Case3-14 少女

 当然のことである。あの夜を経たことによって、少女は今まで見ようとしていなかったものが見えるようになっていたのだから。それこそ別に幽霊やそういったたぐいのものではない。見ようと思えば誰にでも見えて、そして感じることができるもの。

 それは、「恐怖」そのものである。

 外に広がる自然はもちろんのこと、

 部屋の死角や、廊下を行けば背後に伸びる空間、わずかに開いた扉奥とびらおくに広がる闇間やみま、閉めたカーテンの先、

 中でも、まぶたを閉じたあとの枕元。

 少女は、ありとあらゆる場所に「蛇」の存在を見ていた。

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