第13話 全ては僕の責任だ~アレホ視点~

「とにかくアレホの魅了魔法が解けたのなら、一刻も早くマルティ嬢とガレイズ伯爵家を断罪しないと。明日主要な貴族たちを集めよう。といいたいところだが、既に今日の件でマレステーノ公爵から会いたいと連絡が来ている。さらに、パレスティ侯爵家とレィストル侯爵家からもな…きっと抗議の為に来るのだろう」


マレステーノ公爵…リリアーナの父親だ。僕は彼の前でも、醜態を晒してしまった。きっと僕の事を嫌っているだろう…


「そうですか。明日、僕が魅了魔法に掛かっていた事を、貴族たちに報告したいと思っております。ですので、その他の貴族たちを集めて頂けますか?」


「アレホ、落ち着きなさい。アレホが魅了魔法に掛かっていただなんて他の貴族たちに知られたら、皆どう思うか…もちろん魅了魔法を掛ける人間が一番悪いが、貴族の中にはアレホにも落ち度があると考える者もいるかもしれない」


「そうですね…まんまと魅了魔法に掛かり、あの女の言いなりになっていた愚かな王太子と思われるかもしれません。でも、僕はそれでもかまわない。貴族たちに、ありのままを知って欲しいのです。ですから、お願いします」


父上に頭を下げた。もう何も隠すつもりはない。僕には貴族たちに、全てを話す義務がある、そう思ったのだ。



「分かったよ。それじゃあ、明日急遽貴族たちを集める事にしよう。とにかく今日はもう寝なさい。アレホも色々とあって疲れただろう?」


「ありがとうございます、父上。それでは、おやすみなさい」



父上に挨拶をして、自室に戻ってきた。本当に僕は、今まで何をしていたのだろう…改めて自分の愚かさに涙が込みあげてきた。


泣くな…泣きたいのはリリアーナの方だろう。1年もの間、僕は彼女に酷い事をしてしまった。婚約破棄する寸前のリリアーナは、本当にやせ細っていて、今にも命の灯が消えそうなくらいだった。そこまで彼女を追い込んだのは、まぎれもない僕だ。


リリアーナにとって、僕はもう顔も見たくない程、嫌いな人間だろう。でも…


こんな事を言える立場ではない事は理解している。それでも僕は、リリアーナを今でも誰よりも愛している。もし許されるのなら、またリリアーナと共に…て、さすがに図々しいだろう。


とにかく今は、マルティとガレイズ伯爵家の悪事を全て暴く事が専決だ。今日はもう寝よう。そう思い目を閉じるが、リリアーナの悲しそうな顔が脳裏に焼き付いて離れない。


結局この日は、ほとんど眠る事が出来なかった。


そして翌日、いつもの様に押しかけて来たマルティ。


「アレホ様、あの女の家だけでなく、パレスティ侯爵家とレィストル侯爵家からも、我が家に抗議が入りましたの。私は悪くないのに!すぐに彼らの家に、アレホ様から抗議文を出してください!」


そう言ってビービー泣くマルティ。何が抗議文を出せだ!自分がやった事を棚に上げて、本当にろくでもない女だ。でも僕は、魅了魔法に掛かっていたとはいえ、こんなろくでもない女に熱を上げ、大切なリリアーナを深く傷つけたのだから、僕こそどうしようもない人間だ…


「マルティ、すまない。今日はなんだか頭が痛くて。マルティに移すといけないから、どうか帰ってくれるかい?」


「まあ、そうだったのですね。それではまた明日来ますわ。アレホ様、抗議文だけは各家に出しておいてくださいね。それでは私はこれで」


そう言って帰って行ったマルティ。ついため息が出る…


しばらくすると、マレステーノ公爵夫妻、パレスティ侯爵、レィストル侯爵、さらに他の貴族たちも招集に応じてくれた様で、皆集まってくれていた。


「皆の者、今日は急遽集まってもらってすまなかったな。実は皆に報告しなければいけない事があって…」


「父上、ここからは僕が話します。皆様、今日はお集まりいただき、ありがとうございます。私事ではありますが、私はガレイズ伯爵家のマルティ嬢に魅了魔法を掛けられておりました。魔法のせいとはいえ、マルティ嬢の言いなりになり、罪もない貴族の方たちに嫌な思いをさせてしまった事も多々ありました。この場を借りて深くお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした」


貴族たちに向かって、深々と頭を下げた。僕はマルティが気に入らないと言った令嬢の家に、何度も抗議をした事もあった。事実確認もせずその様な事をした事、本当に恥ずかしく思っているのだ。


「殿下、魅了魔法に掛かっていたとはどういうことですか?魅了魔法の使用は、この国では禁止されております。というよりも、魔法を使える人物など、この国にはいないはずですが…」


1人の貴族が声を上げた。他の貴族たちも困惑顔だ。


「どうやらガレイズ伯爵が、他国から魔術師を呼んでいたらしい。そしてマルティ嬢に、魔法の使い方を教え、アレホに魅了魔法を掛けたのではないかと考えているのだ。魅了魔法は、本人しかかけられないからな。魔術師が我が国に入ること自体、禁止しているのだが。既に証拠はそろっている、今逮捕状を作成している。明日の朝にでも、ガレイズ伯爵とマルティ嬢を捕まえる予定だ」


「それが本当なら、恐ろしい事ですぞ。まさかこの国に、断りもなく魔術師を入れるだなんて」


「とにかく、一刻も早く、ガレイズ伯爵とマルティ嬢を捕まえて下さい。そして、厳罰に処してくださらないと…それにしても、殿下に魅了魔法を掛けるだなんて…とんでもない女だ」


他の貴族たちもかなり困惑している様だ。この国の為にも、一刻も早くガレイズ伯爵とマルティは処罰しないと。

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