!」
越田、翔が無数の攻防を繰り広げる中、玖命が水谷を見据える。
「じゃあ玖命クン……リベンジマッチといこうじゃない……!」
「えぇ、よろしくお願いします……!」
【賢者】立華桜花が倒れ、激戦を繰り広げる【命謳】と【大いなる鐘】。
「まだ水谷さんとは1勝1敗ですからね……!」
「へ……? え、もしかしてTシャツにサインした時の事……?」
ニコリと笑う玖命が、これまで見せた事のない最強の自分を水谷に見せつける。
その闘気、剣気、威圧感を前に、ゴクリと喉を鳴らす水谷だった。
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