第85話 棗ちゃん
「お、おい……本当にいいのかっ?」
「す、すべては
「超キョドってるじゃねーか! しかも何だ最後の『まにまに』って!」
「神のまにまに……?」
「
若いながらも教養のある四条さんには驚きである。
しかし、今回もっと驚くべき事が起こった。
「いらっしゃい! 伊達家へようこそ、棗ちゃん!」
遂に
それはつまり、
相田さんとの事情聴取のタイミングで、
内容は夕飯で使う調味料が切れるから買って来て欲しいというとるに足らない事だった。
だから俺はそこで
当然、通話は切られた。何故なら、通話料がかかるから。
だったら何故
だが仕方ないのだ。たまに、意味のない電話をしてくるのが
だから、俺は一旦二人を応接室に残し、トイレに行くふりをして
強心臓――さっきの話、四条さんの事だよね?
玖命―――そう。今話してて、どうも四条さんの護衛を雇うのが難しいみたい。
強心臓――はぁ!?何でそんな事になるのよ!そういう時に助けるのが親元でしょ!
玖命―――仰る通りで。一応出来はするみたいなんだけど、そのお金が出るまではちょっと時間がかかりそうでね。
強心臓――お役所って感じね。仕方ないんだろうけど……で、どれくらい?
玖命―――相田さんの話だと1ヶ月くらいだって。
強心臓――ふーん……じゃあウチに来れば?
玖命―――は?
強心臓――だって四条さん困ってるんでしょ?
強心臓――死んじゃうかもしれないんでしょ?
強心臓――助けないの?
玖命―――いや、いいのかな?
強心臓――昔のお兄ちゃんじゃないんでしょ?
強心臓――今はその力があるんでしょ?
強心臓――お兄ちゃんが出来ないなら、そりゃ仕方ないけど?
玖命―――でも、守り切れるかどうか
強心臓――それを決めるのは四条さんでしょ?
強心臓――お兄ちゃんが言って、断ったらそれは四条さんの責任だけど、何もしないでそのままってのは違うんじゃないの?
玖命―――その通りです。
強心臓――なら聞くだけ聞いてみて。お父さんには私から説明するし、納得させるから。
強心臓――部屋も一部屋余ってるし、布団もある。大丈夫。
玖命―――わかった。ありがとう。聞いてみる。
強心臓――よろしい。醤油とマヨネーズ忘れないでね。いつものお店で必ず買う事。間違えたらお兄ちゃんのおかずは無し。
玖命―――わかってるよ。ところで今更なんだけどさ
強心臓――何?
玖命―――
そこから、
その後、トイレから戻った俺は、四条さんに
すると、四条さんはポカンとしていたが、何故か相田さんもポカンとしていた。
「うぅ……あの時の相田ってやつの目……凄く鋭かった……」
伊達家のリビングにあがるなり、四条さんは自身の肩を抱え、思い出したようにそう言った。
「え、そうかな? 気付かなかったけど……?」
「へっ、そりゃそうだろうよ」
「何? お兄ちゃん、今回の話、相田さんの前でしたの?」
「え、まずかった?」
「「はぁ~」」
何故か
そして、二人は口元を手で隠し、なにやらコソコソと話している。こういう時【超集中】を使えば聞けるのだろうが……あれはそれを絶対に許さない目である。怖い。
「……ふんふん、なるほど。伊達の男は鈍感家系なんだな」
心外である。
「あ、そうだ。棗ちゃん、連絡先教えてよ」
「あぁ、べ、別にいいけど……」
恥ずかしそうに連絡先の交換をする二人。
「それにしても、よく父親が許してくれたな?」
「お父さん?
「一ヶ月とはいえ、家に他人が住むんだぞ? 結構なストレスになるだろう?」
四条さんがそう言うと、
「な、何だよ……?」
「肩ひじ張ってても、そういう風に気遣い出来る棗ちゃん、私好きだよ」
「んなっ!? ば、ばっかじゃねーの! ばーかばーか!」
四条さんの語彙が消失したところで、俺は彼女に確認をした。
「そういえば、仕事の件は?」
「へ? あぁ、ちゃんとリモートワーク出来るようにしてもらった。しばらくは鑑定業務じゃなくて事務作業ばかりだな。だからこの家の無線LANを貸して欲しいんだけど……」
「無線……」
「らん?」
深刻そうな顔をしたのが
「え、それじゃあLANケーブルを……」
「LAN……」
「けえぶる?」
深刻そうな顔をしたのが
「お、おい……この家ってまさか……いや、そういえばそういう家だったな」
何かの諦めがついたらしく、四条さんはそれ以上何も言わず、電話を掛け始めると共に廊下へ向かった。
そして、戻って来ながら、
「はい、はい……では、メールした住所に……はい、それまでは報告書をまとめておきます。では失礼します」
電話を切り、再びリビングの席に着くと、彼女が言った。
「派遣所のモバイル端末を使わせてくれるってさ。それまではネット無しでPC作業だな」
「ご、ごめんね……そっか、そういう事も考えておかなくちゃいけなかったのね」
「別にお前が気にする事ないだろ。あ、あとこれ」
そう言って、四条は一枚の封筒を差し出した。
俺と
「「こ、これはっ!?」」
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