第8話 証明
その後、【超集中】を発動しながら、何度も素振りをし、【剣士】の天恵を【探究】し続けた。
――【探究】を開始します。対象の天恵【剣士】を更に解析します。
「はぁ……はぁ……いいね、馴染んできた……」
――【探究】の進捗状況。天恵【剣士】の解析度25%。
相田さんが用意してくれた東寮の掃除も、中学生のようにモップを振り回した。
「おぉ……今の動きだと重心が心許なくなるのか。なら、
――【探究】の進捗状況。天恵【剣士】の解析度41%。
夕暮れになり、相田さんが帰った後も、俺は剣を降り続けた。
「はぁはぁはぁ……はは……ははは……!」
剣を振れば振る程、自分の力が向上しているのがわかった。
「ハハハハハッ!」
喜び、悦び……否。
そんな生易しいものではないこの感情。
――【探究】の進捗状況。天恵【剣士】の解析度64%。
広場を使ってる他の天才たちは、若干引き気味になりながら俺を見ていた。
確かに、今の俺の姿を見れば、
それに気付いてからは、口を閉じた。しかし、ヒクつく表情を抑える事は出来なかった。
「やべぇよアイツ……」
「剣を振りながらずっとニヤついてる……」
「あぁ、ついにおかしくなっちまったか」
などなど、散々な言われようだったが、今の俺には何も響かなかった。
何故なら、剣を振れば振る程、自分に響くとわかっていたからだ。
――【探究】の進捗状況。天恵【剣士】の解析度75%。
――失敗。技術リソースが足りません。
「はぁはぁはぁ……なるほど?」
素振りじゃ
逆に言えば、これ以上の技術リソースがなければ【探究】は発動してくれない。
【探究】が何を求めているのかがわかった。
実践の後は……実戦。
「ごめんな……
◇◆◇ ◆◇◆
天才派遣所には仕事の依頼が潤沢にある。
当然、それはモンスターの被害に対するものばかり。
寮の掃除なんて本来あるはずもない。
それを相田さんが、民間依頼にせず、定期的に俺へ回してくれていたのだ。
しかし、今日の依頼は既に消化した。
だから、別の依頼を受けるのだ。
天才派遣所本来の仕事を。
「いつもありがとうございます、
「はい、お願いします」
普段、俺はこの時間に天才派遣所にはいない。
情報として俺は知っていても、俺の顔を知ってる受付は多くないだろう。
哨戒任務とは名ばかりで、付近に大型の門――通称ポータルが出現していなければ単純なパトロール任務である。
これは警察と連携して行うものでなく、天才派遣所が独自に行うものだ。
そしてそれは、低ランクの天才が受ける哨戒任務が非常に特殊だからに他ならない。
天才派遣所はこれを効率化するために、一つの方法をとった。
それがゴブリンダンジョンへ繋がる
高位ランクの天才たちが発見したゴブリンダンジョンの
理由は勿論、ゴブリンの脳にある魔石である。
魔石採取の効率化、低ランクの天才の育成、低コスト管理と国からの助成金。
一石何鳥にもなる天才派遣所のマッチポンプ事業。
ゴブリンから採取出来る魔石は、一個あたり1000円~3000円。
十体でも倒せれば、東寮の掃除任務は卒業出来る。
……まぁ、相田さんへの説明は必要だろうけど。
という訳で、低ランクの天才が受ける哨戒任務とは管理区域のゴブリン退治の事である。
報酬は0円。討伐対象のゴブリンを倒し、魔石の換金で金を稼ぐ管理区域の哨戒任務は、Eランクまで簡単に任務を受ける事が出来るのだ。
それ以上のランカーは、ゴブリンを全滅させる恐れがある事から、特別な依頼がない限りは任務自体受けられない。
「とりあえず、Eランクまではここでしっかり堅実に稼ぐ……とはいえ、哨戒任務はランクアップに影響しないんだけどな……ん?」
遠目に発見した……ゴブリン三体。
ゴブリンなら、この刃引きした訓練用の剣でも対処可能。
だが、それ以上のモンスターともなれば、当然武器が必要になってくる。
そのためには…………やはりお金が必要なのだ。
「はぁ……世知辛い世の中だなぁ……」
そう呟きながら、俺はゴブリンの前に立った。
そして――、
――【探究】を開始します。対象の天恵を得ます。
――成功。最高条件につき対象の天恵を取得。
――ゴブリンの天恵【腕力G】を取得しました。
「…………」
どうやら、我が天恵は世知甘いようだ。
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