第11話 ダンジョン配信再び

 俺はあれから1日休んで配信の告知をして、今から配信を始めるところだ時間は……17時。


「3、2、1、スタート!! よっ堂真だぜ。今からA級ダンジョン攻略配信を始める!  掲示板のやつら、来てるかー?」


 早速俺は画面を覗き込み、コメントが来ているか確認する。視聴者数は1桁。それでもいい。とにかく誰か……。


『応援隊:来たぞ〜』


『堂真くんちゅき:やっほ〜』


『ひーくん:頑張れよ。今回もジャージか』



 恐らく掲示板のやつらだろう。約束通り来てくれて、コメントまでしてくれて。最高だ。こんなに嬉しいのかよ。相談してよかった。これからも見て貰えるように頑張らないとな。やる気が出てきたぜ!



「堂真くんちゅきってなんだよ! まあいいや、来てくれてありがとな!!」


『堂真くんちゅき:堂真く〜ん! カッコイイ〜!!』



 わざとこんなことを言ってくるのだろうが、なんだか照れちまう。カッコイイなんてほとんど言われたことねぇぞ。耳が熱くなる。俺は照れると耳まで赤くなるらしい。画面に映ってなくてよかった。ぜってぇ弄られる。


「まじやめろ。……じゃあ、早速中入るぞ」


 俺は画面を見るのをやめて歩みを進めた。最初のモンスターは赤い鬼のようなやつ。ふってぇ棒を持っていて、下の牙が2本飛び出ている。


「おっしゃ! かかってこい!!」



 ボワァァァァアア!!!!


 いきなり俺に向かって炎が!! おい魔法使えんのかよ!! 咄嗟に避けることが出来たが……。


「あぶねぇだろ!!!!」


 俺はいつも通りすんげえスピードで飛び出し、そのまま顔面に拳をめり込ませる。



 ドガ!! ズガァァン


 おお、壁にぶち当たって即死か……?


 その後も何体か現れ、仲間が呆気なくやられて行くのに果敢に飛びかかってきた。なんて野郎だ。



「ふぅ。んで次は……ははっまじかよ」



 あの世界的に有名なファンタジー映画で見たトロール。映画で見るよりデケェ気がする。映像と実際に見るのとでは違うって訳だな。



「グォォオオ!!」



 叫び声で俺の全身がビリビリと震える。トロールは大きく振りかぶり、俺に向かって棍棒振り下ろす。俺は横にサッと軽々飛んで避けてみせた。


 ドォォオオン!!


 おい床が凹んじまったぞ……こいつがどれだけ強いのかよくわかんねぇし、泳がせてみるか。アドレナリンがドバドバ出ているのがわかる。俺はこの戦いに興奮しているのだろう。死と隣り合わせのこの感じ。



 次々と避けていく俺に腹を立てたようで、再びグオオオオと叫んだ。


 ってちょっと待て2体居んのかよ!!!!


 もう一体に気を取られている間に、俺のジャージの上着を掴まれてしまった。


「うおおおお?!」


 トロールの顔が目の前に……!


「おいおい待て俺は美味しくねぇぞ?!」


 トロールは大きく口を開け、上を向いて俺を口の中へ放り込んだ。


「うぉわぁぁああ?!?!」


 パクッと口が閉じられ、真っ暗になる。噛み砕こうとモグモグされる寸前のところで、俺は上顎に手を添え、トロールの上顎と下顎を離すことで噛めないようにした。すんげえ力だ……俺の押さえる腕が震えている。


 開かれた口から俺はハークに向かって話しかけた。


「こっからどうすりゃいい?!」


「おお、生きてたか。自分でなんとかしろ。これくらい」


「はっ、だよなー」


 俺は何とか思考をめぐらせながら、周囲を見た。何かないか……お、これなら上手くいくかも。


 俺はトロールの抑えていた手を離した。そのまま奥まで滑っていく。暗ぇから見えねえ!!


 感覚を頼りに喉まで辿り着くことができた。

 自分の身体で食道を塞ぐ。「グゥゥ……」とトロールが苦しそうに口を開け暴れている。


 光が差し込んできた!!



「よし……いくぜぇぇええええ!!!!」



 バキバキッ!!!!


