第140話 ◆目覚めてプリンセス
「うぅ……あ、頭が……」
昨日のファーストクラスでがぶ飲みしたアルコールが、
ガンガンと響く頭痛に悩まされながらも、
トイレの扉の隣に洗面台を見つけた
コップ一杯の水を飲み、また一杯。
そして、三杯目の水をコップに入れ、またベッドへと戻る。
ナイトテーブルに水を置き、俯きながら頭痛と戦う
足下に見える真っ赤な絨毯。
それを見て、
「ふっ、情報部も伊達には金を出すのね……もう少し私に恵んでくれてもいいのにねぇ……」
言いながら、
眼前に映るベッドの天蓋と、目の端に見える煌びやかなシャンデリア風のライト。
「ライト? ……ライト?」
シャンデリアではなく、シャンデリア風。
どこか部屋に違和感を覚える
「……ん?」
見れば、そこにはガラス張りの浴室。
部屋からも浴室が見え、どう見ても、浴室からも部屋が覗ける仕様。
(何か……部屋、おかしくない?)
一つの部屋に、洗面所、トイレ、浴室、ベッドがある不思議。
「…………んっ?」
次第に覚醒する意識。
ぱちくりさせながら再び部屋を見渡す。
壁には壁掛けテレビ。トイレから漏れるピンク色の光。ベッドの枕元には「0.01mm」と書かれた個包装のナニカ。
「……………………ん゛っ!?」
遂に
正に飛び起きるを体現した
脱ぎ散らかされた自身の服。
では自分の服は……?
そう思い、今一度洗面台の前に立つ。
洗面台の鏡に映ったのは、バスローブ姿の
「だ、大丈夫……い、いつもの可愛い天使ちゃんじゃん」
そう言いながら自分を褒め称え、胸元を隠すように腰の紐をきつく締める。
直後、
「ひぁ!?」
天井を突き抜けるような高い間の抜けた声。
床に落ちていたソレは、既に開封済みであり、中身は……ない。
「ま、まままま待て……おちおち落ち着け私! 私は世紀の美女、落ち着いて私……! 大丈夫、大丈夫よ……大丈夫……うん」
大きく深呼吸する
(き、昨日はえーっと……伊達と飛行機に乗って……そう、ファーストクラス! 最高の1時間半! 飲み放題で、飲み放題で…………飲み放題……で? ………………あれ?)
「お……思い出せない……!?」
すると、トイレから物音が聞こえたのだ。
そんな出来事に、本能的に退避行動が起きた。
天恵【脚力S】を持つ
水の流れる音と、深い溜め息のような音。
そして開かれる扉。ガチャという開閉音と共に現れたのは、昨晩
「あ」
玖命のその声に、その姿に、
あんぐりと口を開ける
瞬間、
「ああああああああああああああんた! 嫁入り前のこの大事な身体に何してくれちゃってんのよっ!? いやいやいやいや! 言わなくていいの! ていうか絶対言うな! 口を開くな最低男! ちょっと女が酔ってたからってこんなところ連れて来るっ!? あああありえないでしょっ! た、確かに今はかかか彼氏とかはいないけどぉ!? その内出来る予定なんだから今この身体を傷物にされてたまるもんですかっ! ていうか、どう責任をとるっていうのよっ!? 派遣所の収容所でしばらく臭いご飯でも食べる事にだってなり得るんだからねっ!! わかってんのっ!? えぇっ!?」
玖命が両手を挙げながら困惑している姿を。
しかし、今の
「み゛ゃっ!?」
言葉にならないような悲鳴。
それは調査課にいる
「ろ、録画中っ!?」
甲高い悲鳴のような拒絶。
玖命は離れた
絶望を顔に染める
「20XX年8月25日録画終了」
そう言って、玖命は録画を終える。
玖命はそのまま
「観ます?」
「にゃにをっ?」
半泣き状態の
「昨晩の
その言葉に、
「しゅ……醜態……!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます