第14話 助けて相田さん
「あのゴブリンジェネラルが転んだという
微笑みながらも聞いた水谷の目は、いささかも笑っていなかった。
確かに、【剣聖】が興味を持つ内容だ。
ランクGの天才が、ランクBのゴブリンジェネラルへ有効打を与える。なんともおかしな話だ。
「噂では聞いてるよ、伊達
なるほど、相田さんと友人になる訳だ。
これまで俺を無能だと言ってきた連中は、この文言に続けてこう言うのだ。
――「天才からも、一般人からも見捨てられた男」だと。
「
「べ、勉強は欠かした事はないので」
「それも
凄いな、そこまで調べたのか。
あれは相田さんも知らない話だろうに。
「ふふふ、驚かせちゃったかな? 大きなクランには、独自の情報網があるからね」
「ははは、怖い話ですね……」
「
「ははは、天才の方々には関係のない事ですから。それにしても、よくそこまで調べましたね」
「
先程とは打って変わって、今度は満面の笑み。
なんとも絵になる人だ。
「私としては、
油断した直後にズバリと聞く。
出来れば早く相田さんに来てもらって、助けて欲しいものだが、到着にはまだ時間がかかるだろう。
彼女の追求をかわしたいところだが、そうもいかない……か。
「いいえ、まだ発現していません」
だが、誤魔化さない訳ではない。
ポカンとする水谷。
そして、すぐにケラケラと笑い出したのだ。
「アハハハ、そうだよね。自分の天恵をそう簡単に話せる訳ないよね」
「本来、天恵は公にするものではなく、秘匿にすべきものである」
「派遣所の教えだね。そうなんだよねぇ、目立ちたがりが多いし、メディアが勝手に広めるから……」
そう、誰がどんな天恵を持っているのかは、本来天才派遣所しか知り得ない情報だ。
信頼したチームメンバーや、クラン仲間に自分から教えるのは問題ないが、公に触れ回る事ではない。
まぁ、依頼を出す際は、依頼を受ける天才にはバレてしまうのだが、詳細について書かれる事はない。
ちなみに、俺の【探究】については、公表しなければ研究すら出来ないという理由もあって、俺が許可し、広まったものだ。
だが、【探究】の能力詳細をここで話す義務はない。
「逆にこっちが質問したいんですけど、【剣聖】水谷
「……へぇ、私に秘密?」
「【剣士】、【剣豪】、【剣聖】……剣士系の天恵は非常にわかりやすく、非常に使い勝手がいいと聞きます。最近では北の大手クラン【ポ狩ット】からも【剣聖】が確認出来たという情報が出ましたね」
「【ポ狩ット】の小林さんだね」
「えぇ、小林さんはBランク。水谷さんも同じ頃に【剣聖】に成長したと記憶しています」
「
「いえ、ニュースになった事は基本的に忘れないだけですよ」
「それは凄い特技だね」
「ですが、水谷さんは既にSランク……いえ、メディアによれば、SSランクも近いという見出しのニュースもちらほら見かけます」
すると、水谷に少しだけ警戒の色が見え始めた。
「天才派遣所だけが知る情報をメディアが知っているとは思いたくありませんが。メディアが騒ぎ立てるのにはある程度の理由があるのも事実です」
「……では
「いえ」
俺の即答に、水谷はピタリと止まる。
「ランクはまだだと思います。でも、天恵はそうじゃないと思ってます」
俺が言いたい事を理解したのか、水谷は一瞬目を逸らした。
少なくない動揺。やはりビンゴか。
「何が言いたいのかな、
「Bランクに【剣聖】になり、Aランク、そしてSランク……SSランクが目前だというのに、水谷さんの天恵【剣聖】は?」
「…………」
「【
「っ!」
「【剣聖】が成長すれば、日本人では初の【剣皇】となる。水谷さんは既に【剣皇】になっているんじゃないですか?」
そこまで言うと、水谷は目を丸くさせ、しばらくすると頭を掻き、深く溜め息を吐いた。
「……凄いね、
やはり。
「じゃあ、また私の質問だ。何で私が【剣皇】になったという事を、クランが公表しないと思う?」
「え、そんなの
……って、何でこの人、不服そうな顔しているんだ?
「むぅ……」
水谷がそう
「お待たせ~」
入って来たのは相田
俺の救世主である。
しかし――、
「聞いてよ
馬鹿な!?
「『
どうやら相田さんは、水谷が俺の事を名前呼びする事にイライラしているようだ。何故?
この人、こんな怖いオーラ出す人だったっけ?
「それに、手玉にとったってどういう事?」
相田さんが肉薄する中、目の端に見える水谷は、嬉しそうにピースしていた。
なるほど、どうやら手玉にとられたのは俺の方だったみたいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます