第10話 予想外の収入
「じゅ、124000円ですね……」
「ありがとうございます」
ふふ……ふふふふ。
ゴブリン討伐がこんなに割が良いとは思わなかった。
まさか十万円を超えるとは……。
まぁ、あの後狩りまくってたら【腕力F】が更に成長して【腕力E】になってたし、【剣豪】の天恵もほんの少し成長していた。
だが、【腕力】系とは違い、【剣聖】への道は遠そうだ。五十体以上ゴブリンを倒しても【剣豪】の解析度は3%。気長に頑張るしかない。
だが、この報酬にも問題がある。
こんな大金……どうすればいいんだろうか。
と、とりあえず装備を整えるのが一番か?
いや、
訓練用の剣でもゴブリンは狩れるが、殴るのと斬るのでは大きな差がある。
手頃な剣でも100000円はする。なら、その差額を
「え? だ、伊達くんっ?」
「あ、相田さん……おはようございます」
相田さんは俺を下から上までじっと見ていた。
「……もしかして、ずっと訓練してたの? 朝まで?」
なるほど、俺の服装が変わってないから一日中訓練していたと思った訳か。
確かに、朝帰りなんて始めての事だしな。
「は、ははは……ちょっと頑張り過ぎちゃって」
嘘は言ってない。
今し方、魔石換金した受付の視線が痛い。
もしかして、相田さんにはすぐバレてしまうかもしれないな。
「あ、そうだ、伊達くん少し待っててもらえる?」
「え? まぁもう帰るだけなので少しくらいなら……」
そう言われ、俺はしばらく受付の前で待つ事になった。しばらくすると、首からネームプレートを下げた、いつもの天才派遣所受付員の相田さんが現れた。
彼女を見るために遠方から通う天才もいるとか。
相田さんはどんな天才にも物怖じしないから、天才派遣所も重宝しているのだとか。
「疲れてるところ悪いわね。ちょっと精算だけしとこうと思って」
「精算? 依頼の報酬ならもう振り込まれてますけど……?」
そう言うと、相田さんはニコリと笑って言った。
「ふふ、何言ってるの。伊達くんが倒したモンスターもいたでしょ」
「あー……そういえば……」
「宇戸田さんのチーム全員からの聴取で、ゴブリンジェネラルを一体倒したのは伊達くんだって判明したからね。解体費用が引かれちゃうけど、それでも伊達くんには必要なものでしょう?」
そう言って、相田さんは俺にウィンクを送ってきた。なんとも嬉しい――はっ!?
直後、俺の目の前には一万円札が束になってトンと置かれた。
「ゴブリンジェネラルの魔石相場は250000円。解体費用は一律10%だから25000円引かれて、225000円の報酬ね」
「にじゅ……にじゅうにまんごせんえん……」
「ほら、自分の成果なんだからしっかり受け取って」
相田さんがキャッシュトレイをすっと前に押す。
俺は震える手でそれを受け取ると、周囲を見渡しながらそのお金を
「あはは、大丈夫だよ。そんなに心配しなくても」
「た、たたたた大金なんで……!」
「ふふふ、お疲れ様」
「あ、ありがとうございます!」
そう言いながら、俺は相田さんの手をぎゅっと握っていた。
キョトンと目を丸くする相田さんが、徐々に赤く……なっていく?
「あ、あ……ど、どどどういたしまして……!」
「はい! 本当に感謝です!」
「あ、あの伊達くん……その皆見てて恥ずかしいから……その、ね?」
「あ、あぁ! す、すみません!」
あまりの大金に興奮してしまった。
相田さんには申し訳ない事をしてしまったかもしれない。
「……あ、あぁそうだ。うん、思い出した!」
相田さんはそんな空気を吹き飛ばすように言った。
「へ? 何ですか?」
「宇戸田さんたちの処遇が決まりました。当事者という事で、伊達くんにも情報公開が認められました。聞いていく?」
「……はい、お願いします」
◇◆◇ ◆◇◆
相田さんからの情報によると、天才派遣所は【戦士】
――理由はチームメンバーである俺に対する暴力行為、依頼内容の不備、置き去りなどなど。
相田さんは悔しがっていたが、謹慎で済んだ最大の理由は……俺が生きていた事だ。
もし、俺がゴブリンジェネラルに殺されていたら、全員、天才派遣所管轄の収監所で労役になっていた事だろう。
だが、壁に耳あり障子に目あり。
謹慎による一ヶ月間の無収入に加え、宇戸田たちの処遇は瞬く間に広がるだろう。
あの四人には、謹慎以上の制裁がこの先待っているだろう。
彼らからの依頼を受ける者が減り、彼らと共に行動する天才も減るだろう。天才派遣所もあの四人に紹介する仕事を厳選するだろうし、失った信頼を取り戻す事は出来ないかもしれない。
「しかし……どうしたものか……これ」
それは今日の収入。
東寮の掃除――10000円。
ゴブリンの魔石換金――124000円。
ゴブリンジェネラルの魔石換金――225000円。
合計359000円。
この大金を……
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