脳内高速回転ユーモア分析ちびっこ博士

ボウガ

第1話

 ある16歳の飛び級大学生。ちびっこのように背が小さく天然パーマ。いつも研究着を着ている。尋常じゃなくかしこく、ロボット工学系では仕事をしたりもしているし、ロボット開発やプログラム開発もしている。それは自分の趣味でもあるため、暇を見つけては色々な発明品をつくるのだった。


 ある時、彼は自分の欠点に気づいた。かしこく、また品のいい人間であるため、彼には"知的研究や知的活動に不要なノイズ"としていくつかの不要なものがあるのだがその一つが"ユーモア"だった。だがユーモアが欠落しているために、彼は人間関係が長続きしなかった。特に仲のいい友人がいはするものの、友人も同じようなタイプ。そろそろ将来の伴侶となるような長くお付き合いできる女性が欲しい、また、色々な友人をつくり、物事の視野を広げたいと思った彼は、ある発明品を作る事にした。

「ユーモア分析器」

 その発明品は眼鏡につけて、拡張現実(AR)として彼の目線にだけ映るモニターをとなり、彼の思惑通り、プログラムも正しく機能した、人がユーモアのある事をいったり冗談をいうと、すぐに分析にかかり、なぜそれが面白くて、どうして真似できるかを説明してくれる。それでようやく彼にも面白さが"翻訳"され、彼はユーモアを楽しむことができた。

 よく笑うようになった彼は、だんだんと人間関係の裾野が広がっていくことになった。

 

 だがそれで、彼は満足できなかった。自分もそれを発信したいと思ってしまったのだ。芸術や娯楽を発信すれば、その分野でもあらたな顧客、事業を開拓できるかもしれないと思った。そして彼はこれを開発したのだ。

「脳波検出により、ユーモアを放つ人間の思考回路を事前に分析する装置」

 細かい事は省くが、人間は自分の意識が決定を下す数秒前に脳がすでに思考を決定しているという、彼はそれを“ラグ”と判断し、その最中の微弱な脳波を検出し、ユーモアのプログラムを模倣、もしくは参考にしようとしたのだ。すると彼には新鮮な発見が見つかった。つまりユーモアや冗談をいう人間の脳はそれを発信するまえに過去の他人のユーモアや、自分のユーモアを分析し比較し、たいていいくつかのユーモアの失敗をしている、いくつかの実験、シミュレーションをした上で、よいユーモアを選び取っているのだ。さながら彼らは脳内に小さな劇場を持っているともいえる。

(脳内にすでにオーディエンスがいる……面白いことがわかった)

それは彼の発明や研究の過程に酷似していた。彼の創作意欲はひどく刺激されていた。

「よし、これでいい」

 以前のシンプルな黒縁ではなく、黄緑色の少し派手さを持った眼鏡、ユーモア分析器二号機である。


 この装置もうまく機能した。そして思わぬことに、ユーモアや冗談をいうものも彼の脳と同じように活発に機能していることを知った、彼は関心した。回転速度が速いのだ。

「ああ、人の脳とはそれぞれに特性や得手不得手を持っているのだな」

 と。

 

 その装置は彼を学習させた。彼がひどくつかれ、苦悩するほどに彼の脳に活発な刺激を与えた。が、ある意味それはストレスでもあった。


 彼は人前で冗談やユーモアを言うごとに好かれ人気者になった。なぜなら、ユーモアの失敗と挑戦を見る事ができ、また模倣することができたからだ。


 が、次第にそのことへ疲れを感じてくる、もともと注目を浴びることに耐性がなかった。そして何より、思考には非常に手間がかかるのだ、分析や学習によるパターンの把握や。そもそも、他人の失敗したユーモア、ギャグを見ることに疲れそもそもユーモアに飽きるのだった。そして彼は“ユーモア分析器一号機”をつけるだけに落ち着き、二号機は誰かに譲ったのだった。

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脳内高速回転ユーモア分析ちびっこ博士 ボウガ @yumieimaru

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