第115話 質問の嵐
「そういうことだから。聞いたものやSNSを見た者は認知を頼む」
遥希は用が済んだとばかりに教壇を後にする。颯達3人と合流するように彼の席まで戻る。
「SNSで投稿したといってもアカウントはカギ付きだから。愛海がフォローしている人以外には拡散されてないから」
愛海は自身のスマホに表示されるSNSのアカウントを颯達3人に見せる。
「そうなんだね。なら安心だね」
「だが愛海のフォロー人数ってかなり多くなかったか? 」
「う~ん。この学校の半分以上はフォローしてる気がするし」
遥希達3人は颯の周りでSNS投稿に関する情報を共有する。
「どんな内容を投稿した! 教えろ! 」
石井は取り乱した様子で愛海に声を掛ける。
「は? なんで教えなきゃいけないわけ? どうにかして自分で確認したら」
愛海は冷たい態度で石井に対応する。
「クソ! 絶対に確認してやる!! お前のスマホを寄越せ! 」
石井は強引に愛海からスマホを奪取しようと試みる。
「ちょっと! どいてよ!! 」
颯達の下に移動する女子の1人が邪魔者を排除するように石井にタックルする。
「おわっ!? 」
タックルを受けた石井は体勢を崩し、颯達から距離を作る。
「ねぇねぇ。八雲さん達は何時頃から一緒に同棲しているの? 」
石井をタックルで攻撃した女子が興味津々に尋ねる。
「ああ。夏休みには既に同棲していたな」
遥希は当時を回顧するように天井を見つめながら答える。
「へぇぇ~~。もう1ヶ月以上は一緒に同棲してたんだね」
女子は興奮した口調で応答する。未だに興味は冷めない様子だ。
「そうだよ。颯君と一緒に色々とプライベートな時間を過ごしているんだよ! 」
瑞貴はご機嫌な様子で同棲の状況を説明する。
「すごいね。高校生で男女が同棲なんて初めて聞いたよ」
同棲の話に惹かれた部分が有ったのだろう。3人組の女子が追加で颯達の下に歩み寄る。
「誰が同棲の話を提案をしたの? 」
3人組の1人が颯達に尋ねる。
「提案はね。颯君のお母さんなんだよ」
「そうだし。愛海達3人の前で天音ちのお母さんが提案されたんだよ。その提案の日に同棲が開始された感じだし」
瑞貴と愛海は何処か嬉しそうに饒舌に女子の質問に答える。
「へぇぇ~。すごいねぇ~~。その時の天音君はどんな反応をしたの? 」
女子達3人は楽しそうに疑問を投げる。
会話が弾み他のクラスメイト達(主に女子)が颯の席を囲うように密集する。
「すごい動揺してなかった? 」
「ああ。そんな感じだったな」
「愛海もそんな記憶あるし」
遥希達は意地悪な笑みで揶揄うような視線を颯に向ける。
自然と周囲の女子達の視線も颯に集まる。
「多分3人の言う通りだと思う。母親からのいきなりの提案だったから」
颯は頬を掻きながら恥ずかしそうに答える。
「天音君のお母さんも突拍子だね」
女子達は楽しそうに笑みを溢す。ビッグニュースに心が躍っているようだ。
「おい。お前ら。なに興味津々に色々と聞いているんだ! こいつら高校生にも関わらず同棲しているんだぞ。明らかに変だろ! 」
颯達の同棲を好意的に捉える女子達が気に食わなかったのだろう。石井が強引に颯達との輪に割って入る。
「ちょっと! 会話の邪魔しないでよ!! いま良いところなんだから!! 」
女子の1人が不満そうに唇を尖らせる。
「「そうだ!! そうだ!! 」」
残りの女子達も同意を示す。
「皆はお前のことが邪魔らしぞ」
「そうだね。残念だね石井君。君はこの場には不必要な人間なんだよ」
遥希と瑞貴は挑発するように鼻を鳴らす。
「くそ!! いい気になりやがって」
石井は怒りをぶつける様に鋭い眼光を遥希と瑞貴に向ける。
しかし、遥希と瑞貴は動じた素振りを一切見せない。
「せっかくだから。先ほどの要望を叶えてやるし。はい。これがさっきのSNSでの投稿内容」
愛海はタイミングを図ったように石井の顔に向けて自身のスマホを突き出す。
「は…。え…」
スマホに表示される画面の内容を認知し、石井の血の気が引く。先ほどまでの怒りは完全に消滅する。
「お前なにやって」
石井は信じられない顔で呟く。
愛海のスマホは1つのSNSの投稿を表示する。
愛海『はるっち(八雲遥希)、みずっち(中谷瑞貴)、愛海(宮城愛海)は天音っち(天音颯)と同棲してるよ!! まさかの親公認で同棲してるし。なのに石井一久という同級生が同棲を弱みとして握って天音っちを脅していたんだよ。信じられる? 最低だと思わない? 』
愛海のSNSの投稿は同棲の報告と石井の脅迫を非難し、共感を求めるものであった。
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