 トロールが下を向いた瞬間上顎を中から殴りあげる。顎が外れ、前歯が飛び散った。くぅーー痛そう。そのままスタッと降り立つ。決まった。っともう一体が棍棒で攻撃して来たのを避ける。


「……っとぉ! 危ねぇ」



「はっはっはっはっ。中々やるなァ」


「かっこよかっただろ?」



 トロールが口を押さえながら棍棒を床に叩きつける。

 ちゃんと見えてねえぞ! 振り下ろされた腕を駆け上がり、顔を思いっきり殴った。



 そのままトロールは倒れ、ドォォォォオオオオンと床とぶつかる音が響く。よし、あと一体。



「しゃあおらぁ!!!!」



 難なくもう一体倒し、魔石を回収する。モンスターの身体を貫くのは慣れてきた。



「魔石ゲットォー!!!!」



 コメントを見に行くと、案の定盛り上がっていた。視聴者も結構行ってるか……っておいいいいいい?!?!


「視聴者が10人?!?! 何でだよ!!!! これは現実なのか……?!」



『ひーくん:今人気のダンジョン配信者が配信やってて、そっちに取られてるかも』



 まじかよ。そんなのかてっこねぇじゃん。人気なヤツらがやってない時に配信しねぇとか。いつがいいんだ? 帰ったら調べねえとだな。



『堂真くんちゅき:お疲れぇぇぇぇカッコよかったぞ!! 俺ちん惚れちゃうっ』


『応援隊:何回も言うけど目赤くないか? S級の能力者でも初めて見る色だな。魔王の色……なんかこわ』


『ひーくん:日向ちゃんと嘉成 重介とか他にも結構』


『堂真くんちゅき:確かに赤い目ちょっとこわい。魔王の手先とか?』


「おいおい何だそれ。俺は立派な人間だぞ?!」


『ひーくん:悪役の方がしっくりくるし……あながち間違いではないww』


『応援隊:敵に回すとやばいな。媚び売っとこう』


『堂真くんちゅき:ヒェェ……堂真様〜! 殺さないでぇ〜』


 確かに魔王もそうだった。もっと違う色ならこんなこと思われねぇのに……。


 悪役の方が似合うだなんて、そんなの見た目だけだろ。俺はヒーローになりたいんだ。皆を救う存在に。

 自分はそんなんじゃねえって行動で示していかないと。ダンジョン攻略頑張るしかないよな。あとは……依頼か。助けられた側は忘れねぇだろ。




「何話を膨らませてんだ! 誤解だって。俺だってこんな赤とか……厨二病見てぇな色ごめんだ! それより時間ずらさねぇとだよな。平日だから夕方にしたけど、何時くらいがいいと思う?」


『応援隊:俺は仕事中も見れるぞ〜』


『堂真くんちゅき:わい学生だから夕方以降がいい』


『ひーくん:平日休みだから日によるなぁ』


「クソ……バラバラかよ! 難しすぎる!! もう分からん。今は考えるのやめるわ」



 出来ればコイツらには見てもらいたい。アーカイブでもいいが、リアルタイムで感想が欲しい。どうすっかな……。まあ今は置いとくか。まだ戦いは終わってねぇ。


 今なんか主人公っぽいこと思ったよな?!



『累:頑張ってね』


 おいおいこの累って……クソ野郎が。コメントまでしてくんじゃねぇよ。俺と会ってからチャンネル登録していたのは知ってる。俺は軽くお礼を言って再びダンジョンの中を進む。



「ここがボス部屋か……」


 鉄の分厚い扉。この向こう側にはどんなモンスターが待ち構えているのか。今までのモンスターと系統が一緒ってことしかわかんねぇ。……行くしかねぇな。


「よし、入るぞ」



 ギィィィィバタン。



「ほぉ……ミノタウロスだな。せいぜい頑張れよォ〜」


「わかってらぁ」



 めちゃくちゃ強そうじゃねえか……初めてのA級ボスを目の前にして、少し怖気付いてしまう。





 斧を持ったミノタウロスは、いきなり斧を投げてきて扉に刺さった。キィィィィンと俺の横で音が鳴る。


 殺気がやべぇ……怖すぎる。



 そのまま俺に向かって突進してきた。俺は近接攻撃しか出来ねぇから、寧ろありがたい。そう思って拳を振りかぶりそのまま殴ろうとしたが、さすがに怖くて避けてしまった。




 ドォォオオン!!!!



 ミノタウロスがそのままぶつかり扉がひしゃげる。え、ちょ、鉄だろ……?


 俺が驚いていると斧を取り、床に叩きつけた!

 何だ?


 じっとしていると、そのまま衝撃波で飛ばされる。


「どわぁぁぁぁああ!!!!」




 ……どういう事だ?!

 俺はそのまま壁に背中を打ちつけた。


 ドカッ


「ゔ……」


「はっはっ、床に叩きつけることで衝撃波をうむ。正面にいるとまた飛ばされるぞォ」


「そ、そういうのは先言え……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る