婚約破棄した殿下が今更迫ってきます!迷惑なのでもう私に構わないで下さい
@karamimi
第1話 私も婚約破棄したいです
「リリアーナ、申し訳ないが僕は君の事をこれっぽっちも愛していない。僕が愛しているのは、マルティただ1人だ。悪いが婚約破棄をしたいと考えている」
私にそう言い放ったのは、この国の王太子殿下で私の婚約者でもある、アレホ様だ。隣には、桃色の髪に水色の瞳をした伯爵令嬢、マルティ様がこちらを見つめていた。アレホ様は愛おしそうに、マルティ様を抱きしめている。そして私には、親の仇を見る様な、鋭い瞳で睨んでいるのだ。
「ごめんなさい、リリアーナ様。私が殿下を愛してしまったばかりに…」
そう言って涙を流すマルティ様。
「マルティのせいではない。僕が君を愛してしまったのがいけないのだ。リリアーナ、君がマルティに嫌がらせをしている事も知っている。僕の可愛いマルティを虐めるだなんて、本当に性悪女だ。本来なら罪もない伯爵令嬢を虐めた罪で、公爵に抗議を入れたいところだが、心優しいマルティが、それだけは勘弁してあげてくれというから、僕は目をつぶっているのだ!」
私がマルティ様に嫌がらせをしたですって…
私はマルティ様にそんな事はしていない。逆に会うたびに“あなたなんか殿下にこれっぽっちも愛されていない、さっさと婚約破棄しろ!”と、迫れているのだ。
さらに足を引っかけられたり、持っていた飲み物をかけられたりしたこともあった。階段から突き落とされた事もあったな。
さすがに腹が立ったので文句を言いったら、泣きながら殿下に報告し、なぜか私が酷い叱責を受けたのだ。殿下は私の言い分を一切聞いてくれず、彼女のいう事ばかり信じる。
まあ、それだけ私が愛されていないという事なのだが…
「承知いたしました、父に話してみます」
私だってこんな男と婚約破棄したい。でも…お父様がそれを許してくれないのだ。
「公爵はよほど君を王妃にしたい様だね。本当に権力にまみれた男は嫌だな!いいかい?たとえ君が王妃になったとしても、僕は君に触れるつもりはない。君の様な女に触れるだなんて、考えただけで吐き気がする!僕は生涯、マルティだけを愛するつもりだ。惨めな生活を送りたくなかったら、父親をしっかり説得するのだな」
そう言うと、アレホ様はマルティ様を連れて出て行った。出ていく寸前、マルティ様が、こちらを見てニヤリと笑ったのだ。
あの人はいつもそう…
私の事を見下して。悔しくて涙が溢れそうになる。
ダメよ、人前で泣いては。必死に涙を堪えた。
そしてそのまま王宮を後にする。
私がアレホ様の婚約者になったのは、今から5年前の事。元々お父様の強い希望で、私たちは婚約した。その為か、当初から私とあまり積極的に関わろうとしなかったアレホ様。
それでも私は、アレホ様に好意を抱いていた。その為、必死にアレホ様に振り向いて欲しくて頑張った。そんな中、1年前に急にマルティ様が現れたのだ。体があまりお強くないという事で、ずっと領地で静養していたマルティ様。
可愛らしくて人懐っこい彼女に、アレホ様は急激に惹かれていった。彼が毎日王宮にマルティ様を呼び出し、2人で楽しそうに過ごしている姿を何度も目撃した。夜会では一応婚約者でもある私をエスコートはしてくれるが、すぐにマルティ様の元へと行ってしまう。
何よりも辛かったのが、私には見せない、嬉しそうなお顔をマルティ様には見せていた事だ。私がずっと欲しかったアレホ様の笑顔は、マルティ様のもの…
それが辛くてたまらなかった。
そして今日、ついにアレホ様から婚約破棄の話を告げられた。実は以前から、マルティ様に強く婚約破棄をしろと迫られていたのだ。
「さすがにもう、潮時ね…」
ずっと好きだった人だけれど、あそこまではっきりと言われてしまったら、もうどうしようもない。それに何よりも、私はもう疲れたのだ。アレホ様とマルティ様の幸せそうな姿を見るのも、マルティ様の事でアレホ様に攻められるのも、私の事を嫌そうに見つめるアレホ様の顔を見るのも、マルティ様から嫌がらせを受けるのも…
屋敷に戻ると、早速お父様の元へと向かった。
「お父様、大事な話があります」
「リリアーナ、そんな悲しそうな顔をして、どうしたんだい?」
お父様が心配そうな顔でたずねて来た。
「今日、アレホ様から“私の事を愛するつもりはない。婚約破棄して欲しい”と告げられました。私ももう、疲れてしまいました。どうか婚約破棄をさせていただけないでしょうか?」
公爵家から王妃を出したいというお父様の気持ちもわかる。そもそもお父様と陛下は、幼馴染で非常に仲が良い事も知っている。お母様と王妃様も同様に仲が良い。だからこそ、自分たちの子供を結婚させたいと考えているのも知っている。でも、もう限界なのだ。
「リリアーナ…随分と辛い思いをしたのだね。でも…婚約破棄はもう少し待ってくれないかい?大丈夫だ、もう少しすれば、全てが解決する。だからどうかそれまで辛抱してくれ」
そう言ってお父様が私の肩を抱いて訴えた。
「私はもう、限界なのです…どうかお願いします」
お父様に向かって、必死に頭を下げた。でも…
「リリアーナは疲れているのだろう。とにかく、殿下には私から話しをしておくから。しばらくゆっくりと休みなさい。さあ、もうこの話しは終わりだ。部屋に戻りなさい」
そう言うと、お父様はさっさと私を追い出したのだった。
~あとがき~
新連載始めました。
よろしくお願いしますm(__)m
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