第10話

 3月初週。

卒業式当日。

僕は制服に着替えて玄関で待っていた。

 「行きましょうか。」

 ソフィアと一緒に学校へ向かう。

校庭の桜たちが卒業する生徒に花びらで祝福している。

 ふと青い薔薇の花びらが横切った。

僕の知ってる一人の少女。

青いセーラー服の少女。


 「⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。」


 また花びらが視界を遮る。

               「ユイ…。」

 「ユイ!。」

 ソフィアが呼び戻してくれた。

 「大丈夫ですか?。」

 「あぁ…うん。大丈夫。」

 「もう心配させないでくださいよ。」

 「ごめん。」

 あはは。と誤魔化してしまった。

ソフィアは高校代表として来てるためここで別れた。

 再び少女のいた方向に目を向ける。

けれど、少女の姿はどこにもなかった。

ん?。

気のせい…だったのだろうか?。


 卒業式開始。

司会の挨拶。

長い長い校長先生の祝賀。

教頭先生の祝賀。

 高校代表ソフィアの祝賀。

卒業生たちの期待と祝福を短く、わかりやすくまとめていた。

 在校生代表兼現生徒会乃亜の祝賀。

序盤は代表らしくしっかりしてたのに、徐々に僕の話題になっていって、兄に引っ張られる形で幕を閉じた。

止め欲しいよそれ。すっごい恥ずかしいから。

 卒業生代表あおいの感謝。

あおいは色々あったけれど、ここまでやってこれた。僕はそれが一番嬉しかった。

 卒業証書授与。

皆々が順番に呼ばれて、ついに僕の番がきた。

僕は壇上に上がって証書を受け取って帰ろうとした時。

また例の少女がいた。

 「あの!。」

 「あ…あぁ…ごめんなさい。」

 少女はまたいなくなってた。

僕は元場所に戻って座った。


 卒業式も終わり。

あおいとソラと一時の別れたを悲しんだ。

 「ママ〜。春休みもずっと一緒にいようよ〜。」

 「はいはい。里帰り頑張ってね〜。」

 「や〜だ〜。」

 よしよししてなんとか納得してもらった。

 「全くあおいさんは。」

 「あはは。いいじゃん元気で。」

 「そうですけれど。あなたは大丈夫ですの。」

 おそらくさっきのことだろう。

 「うん大丈夫。」

 「本当に?。春休みは実家に帰るのでしょう。お身体には消えつけてくださいね。」

 「善処する。」

 「もうあなたって人は…。」と言い残してソラと別れた。

 「またすぐに会おうね〜…。」と泣きながらあおい母に引っ張られて、あおいとも別れた。

 「終わりましたか?。」

 待ってたソフィアと合流し、兄と乃亜と親たちと一緒に家に帰った。


 3月中旬。

僕は荷支度を済ませて玄関へ向かう。

 「忘れ物ありませんか。」

 ソフィアが見送る。

 「大丈夫…なはず。」

 「しっかりしてくださいよ。お母様に会うのでしょ。」

 「そう…だね。」

 その日はお母さんの命日であり、その翌日は僕の誕生日であり、僕が覚醒した日。


 「行ってらっしゃい。」


 お母さんの声が…。

声が聞こえた気がした。

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