第9話 味方が増えました
「マルティ嬢は一体何を考えているのだ?公爵令嬢でもあるリリアーナにあんな暴言を吐き、挙句の果てに暴力まで振るうだなんて!リリアーナ、まさか今までもあの様な事があったのかい?」
お父様が馬車に乗るや否や、怒り狂っている。どうしよう、ここで本当の事を言えば、きっとお父様の怒りが増してしまうわ…
「黙っているという事は、そうだったんだね…なんて事だ…娘が伯爵令嬢に虐められているとも知らずに、リリアーナにもう少し辛抱してくれ!だなんて非道な言葉をかけていただなんて…」
「殿下も殿下だわ。リリアーナの言葉を一切聞かず、一方的にマルティ嬢を庇うだなんて。いくら魅了魔法を掛けられているとはいえ、見ていて腹が立って仕方がなかったわ。リリアーナ、本当にごめんなさい。あなたは今日の様なことを、1年もの間耐えてきたのね。あなたが修道院に行ってでも婚約破棄をしたいという気持ちが今よくわかったわ…母親として私は一体今まで何をしていたのかしら?」
そう言ってお母様も涙を流している。
「お父様、お母様、私は大丈夫ですわ。ですから…」
「何が大丈夫なのですか?姉上があれほどまでに侮辱され、さらに暴力まで!ガレイズ伯爵家!絶対に許さない。もちろん、アレホ殿下もだ!たとえ魅了魔法が解けて正気に戻ったとしても、今まで姉上にしたことは絶対に消せやしないからな!」
珍しくリヒトまで怒っている。とにかく、皆に落ちついてもらわなければ。
「皆、本当に大丈夫ですわ。それからお父様、私の無実を証明してくださり、ありがとうございました。私、とても嬉しかったですわ。今までの悔しい思いが、少しだけはれた気がします」
「何を言っているのだ、リリアーナ。あの程度の事、当たり前だ。それよりも、殿下の魅了魔法をさっさと解かないと。正直リリアーナが婚約破棄をしてから、もうどうでもよくなっていた部分があった。でも、リリアーナを傷つけたのなら話は別だ!」
「あなた、魅了魔法の件、進んでいないのですか?」
「いや…そう言う訳ではないのだが…とにかく、急ピッチで進めるよ」
確かお父様が主導で動いていたと聞く。きっと私が婚約破棄したことでやる気が失せ、動きが鈍っていたのだろう。でも、どうやって魅了魔法を解くつもりなのかしら?
「とにかく明日、王宮に出向いて今日の事を報告するとともに、正式にガレイズ伯爵家に猛抗議をするよ」
「そうしてください!これ以上リリアーナを傷つけられたら、たまったものではありませんわ。私も王宮に出向き、王妃殿下に今日の事を報告いたします」
お父様とお母様が、そう意気込んでいる。正直私は、もうどうでもいい。ただ、せっかくのルミナの婚約披露パーティに水を差すような事をしてしまったのだけが後悔だ。明日改めて、謝りに行こう。
翌日、お父様とお母様は2人そろって、王宮へと向かった。そして私は、料理長にルミナが好きなお菓子を沢山作ってもらい、ルミナの実家、レィストル侯爵家へと向かう。
「リリアーナ、よく来てくれたわね。さあ、上がって」
笑顔で出迎えてくれたルミナ。さらにルミナのお母様まで出てきてくれた。
「今日は昨日の事を正式に謝罪しに来たの。せっかくのルミナの大切な婚約披露パーティだったのに、水を差すような事になってしまってごめんなさい。これ、お詫びの気持ちよ。あなたの好きなお菓子を持ってきたの」
「わざわざその為に来てくれたの?昨日の件は、どう考えてもリリアーナが被害者じゃない!もう、リリアーナったら」
「そうよ、リリアーナちゃん。昨日は大変だったわね。さすがにガレイズ伯爵家のマルティ嬢にはあきれたわ。今うちの人と、パレスティ侯爵が伯爵家と王宮に抗議に行っているところよ。だからリリアーナちゃんは気にしないで。さあ、上がって。お茶にしましょう」
せっかくなのでルミナとルミナのお母様と一緒にお茶を頂く。
「昨日の件で、貴族たちは皆あなたの味方よ。まさか公爵令嬢にあんな暴言と暴力を振るうだなんて。その上殿下は、状況を確認せず一方的にリリアーナを悪く言う始末。さすがに皆、ドン引きだったわ。それに公爵が見せてくれた映像…あんな醜い姿で令嬢に暴力を振るうだなんて…本当にどうしようもない女性ね」
「令嬢とは思えない程の醜態だったわ。今回の件で、リリアーナちゃんが殿下に愛想をつかして、婚約破棄をしたと貴族界では認識した様よ。リリアーナちゃん、今まで随分辛い思いをしたのね。昨日の状況で、あなたがいかに冷遇されて来たかすぐにわかったわ。でも大丈夫よ、あなたは美しいのですもの。きっと素敵な殿方が見つかるわ」
「お母様の言う通りよ。既にリリアーナに好意を抱いている令息たちが、動き出していると聞くし。きっとこれからある意味大変かもね」
そう言って笑っているルミナ。
「もう、からかわないでよ」
ルミナもルミナのお母様も、好き勝手言って…でも、こうやって私の味方になってくれる人がいるというのは、やっぱり嬉しい。
その後も3人でお茶を楽しみ、さらに昼食まで頂く事になったのだった。
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