ビビビッテル? ーPart1 絶望人生歩んでたけど褐色美少女転校生(どうやら亜人です)とお友達から始めてみませんか?そしたら運命変わりませんか?-
大羽ひつじ
Part0 アヤカシパンク
アヤカシパンク
フェードイン。聞こえてくる警告音。ヴィー‼ ヴィー‼ ヴィー‼って感じに、鼓膜通りこして脳にまで響いてきそうな、緊張誘う嫌ーなやつ。
原因は、『
ラボの内部から注がれた凄まじい衝撃に鉄扉がガクガクと震える……うん、ちょっと滅多なこと起きてるかもしれない。
続けざまに注がれた
プラスであと数回ほど、えげつない衝撃が鉄扉に加えられる。
合計で十回にも届いていない。たったそれだけである。たったそれだけで、国内でもトップクラスで頑丈に造られた扉は、ボコボコに変形させられてしまっていた。
ラストの一回、とびきりでデカいやつ。そいつを受けて、とうとう鉄扉のど真ん中が吹っ飛んだ。
見るも無惨に開いた大穴。そこから見えるラボ内は、電灯設備もやられたのか、真っ暗闇一色であった。
ただ、よぉく注意して目を凝らしてみれば、ギリギリではあるが視認することができる。何かが空中で動いている。それも、思ったよりもずっと穴の近くで。
次の瞬間、ビカビカビカっと七色のフラッシュが起こる。そして、ラボ内からそいつらが一斉に飛び出してきた。
色はとりどり、
魚の群れのように、施設内を縦横無尽に舞い泳ぎ、宝石達は迷わずにある場所へと向かっていく。
角を曲がったところで、『
引かれ合う磁石のように、彼らは合体してまとまっていき、一つの大きな
倉庫室の扉ごとき、発砲スチロールも同然であった。一撃でぶち破り、宝石達はあっさりと倉庫室への侵入に成功した。
群れに戻り、宝石達は庫内の奥へ。
倉庫室という名だけあって、室内には様々な
冷蔵保存された薬品類、実験器具に機械のパーツや、『ボツBOX』に押し込まれた大量の設計図、
それとコンピュータデバイスの予備、研究用にカスタマイズされた【
あとは、工具掃除用具キープアウトテープ簡易ベッドサーキュレータ―電子レンジシャワーヘッド全自動爪切りetc.といった、研究以外で使えそうなものもしくは使えないもの。そして、
ずらりと並んだ等身大の
最新型の
ただし電動ユニットは存在していない。あくまで素材と構造だけ使用して製造された、動くことのない特注品である。
そんな、鉄のマネキンこそが、宝石達の目的であった。
我先にと、宝石達が次々に
宝石の輝きが人形にまで伝染していくのがわかる。
明かりの点いていないはずの倉庫内は、もはや彼らの放つ光によって
宝石と人形は完全に一つになった。始まる。
動くはずのない四肢が動きだす。
金属部位は分解され、新たに肉が
―――今ここに、十四体のアヤカシ共が
本能か理性、好きなほうを選択して、それぞれが行動を開始する。
警告音はいまだに鳴り続けている。これから起こる惨事を考えると、もう少し音量上げたり、もっと怖い音に変えたりしたほうがいいかもしれない。
倉庫内にはまだ一体だけアヤカシが残っていた。どうやらそいつは理性を選んだようで、冷静にもこの状況に考えを巡らせていた。
結果、高笑いした。
自分らが巻き込まれたこの事態が、面白おかしくってたまらない。そんな様子だ。
ひとしきり笑い終えて、そのアヤカシはフゥーっとため息をつき、己の高揚する気持ちを落ち着かせる。
「ここまでくると、もはや別もんだな。のう、世界よ」
物珍し気に倉庫内を見渡したあと、アヤカシは転がっていたリクライニングチェアを起こし、どっかりとそれに座りこんで頬杖をついた。
「まさか、二度と戻ることはできまいと思っていたのだがな。はてさて、」
ギラギラと、げに恐ろしげな笑みが浮かび上がる。
「どう奪い取ってくれようか」
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