第16話 初めてのチームリーダー
討伐任務――それは、哨戒任務とは違い、民間からの依頼を受けて天才たちがモンスター討伐をするものである。
当然、報酬もあるし、モンスターから得られる魔石も自分のものである。
一つ、未発見の
二つ、破壊された
三つ、悪質な犯罪。
主に上二つが当てはまる事が多いが、ゴブリン程度ならば一般人にも捕まえられる。それを街中に放つとんでもない輩がいるのだ。
当然、犯人にはアンダーグランドに生きる人間が多いのが実情である。
どこにでも悪い事を考える人間はいるもので、たとえば同業種のライバル店AとB。売上の良いAが気に食わないBの店長が、闇の依頼をし、Aの店付近
こうすれば、Bの店舗だけが生き残り、Aの店舗は甚大な被害を被る。
取り締まりこそ厳重なものの、現代技術は発展こそしているものの、痒い所に手が届かないのも現実だ。
今回の依頼は閑静な住宅街という事で、おそらく
俺と【騎士】
「改めまして、伊達
「は、はい! か、川奈ららと申します! 18歳です! よろしくお願いします!」
軽い握手をかわし、対面に腰掛ける。
ところで、年齢は必要ないのではなかろうか?
まぁ、相手が教えてくれたのだから情報として頭に入れておこう。
「………………」
……何故彼女は黙っているのだろうか。
「えーっと、まずは依頼内容の目撃情報から説明して欲しいのですが」
「あ、え? 私がですかっ?」
「私は川奈さんの荷物持ち兼ガイドとして雇われた身なので、チームリーダーの川奈さんが――」
「――チ、チチチ」
チがいっぱいだ。
「チームリーダー!?」
声が裏返ってらっしゃる。
なるほど、どうやら自分がチームリーダーだとは思わなかったようだ。
――【探究】の進捗状況。天恵【騎士】の解析度37%。
空気を読まない天恵もあったものだ。
今は【超集中】を使っていないというのに。
これはおそらく【剣豪】によって俺の身体能力が上がった事による、弊害……もとい恩恵とも言えるだろう。
「あ、あの私……こ、今回の討伐が初めてなので……出来れば伊達さんにチームリーダーをお願いしたいんですが……ダメでしょうか?」
「荷物持ちがチームリーダーとか聞いた事ないですが……」
「お、お願いしますぅ!」
涙目になりながら訴えてくる川奈さん。
しかし、まぁ……取りようによっては悪くないかもしれない。
「……別途手当を頂けるのであれば、まぁ」
「おいくらですかっ!?」
「ランクGの任務ですからね、5000円くらいが相場かと」
「お支払いします!」
即決即断である。
今回の討伐任務、報酬が70000円。俺が荷物持ちとして得られる収入は15000円。それを20000円にまで上げてしまうらしいが……大丈夫なのだろうか?
川奈さんの手取りは50000円だが、討伐任務でかかる費用――
ふむ…………ん?
じーっと川奈さんを見ていると、俺はある違和感を覚えた。
「あ、あの……何か?」
「か、川奈さん……その
「え、これですか? 何か変でしょうか……?」
「いや……その新発売したばかりの
「あ、そうなんですよ。天才のデビューって事で、父に買ってもらったんです!」
壁に立てかけてある大盾を見ると……っ!?
「あ……あれはミスリルクラスの……」
「あ、あれはお店の人が私の体格からしてアレが一番最適だって事で。はは、あんまり可愛くないですよね……すみません」
何を苦笑しているのだろうか、この箱入り娘は?
生きるか死ぬかの世界なんだから、可愛さより機能性ではなかろうか?
軽鎧で700万、大盾は有名な天才仕様で8000万弱はするだろう。
彼女の経費を考慮した俺が馬鹿だったのかもしれない。
「す、すごいお父さんですね……でも――」
そこまで言いかけたところで、俺を口を止めた。
「でも?」
小首を傾げる川奈さん。
そう、金持ちの家に生まれているのであれば、天才派遣所に登録だけして討伐に行かなければいいだけの話だ。
別に職がなくとも生きていけるのだから。
だが、流石に信頼関係も築けていない俺が、それを聞くのは違うと思ったのだ。
「でも……見栄えの良い武具よりも、ああいった機能性が考えられた物の方が、生きる事に繋がると思いますよ」
仕方なく、先の疑問を誤魔化しに使う。
大丈夫、今回の仕事はインストラクターも含まれているのだから。
「お~、確かにそうかもしれませんね。勉強になります。あ、あの……それで、チームリーダーの件は……?」
「あぁ、川奈さんがいいのであれば、構いませんよ」
俺もいつか経験しなくてはと思っていたし、良い機会だと考えてやってみるか。
――【探究】の進捗状況。天恵【騎士】の解析度56%。
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