Case3-38 少女

 そして音は、まるで彼らの警戒きたいに応えるように変化を遂げていった。

 単純な変化だ。一回、二回三回、更に…もう一回……不規則ではあったが、相手に気を抜かせる隙を与えずに幾度いくたびも響く。そして、回数を重ねるごとに、音は段々と大きくなっていき、その得体の知れない圧迫感を強めていった。やがて――

 ――否、突然に

 今までの中で段突だんとつに強大な一発が轟く。

 あまりの驚きに飛び上がる少女。思わず わっ!と声を上げそうになり咄嗟に口元を押さえる。地響じひびいて起こった振動が、冷たい床にくっついていた彼女のお尻を通り、お腹の芯までをずぅん…と振るわせる。その感覚が、小さな頭の中を大いに散らかした。

 とんでもなく大きな音が鳴った、ただその事実を素直に受け止めることで一杯で、次に来るかもしれない更に大きな音をおびえて待つことしかできなかった。


 しかし、男達の方はそうではなかった。


「総員!!」


 我知らず背筋を伸ばされるような、そんな真に迫った号令が響き渡った。

 それが先ほどまでのくだけた口調と同一の人物が発したものであったことに、少女は結局最後まで気がつくことはなかった。


「構えて下がれ! 扉を囲んで距離をとれ!」

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