第24話 殿下は相当お疲れの様です
「そろそろ日が暮れてきたし、帰りますわ。皆、今日はありがとう」
つい子供たちと遊びすぎてしまった。気が付くと、日が沈みかけていた。ただ、子供たちがギュッと抱き着いて来たのだ。どうやらまだ一緒にいたいけれど、もう夕方だから帰らないといけない事は分かっている。という、葛藤から何も言えないのだろう。
「また近いうちに遊びに来るわ」
「本当?またすぐに来てくれる?」
「ええ、もちろん。約束します」
子供たちと約束して、孤児院を後にしようとした時だった。
「あら?リリアーナ様おひとりですか?殿下は?」
修道女に話し掛けられた。そう言えば殿下もいらっしゃっていたのだったわ。確か殿下は…
子供たちと一緒に、殿下がいる寝室に向かうと…
「殿下、眠っている…」
スヤスヤと気持ちよさそうに眠っていたのだ。あまりにも気持ちよさそうに眠っているので、つい子供たちと顔を見合わせてしまった。どうしよう、さすがに起こした方がいいのだろうが、なんだか起こすのも可哀そうなのよね。
子供たちも同じことを思ったのか
「殿下、気持ちよさそうに眠っているし、リリアーナお姉様、どうする?」
子供たちも困惑顔だ。仕方ない、ここは私が起こさないと!
「殿下、起きて下さい。夕方ですよ、さあ、帰りましょう」
殿下を揺すって起こす。
「う~ん…」
眠そうに目をこする殿下。いつも完璧な姿しか見せない殿下が、こんな姿を見せるだなんて。なんだか新鮮ね。私は5年もの間殿下の婚約者だったのに、本当に殿下の事を何も知らなかったのね…
て、今更どうでもいいことだ。とにかく起こさないと。
「殿下、どうか起きて下さい。殿下!」
さらに殿下を揺する。すると、瞼がゆっくり持ち上がり、緑色の瞳と目があった。
「リリアーナ?」
ポツリとわたしの名前を呼んだ殿下。その直後、嬉しそうに笑ったのだ。だからどうして今更私にそんな顔をするのだろう…
すっと殿下から目をそらした。
「すまない、いつの間にか眠っていた様だ」
殿下が飛び起きて、何度も謝っている。
「殿下、疲れていたのだから気にしないで下さい。ね、リリアーナお姉様」
子供たちが私に振って来る。それも笑顔で。
「…ええ、公務でお忙しいのは理解できますが、しっかり休まれた方がいいかと思いますよ。それでは私はこれで失礼いたします」
殿下に頭を下げ、その場を後にしようとしたのだが…
「待って、リリアーナ。僕も帰るよ。皆、今日はありがとう。また来てもいいかな?」
「もちろん!!」
子供たちが笑顔で答えている。さらに
「あら?殿下の馬車がありませんわ。リリアーナお姉様、殿下はまだお顔の色が良くないです。殿下の事、送ってあげて!」
「殿下が倒れたら大変だものね。リリアーナお姉様、お願いします」
子供たちがそんな事を言いだしたのだ。この子達、一体何を言っているのかしら?でも、確かに殿下の馬車が見当たらないし。
「ほら、殿下、リリアーナお姉様の馬車に乗ってください。リリアーナお姉様はお優しいから、きっと顔色の悪い殿下を1人で帰したりしませんわ。そうよね?リリアーナお姉様」
キラキラした瞳で見つめる子供たち。そんな風に言われたら、さすがに断れないじゃない。
「あの…殿下、よろしければ王宮までお送りしますわ。見たところ殿下の馬車は止まっていない様ですし…」
「さすがに王家の家紋が付いた馬車では来られないからね。近くで降ろしてもらって、ここまで歩いて来たんだ。僕が帰るタイミングで、馬車を呼ぶ様に伝えてあるから、すぐに馬車は来るだろうけれど…本当に僕がリリアーナの馬車に乗ってもいいのかい?」
不安そうに殿下が私に尋ねて来た。なんだ、馬車が来るのならわざわざ私が送っていく必要もないだろう。
「それでしたら…」
「リリアーナお姉様がいいとおっしゃっているのですから。ほら、乗ってください。リリアーナお姉様も」
そう言うと、子供たちが私と殿下を馬車に押し込んだのだ。そして満面の笑みで、馬車の扉を閉めた。
あの子たち、もしかして私と殿下を2人きりにさせるために…て、さすがにそれはないわよね…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。