Case3-17 少女
心に嫌なものが差し込むのを感じた少女は、畑から目を背けるように前へ向き直ると、外からは見えなくなるほどに座席へと深く深く体を
そのままじっと、さらにさらに畑から遠離っていくのを待つ。すると、自然と体の気が抜けていくのがわかった。心の芯から安堵が満ちていく。
そうか。自分はようやく解放されるのだ――そんな思いが、彼女の年に似合わぬ疲れきったため息をもたらした。
しかし、その期待は、まったくの的外れに終わってしまう。
都会へと戻り、もとの生活に戻った少女は、それでもなお日々の中で「蛇」の存在に怯え続けることとなる。
祖父母邸ではない、自分の家にいるというのに、夜中に一人でトイレに行くことはもうできなくなってしまった。
それだけではない。屋内にできた暗がりを見つけると、いまだに気が張り詰めてしまう。その暗がりを見つめていると、かぱりと開いた大口から飛び出た二本の鋭い毒牙が、自分の瞳めがけて襲い来る瞬間を想像せずにはいられない。もっとも、アオダイショウにそんな立派な牙など生えていないというのに。
保育施設の本棚にも近づくことはなくなった。動物図鑑の表紙を見たくはない。
並べられた住宅の間を行く夜道など、とても一人じゃ歩けない。人溢れかえる街がふと鎮まる空間だ。そこにいると決まって、背後のアスファルトに突如出現する気配に追われるはめになるのだ。
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