第7話
今日もこの季節がやってきた。
この学校ではバレンタイン週間というものがある。
戦後に少しでも生徒に楽しんでもらおうと学校側が企画した1週間のイベント。
放課後に学校全体でチョコの交換が行われている。
そして僕のところには…。
同級生から後輩、男女問わず、なんか先生も混じって長蛇の列ができてる。
その都合で僕だけ空き部屋で交換をしている。
なにこれアイドルの握手会なの。
「はいそこ。時間ですよ。」
なにこれ。
あおいが仕切って。
現生徒会長で僕の妹の乃亜が代わりにチョコを配っている。
で。僕は話を聞いたり、近状報告を聞いたり、軽い相談に乗ったりしている。
まだ初日よこれ。
これがあと4日。
長い。
けどやるしかない。
そして最終日。
滞りなく終わり。
乃亜が僕を抱いている。
「あのですね。我が妹よ。」
「はい。お姉様。」
「そろそろ離してもらえるかな?。」
「ダメです。」
そっか。ダメかー。
こんなのみたらあおいも嫉妬したり。
……。
なんか推しの姉妹の尊い場面見て昇天しているファンみたいになってる。
「あぁ神よ。今日もユイ様が尊く。私は…。」
なんかもう限界突破しちゃってるよ。
……。
…。
なんか扉の向こうからジェラってるオーラを感じるのだが。
「もう終わりましたか?。」
何事もないような顔で入ってきたけど、目がだいぶ怒ってますよね。
「えぇ。先輩。今後“とも”私のお姉様をよろしくお願いしますね。」
圧。圧よ。
「あら。ご丁寧にご教授ありがとうございます。“妹様”。」
だから圧。双方の圧よ。
互いにマウント取ろうとしないでよ。
笑顔で言葉の殴り合いしないでよ。
「えぇ。そうですね。将来お姉様と結婚するのは私ですから今はそう呼んでもらって構いませんよ。“ソフィアお姉様”。」
「へぇ…。」
だから火に油を…。
結婚。
乃亜と結婚。
(「お姉様大好き。結婚して。」)
(「僕が元気になって、乃亜が大きくなって綺麗なでみんなが憧れるお嬢様になったら考えてあげる。」)
確かにそれっぽいこと言ってたー。
なんかソフィアがこっち見てくる。
違うよ。
あくまで考えてあげるだからね。
違うからね。
僕は乃亜の拘束を解いて、ソフィアの手を引いて。
「お姉様。逃げないでください。」
逃げた。
いやほんとごめんね。
「はぁ。はぁ。」
息を切らすほどつい走ってしまった。
「もう急に走るからです。」
うん。そうだね。
身体急に宙に浮く。
「今日はこれで帰りますよ。拒否権はありません。」
「はい…。」
ソフィアにお姫様抱っこされてる。
まあでも。
気分良さそうだからいいか。
―――――
私はこの1週間が嫌いだった。
皆の目的は私で。
男も女も寄ってたかって貰おうとしていた。
その度にマヤが制止させていたけれど。
でも今年は違う。
ユイをお姫様抱っこして家に帰ってきた。
前々からユイが準備してたのは知っていた。
「はい。チョコ。」
素っ気なく私にチョコを渡す。
照れくさそうに渡すのがまた愛らしい。
「ありがとう。じゃあ私も。」
私も手作りのチョコを渡した。
お互い上品な包みで。
ユイの渡したチョコは、ちょっと酸っぱく、苦くて。でも程よく甘かった。
チョコと夕食を食べ終わって、ユイはソファでゴロゴロしている。
そこで私はひとつ提案をした。
「明日。近くのショッピングモールで一緒に遊びませんか?。」
ユイは少し驚いた様子で。でもしっかり向き合った様子で。私の提案を了承してくれた。
嬉しかった。
だからだろうか。
私は調子に乗っていたのかもしれない。
あんなことになるなんて私はこの時は全く考えてなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます