虚影の国のアリス
第28話
暁アリス先輩。
かつてお母さんがそう呼んでた人。
九州にあるとある鉱山都市。
石炭や主要貴金属から希少金属まで採れるまるで街づくり系シミュゲームのような土地にソフィアの実家がある。
「ここがそうか……。」
僕はソフィアに連れられてここ、アカツキ市に来ている。
家から飛行機に乗って、新幹線で少ししたところにある都市。
かつては石油によるエネルギー革命で一時期大変だったものの、粘り強く研究をした結果として石油よりも石炭発電の高効率化人気成功して、電力の安定供給を資本に開発誘致を進めて今やかつてのような工業研究都市として再成長させている。
岩波市とは別の発展の仕方をしている。
そしてこの土地の神を祀る山の山中。
西洋風の明治の建造物。
ここがソフィアの実家、アカツキ邸と言われる建物。
「でっか……。」
うちのも大概だったけれど、あれはまだ平面に広いだけだったのに、こっちは3方向に広い。
「行きましょうか。ユイ。」
「……あ、あぁ……。」
扉、階段、そしてまた扉を抜けた先にある客室。
「座って待ちましょう。後でお母様が来ると思うので。」
「う、うん……。」
ちょこんと座る。
「あの……。ソフィア……。」
「なんですか?。」
「ちょっと近い……。」
「えぇ〜。いいじゃないですか〜。」
2人分の高級そうなソファに座って、ソフィアの抱き枕にされてる。
うん。やっぱり押しが強い。
「あらあら〜。」
「お、お母様……。こ、これは……。」
「良いのよ〜。続けて。あぁ〜、懐かしいはぁ〜。私もよくレイちゃんにやったものよね〜。」
この個性つよつよな人がソフィアのお母さん、アリスさんみたい。
白金の長い髪を纏めて右肩から下ろしている。
ラフなトップスにマーメイドスカート。
全体的に白と赤のアクセントが似合う容姿。
間違いなく日記にあった暁アリス先輩そのものだ。
「そういえばお姉様は?。」
「レミアはお仕事よ。覚えが早くていいわ。もう仕事の大部分を引き継いでもらったし。」
「で、暇だからきたと。」
「そうなの!。それに私は、私の妹の娘に会いたかったからね。」
一瞬、ゾワッとした。
その紅い瞳が僕の……その奥を見られてるような……。
「ごめんね。疲れたよね。部屋はもう用意してあるから、ソフィア。案内してあげてね。」
「はいはい。」
「はいは1回。」
「はーい。」
「生意気娘ね。」
うりうりと娘を叱る母親。
何故かその光景が私には羨ましかった。
もう手に入らないもの。
ずっと願って叶わないもの。
ぽんと頭を撫でられる。
「ここにいる間はあなたは私の娘よ。だから、好きに甘えて良いのよ。」
そこからのことは覚えてない。
たぶん泣いて、抱きついて、また泣いて。
その温もりが、私には心地よかった。
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