第35話 インプ&グレムリン

 ――成功。最高条件につき対象の天恵を取得。

 ――インプの天恵【脚力F】を取得しました。


 ……とてもいい天恵を手に入れてしまった。

 これがあれば、背後から迫るグレムリンを気にする事はない。

 インプは残り7体。

 目の端に見えるグレムリンはまだかなり離れている。

 ならば――!


「ハァアアアアアアアアッ!」


【威嚇F】と共に【上級騎士】のヘイト稼ぎ。

 これにより、インプのヘイトを集めるのに委縮するという、素敵な天恵コンボが成り立つ。

 更に、能力ダウンも付加されているので、インプの動きは悪化の一途を辿る。


 ――【探究】の進捗情報。天恵【剣豪】の解析度85%。天恵【上級騎士】の解析度23%。天恵【腕力C】の解析度57%。天恵【頑強D】の解析度29%。天恵【威嚇F】の解析度8%。天恵【脚力F】の解析度2%。


「6……5……4……3……!」


 ――【探究】の進捗情報。天恵【剣豪】の解析度87%。天恵【上級騎士】の解析度25%。天恵【腕力C】の解析度60%。天恵【頑強D】の解析度30%。天恵【威嚇F】の解析度10%。天恵【脚力F】の解析度38%。


「2……1…………0!」


 ――【探究】の進捗情報。天恵【剣豪】の解析度89%。天恵【上級騎士】の解析度29%。天恵【腕力C】の解析度63%。天恵【頑強D】の解析度31%。天恵【威嚇F】の解析度11%。天恵【脚力F】の解析度60%。


 全ての首が宙を舞い、落ち切る頃……俺はグレムリンを出迎えた。


「遅かったな……」


 挟み撃ちのつもりが、インプという壁は俺の刃に沈んだ。

 困惑と怒りを見せるグレムリンは……8体? いや、上空にも何体かいるな。

 ん? 上空? あれってもしかして……?


「カァアアアアアッ!」

「うぉっと!?」


 グレムリンから動くとは思わなかった。

 奴らにはもしかして【威嚇】の耐性があるのかもな。

 同じ【威嚇】持ちならば、あり得ない事じゃない。

 なら、こちらの【威嚇】を成長させれば、有効になるだろう。


「こっちだ、来いっ!」


 ヘイト稼ぎで、意識をこちらに向ける。

 あくまで意識を向けるだけだから、回避行動はとれるというのが、この能力の弱点だ。


「「カァアアアアアアアアッ!!」」


 素早くとも向かってくるのであれば、さっきのコンボがなくても……ほんの少しのフェイントを入れてやれば――、


「カッ!?」


 喉をひと突き。

 そのまま払って後方のグレムリンを牽制。

 動きが止まったところに、そのまま剣を投擲する。


「カフッ!?」


 この至近距離であれば、剣の回収も容易。


「……まず2体」


 ――【探究】の進捗情報。天恵【剣豪】の解析度91%。天恵【上級騎士】の解析度32%。天恵【腕力C】の解析度68%。天恵【頑強D】の解析度33%。天恵【威嚇F】の解析度31%。天恵【脚力F】の解析度64%。


「「カァアアアアアアアアッ!」」

「くっ!」


 流石に集団で【威嚇】攻撃されると、こちらの動きにも影響が出てしまう。出来るだけ早くカタをつけたいところだ。

 いや、待てよ……もしかしてアレが使えるのでは?


「「キィアアアアアアアッ!」」


 案の定、自分たちの【威嚇】を過信して全員で襲い掛かってくる。


「すぅ……ハァッ!!」


【剣皇】水谷直伝の気合い外し。

 水谷はヘイト集めに使っていたが、やはり【威嚇】にも効果があるようだ。

 これで……奴らへの奇襲が成立する。

 俺の動きが鈍っているという判断が、俺の急速な動きを見失う。


「フンッ!」

「ガッ!?」


 残り……地上5体。

 上空はまだわからないな。

 この奇襲をこいつだけで終わらせてしまうのは惜しい。

 一番効率的な斬撃コースは……!


「っ! ここだっ!」


 横一線の斬撃は2体のグレムリンを絶命させ、2体のグレムリンに手傷を負わせた。更に、ダメ押し。


「ギャッ!?」

「ギャァ!?」


 手負いのグレムリンの1体を蹴り、唯一難を逃れたグレムリンに当てる。

 その間、手負いのグレムリンを2体倒し、吹き飛ばされたグレムリンが地面に着弾したと同時、その落下地点に合わせて斬撃。


「…………ふぅ」


 ――【探究】の進捗情報。天恵【剣豪】の解析度97%。天恵【上級騎士】の解析度38%。天恵【腕力C】の解析度75%。天恵【頑強D】の解析度35%。天恵【威嚇F】の解析度91%。天恵【脚力F】の解析度70%。


 さて、残るは上にいるグレムリンだけなんだが、どうも姿が見えない。やはり……あるのか?

 俺は林の木を段階ごとに切断して階段をつくり、木の先端へと向かった。


「……これは酷い」


 上空に見える何体かのグレムリン。

 そして、木の先端に発生している――ダンジョンへのポータル


「ほんと、どこでも発生するよな……ポータル


 まぁ、空に発生しないだけマシか。

 そう思い、俺は再び地面まで降りた。

 上空を警戒するも……やはりポータルを中心に飛び回っているグレムリンは降りてくる気配はない。

 おそらく、ポータルへの侵入者を後方から狙う部隊なのだろう。

 ほんと、不意打ちが好きな奴らだな。


「さて、俺の任務はここで終わりだな」


 そう判断し、俺は相田さんに電話するのだった。

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