第15話 リリアーナを諦める事なんて出来ない~アレホ視点~
そうと決まれば、早速リリアーナに謝罪に行こう。そう思い貴族会議終了後、急いで昼食を摂った後、公爵家へと向かった。
「殿下、急にどうされたのですか?」
対応してくれた公爵が目を大きく見開いている。
「リリアーナに謝罪したいと思って来たのです。僕はリリアーナに本当に酷い事をしてしまいましたので。それに僕はやはり、リリアーナが大好きです。ですから…」
「申し訳ございませんが、リリアーナはもう、あなた様には会いたくないと申しております。ですので、どうかお引き取り下さい」
そう言うと、公爵に追い返されてしまった。それでも僕は、どうしてもリリアーナに謝りたくて、その場を動く事が出来なかった。どれくらいそこにいただろう。日が沈みかけた頃、1台の公爵家の馬車が入って来たのだ。
降りて来たのは、何とリリアーナだ。どうやら出掛けていた様だ。
真っすぐ腰まで伸びた銀色の髪、透き通るような肌、大きな青い瞳、改めてリリアーナを見たが、やはり彼女は美しい。子供の頃もとても可愛かったが、今の彼女はさらに美しさに磨きがかかっていた。
リリアーナの姿を見たら、また心臓がバクバク言い始めて、言葉に詰まる。
僕は何をしているのだろう!彼女はもう僕の婚約者でも何でもない、いつまでもモジモジしていてはダメだ!そう、昔の僕の様に、リリアーナの美しい姿を見たら、どうしていいか分からず、1人戸惑ってしまったのだ。
意を決してリリアーナに話しかけた。すると使用人が公爵を呼びに行ったのか、すごい勢いで公爵が出てきて、僕に帰る様に促したのだ。もちろん、帰るつもりはない。
するとリリアーナは何を思ったのか、僕の方を真っすぐに見つめ、マルティの事で抗議をしに来たのなら、お門違いだ!と、はっきり告げたのだ。その堂々たる姿は本当に美しく、つい見とれてしまった。
見とれている場合ではない。とにかく今までの事を謝らないと!そう思い、必死に謝罪した。謝っても許してもらえない事くらい分かっている、それでも僕は、必死に謝った。
するとリリアーナは、悲しそうな瞳をして
「殿下の謝罪、承知いたしました。それでは失礼いたします」
そう告げ、僕の方は一切みず、屋敷に入って行こうとしたのだ。リリアーナの悲しそうな瞳が胸に突き刺さる。分かっている、僕の存在自体が、彼女を悲しませている事を。それでもどうしてもそんな瞳をするリリアーナが放っておけなくて、とっさに腕を掴んで引き留めた。
すると、すごい勢いで振りほどかれたのだ。どうやら無意識だったようだが、僕に触れられること自体に、嫌悪感を抱いているのだろう。その現実がショックでたまらない。
今まで僕がして来たことを考えれば、当たり前の反応だろう。分かってはいるが、胸が痛い。
僕はただ、急ぎ足で屋敷に入って行くリリアーナの背中を見つめ続けた。
「殿下、ご覧の通り、娘は今殿下の事を忘れて、必死に前を向こうとしているのです。もう謝罪は結構ですので、どうか娘には近づかないで下さい。お願いします」
僕に頭を下げ、そのまま屋敷に入って行った公爵。僕はしばらく公爵家の扉を見つめた後、馬車に乗り込んだ。
ふと先ほどリリアーナの腕を掴んだ手を見つめる。一瞬だったが、柔らかくて温かかったな…それにとても細くて、今にも折れそうだった。
僕はあんなにか弱いリリアーナに、1年もの間酷い事をして来たのだ。今更謝っても許してもらえないのは当然だろう。リリアーナにとって、僕はもう忘れたいかこの人なのかもしれない。
それでも僕は…
今日リリアーナに会って、やはり僕はリリアーナが大好きだ。たとえリリアーナが僕の事を大嫌いでも、僕にはリリアーナしかいない。
今まで散々酷い事をして来たのは重々承知している。それでも僕は、リリアーナの傍にいたい。
その為にも、まずはやらなければいけない事がある。
王宮に戻ると、すぐに父上の元へと向かった。
「父上、お願いがあります。明日のガレイズ伯爵家に乗り込む件ですが、僕も同行させてください!僕はあの女が、どうしても許せないのです。どうか僕の手で、あの女を捕まえさせてください!お願いします」
必死に父上に頭を下げた。僕はあの女のせいで、大切なリリアーナを散々傷つけて来たのだ。もちろん、僕が魅了魔法に掛かったのが一番悪い事は理解している。それでもあの女が魅了魔法を掛けなければ、ここまでリリアーナを傷つける事はなかったのだ!
それにあの女は、リリアーナに酷い暴言を吐き、暴力まで振るったのだ。到底許せる訳がない!
「分かったよ、それじゃあ、公爵に話しをしておくから。明日の朝、公爵と一緒にガレイズ伯爵家に向かいなさい」
「ありがとうございます、父上」
よし、父上の許可も得た。明日は徹底的に、伯爵家を潰そう!とにかくあの女だけは、絶対に許せない!
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