第324話 素晴らしき転生聖女のスローライフ

 うっひょおおおお! 最高! さいっこぉぉぉ! 最&高!


 代わるがわる、俺に体を預ける美しい貴族御令嬢達。この部屋には美しい女だらけ! 最愛のソフィアもいるし、可愛いウェステートもいる。聖女邸の皆も勢ぞろいしているし、ここより美しいお花畑が世界にあるなら教えて欲しい。そして久しぶりにウェステートの手を握り、上手に踊っている。

 

 女が集まる所って、なんでこうも良い匂いがするかね! 


「聖女様が踊られるなんて…」


「たしなみとしてね」


「素敵です」


 そう? そうだよね?


 楽しい楽しい舞踏会が終わり、ソフィアが皆に一言くれという。


「御令嬢の皆さま。長旅の後で疲れたでしょう? 夕食まで自由行動となってます。休んでもいいですし、城下町を散策してもいいですよ。外に出る際は念のため付き人を連れて行ってくださいね。旅先で事件に巻き込まれたら大変です」


「「「「「「はーい」」」」」」


 いいお返事。


「では皆さん、お部屋に戻っていいですよ」


「「「「「「はーい」」」」」」


 そう。修学旅行は自由時間が一番楽しいのよね。そろそろ引率も疲れたし、先生たちの時間を楽しもうかな。


 御令嬢達はそのまま用意された部屋に戻り、俺の所にはソフィアと聖女邸のみんな、そしてウェステートが集まって来る。


「ウェステート! 元気そうでうれしいよ」


「はい! お父様も戻りましたし、なによりも今は王都に行くための勉強中です」


 そうね。その事もルクセンに話を通さないとね。そして何より一番気になっていた事を聞く。


「集団での長旅だったからねえ…、御令嬢の皆さんゆっくりお風呂に浸かってないのよね。流石に疲労も溜まっていると思うんだけど」


「ご安心ください。既に大浴場の準備は出来ております」


 ひゃっほう! でかした!


「ありがとう! もちろん必要経費は聖女財団から出すから」


「いえ。お爺様がおもてなししたいと言っております」


「ルクセン様が?」


「はい」


 なんだジジイ。いいとこあるな。


「ではその話は後で。これから夕食までの間なんだけど、どこかでゆっくり話が出来る所あるかな?」


「はい。もうお店を予約して御座います」


 至れり尽くせり。


「じゃあ、一度ルクセン様にご挨拶して場所を移しましょう」


「「「「はい」」」」


 とりあえずルクセンに報告をしに行く。


「ルクセン様。お気遣い痛み入ります」


「なんの! 聖女様には多大な恩義がありますからな! 滞在中は何でも言って下され!」


「ありがとうございます。一旦、私達は城下町におりて研修の話をしてまいります」


「今は、騎士達が警備を強化しておりますでな、安心してお出かけられるが良い」


「はーい」


 じゃ、爺さんの許可を取ったので、皆で出かけるとするか。どうやら店は城の近くらしく、徒歩でいける距離だという。


 デート! 大好きな子らに囲まれてデート!


 門を出て歩き始めると、確かに周辺には騎士がうろついており、一般市民が俺達に近づける雰囲気では無かった。俺が歩けば、人だかりが出来てしまうので配慮してくれたらしい。


 美しい街並みを一区画抜けたところで、ひときわ美しい町並みが見えてくる。このあたりは高級店が立ち並んでいるらしく、俺達が入る店は落ち着いた雰囲気のレストランだった。


 ウェステートが先に顔を出す。すると店員が出て来た。


「お嬢様。個室のご準備が出来ております」


「ありがとう! 今日のお客様は素晴らしい方よ! あなた達もきっと光栄に思うでしょう!」


 そして俺らが入っていく。すると俺を見て、店の人らが腰を抜かすほど驚いている。


「せ、聖女様ではありませんか!」


 店の人らが一斉に出て来て、胸の前で手を組んでいる。俺は軽く聖魔法を振りまいて言った。


「女神フォルトゥーナのご加護がありますように」


「「「「ありがとうございます」」」」


 個室に通されて、皆が椅子に腰かける。


 するとウェステートが、嬉しそうに頬を染めて言った。


「聖女様と公爵令嬢様が同じ部屋にいらっしゃる!」


「ど、どうした?」


「都会の有名人と同じ部屋にいる事が信じられませんわ」


 何をかわいいこと言っちゃってるんだか。


 するとソフィアがくすりと笑う。


「小さい頃に遊んだこともあるんですけどね」


「私が小さかったからあまり覚えていなくて」


 幼馴染かあ…いいなあ。可愛い二人が幼馴染…。


 うっとりしちゃう。


「一緒に寝たりもしたんですよ」


 なんだと? それはすげえ。


「じゃあソフィアとウェステートは、久しぶりに一緒に寝たら?」


「ええ?」


「夜は研修関係ないし、幼馴染なんだからいいんじゃない?」


 出来れば俺も混ぜて欲しいけど。


「どうしますウェステートさん?」


「もちろんソフィア様がよろしければ」


「羨ましいなあ…」


「「えっ!」」


 やべ! 本音が出ちまった。


「あ、いや…まあ、私は聖女になるべくして育てられたから、幼馴染という人はいなくて」


 そう、聖女の記憶にはそんな楽しい記憶がない。むしろ厳しく育てられてきた記憶ばかり。


「そうなのですね」


 するとウェステートが言う。


「で、では! 不敬を承知でいいます」


「どうぞ」


「聖女様もご一緒しませんか?」


 神…降臨。


「えっと…えっ! 私も一緒に?」


「ソフィア様もよろしければ」


「さ、流石に聖女様に不敬ではありませんか? ウェステートさん?」


「す、すみません。そうですよね! ちょっと嬉しくなりすぎて」


 逃してなるものか!


「いや! そうしよう! そうだね! それも研修の一環だ! ある意味、親睦を重ねるという意味では非常に重要な事なのかもしれない! それならちょっと、みんなにも通達しよう! 仲良くなるために、それぞれベッドを共有するというのは素敵な事だ!」


「「は、はい…!」」


 ナイスアシストだ! ウェステート! 君は神だ!


 そこからの研修の打ち合わせはもう覚えていなかった。俺の意識は今日の夜にしかなく、二人の提案に対しては許可をしていればいいだけ。なんだかおしゃれな飲み物が出ていた気がしたが、味もさっぱり覚えていない。


 ラッキースケベは必要なかったかもしれない…。今宵は素晴らしい夜になりそうだ。


 すると壁際に立っているアンナがジェスチャーして来る。


 聖女…顔! 顔! って聞こえてきそう。


 だが…楽しく話している、二人の唇や胸元ばかりが気になってしまう。


 お父さんお母さん…今日私は大人になります…。


 まさか初日から、こんなハプニングに発展するなんて。今までの苦労が報われているのかもしれない。死に物狂いでやってきてよかった!


 今までの遠征とは雲泥の差である。これぞ俺の目指した研修の形。転生聖女の異世界スローライフの始まりなのかもしれない…。


 多分。

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