心壊~とある狂人の半生~

永久保セツナ

第1話 『私』と故郷、家族について

 これは、『私』の三十三年の半生を綴った物語だ。

 私の半生は、読み物として決して愉快なものではないかもしれない。

 それでも、私の今まで通ってきた道を辿って、笑い飛ばしてくれれば幸いだ。


 私は北の辺境に暮らす、この小説を書いている時点では三十三歳の人類。ちなみに推し(の享年)と同い年なのでちょっと嬉しい。

 私の生まれた場所は、どことは言わないが、とある片田舎の港町で、海が近い。

 人口は二千人もいない気がする。外を出歩いても、人っ子一人、車すらもなかなか見かけない。

 あまり込み入った事情は知らないが、町民の多くは職につけず、そもそも就職先もないため、手に職を持っている人間以外は生活保護を受けていて、それでパチンコをして暮らしている人もいるらしい。

 他の街と統合しようにも、統合する上でのメリットもないから捨て置かれている、そんな限界集落である。


 私の家族は、医療従事者の父とその助手をしている母、そして姉、私、弟、妹の四人兄弟。

 父と母の夫婦仲はいいほうなのだが、残念ながら私たち兄弟の仲は最悪。

 小さい頃から兄弟間でたびたび喧嘩が勃発しており、ティッシュ箱やらテレビのリモコンやらが家の中を飛び交っているような家庭だった。

 今でも兄弟仲は冷え切っており、冷戦状態が続いている。

 そんな状態でも夫婦仲がいいおかげか、家庭崩壊はしなくて済んでいた。


 以上の家庭環境で生きてきた私だが、ここをスタート地点として、私の半生を振り返っていこうと思う。

 お付き合いいただければ幸いである。


〈続く〉

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