Part1 絶望人生歩んでたけど褐色美少女転校生(どうやら亜人です)とお友達から始めてみませんか?そしたら運命変わりませんか?

1- Fly me to the――

 四月二十二日 入学式――これからそれを破壊しに行く。

 少女にはその自覚があった。


 両手をスラックスポケットに隠して、開閉扉にもたれていると、電車の振動が伝わってくる。毛先の整っていない黒長髪くろちょうはつが揺れた。

 前髪で少しだけ隠れ気味だった目元が覗く。


 二重で切れ長な、つやのある下三白眼したさんぱくがん

 そしてその間を伝う、綺麗に通った鼻筋。

 透明で、どこか儚い。少女はそんな顔立ちをしていた。


 平日の真昼に学生が独り、荷物の一つも持たずに乗車。それなりに浮いた画だったが、それを客観視しようとするほど電車の中が好きな人間は乗っていなかった。


 主張の強いものが視界に入る。自然に目が向いた。

 窓の外だ――多彩な「」で塗り上げられた、東京の高層ビル群があった。


 【ブルーシティ】と言う。

 そういったエリアを複数個有していることが、二〇五〇年以降における先進国の象徴となっていた。

 その正体は、ビル外壁を満遍なく覆う、極薄型の太陽電池パネルだ。


 街中まちなかで存在感を示すブルーシティは晴天と一体となり、それはまるでシュルレアリスム的に描かれた海原のようである。

 その不・自然な鮮やかさがどこか押しつけがましくて、少女の目には、今は痛い。


 目を背け、閉じる。余計なものに自分の邪魔をされたくはない。

 瞼裏まぶたうらの黒カンバスに一つだけのねがいを描き、そこに身を投げた。


 一筋。涙が頬を伝う感覚がした。

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