第17話 罪を償え~アレホ視点~

「アレホ殿下も、マレステーノ公爵も少し落ち着いて下さい。今はガレイズ伯爵家の事に集中しましょう。それ以降の話は、後でお2人で存分にして頂ければよろしいので」


僕たちの間に入って来たのは、騎士団長だ。確かに騎士団長の言う通り、今はガレイズ伯爵家をなんとかしないと。


「そうでしたね、まずはあの家は潰すことが専決でした。特にマルティ嬢、あの女だけは絶対に許せない!」


「公爵、それは奇遇ですね。僕も同じことを考えておりました」


マルティ、あいつだけは絶対に許せない!目に物を見せてやる!


「それでは参りましょう」


公爵と騎士団長と一緒に、馬車に乗り込みガレイズ伯爵家を目指す。


「公爵、騎士団長、マルティは僕の手で捕まえたいです!ここがマルティの部屋で合っていますよね?僕は真っすぐこの部屋に向かい、マルティを捕獲します」


「分かりました、では公爵はガレイズ伯爵とその家族の捕獲をお願いします。他の騎士団員たちには伯爵の書斎を中心に、一斉に家宅捜索する様に指示を出します。それから魔術師は、どうやら伯爵家の地下にいる様です。逃げられないうちに、私が魔術師を捕まえます。魔法を使われたら厄介なので、この魔法を無力化するリングを早急に付けないと!とにかく、迅速に動いていきましょう」


「分かった。失敗は許されない!気を引き締めて行こう」


3人で話をしている間に、伯爵家が見えて来た。まずは逃げられない様に、屋敷の周りを囲んだ。そしていよいよ、伯爵家に突入する事になった。


門番にまずは話をし、そのまま玄関の前にやって来た。


「それでは行こうか」


公爵の合図で、玄関のドアを盛大に開けた。


「ガレイズ伯爵、およびマルティ嬢並びにその家族、この国で禁止されている禁断の魔法を使った罪で逮捕する。今すぐ関係者を捕まえろ!」


公爵の言葉で、一斉に皆が動き出した。僕が向かったのは、2階にあるマルティの部屋だ。バンと豪快にドアを開けると、マルティが使用人に文句を言っているところだった。


「アレホ様、一体どうされたのですか?もしかして私に会いに来てくださったのですか?」


状況を全く理解できていないマルティが、僕の方に嬉しそうにやって来た。そして抱き着こうとしたとこで、彼女を振り払う。


「マルティ、僕に気安く触れるのは止めてくれるかい?」


「どうしてそんな酷い事をおっしゃるのですか?まさか…」


顔を真っ青にしているマルティ。


「そうだよ、魅了魔法が解けたんだよ。僕に魅了魔法を掛けた罪で、今から君を逮捕する!」


一気にマルティに縄をかけた。無意識にきつめに縄をかけてしまったせいか


「痛いですわ。こんなにきつく締められたら、痕が残ってしまいます!」


「犯罪者のくせに、随分と威勢がいいのだね。さあ、行こうか?」


縄を引っ張り歩かせようとするが、どうやら抵抗している様で、動こうとしない。


「アレホ様、私たち、あれほど愛し合っていたではありませんか?それなのに、こんな事ってありますか?」


「愛し合っていた?君が魔法で僕の心を支配していただけだろう?人の心を何だと思っているのだ?王太子でもある僕に魅了魔法を使ったのだから、もちろん命があると思っていないよね?」


「そんな…私を殺すつもりですか?それはあんまりですわ。私はただ、アレホ様を…」


「少し黙ってくれるかい?それから僕の名前を気安く呼ばないでくれ!」


スッと剣を抜き、マルティの喉元に突き付けた。少し剣が肌に当たってしまった様で、血が出てしまったが、仕方がない。僕はこの1年、ずっと剣の稽古をサボっていたのだから…


さすがに僕の本気度が伝わったのか、マルティが大人しくなった。そしてそのまま、屋敷の外に連れて行く。屋敷の外には、真っ青な顔をしたガレイズ伯爵と伯爵令息、泣きじゃくっている夫人の姿もあった。


さらにその隣には、魔術師と思われる男が、魔法を無力化するリングを付けられ、座らされていた。


「これで全員そろったな。今からお前たちを地下牢に連れて行く!さあ、こいつらを連れていけ!」


近くにいた騎士団員たちに指示を出した。さっきの僕の迫力にビビっているのか、マルティも黙って馬車に乗り込んでいった。


本当は僕もそのままあいつらと一緒に移動したいところだが、すぐに公爵と騎士団長がいると思われる書斎へと急いだ。


書斎に着くと、既に押収した書類が次々と運ばれていた。


「殿下、マルティ嬢の方は?」


「今家族と魔術師と一緒に、地下牢に連れて行きました。それにしても、すごい書類の山ですね」


「ええ、ここには私達の知らなかった情報もかなりあります。これらの書類を全て確認するには、かなりの日数がかかりますね」


困った顔の公爵。そう、全ての罪が洗い出されないと、あいつらの処罰を下せないのだ。といっても、既に一族全員の極刑と、お家取り潰しは決まっているが…


「僕も書類の整理を手伝います。とにかく一度王宮に運びましょう」

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