Case3-16 少女

 母に促されて後ろ窓をのぞけば、こちらに手を振る祖父母が見えたので、少女もまた笑顔を見せて手を振り返した。

 徐々に遠離とおざかっていく二人。それに比例して、周囲の景色が視界に中に流れ込んでくる。

 やがて二人が豆粒くらいの小ささになった頃にはあのトマト畑も見えてきた。濡れた葉々はばが日を反射し、相も変わらず快晴下かいせいもと海原うなばらのように緑色りょくしょくにきらめいている。

 やっぱり好きな景色なのだ。それは変わらない。しかし少女の頭の中には、あの緑に隠された海底にて潜む、蠢くものの存在がどうしてもよぎった。

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