アラン・フィンリー外伝 ~とある男達の日常~(男×男)

Danzig

第1話 とある男達の日常


ジェームス:よし、ようやく、これで終わりだな

ジェームス:あぁ、もう昼になっちまったか


ジェームス:(N)俺の名は、ジェームス・コイル。 ロンドン秘密情報部のエージェント。

ジェームス:(N)秘密情報部とは文字通り、秘密の組織なのだが、いつも特殊な事件ばかりを扱っている訳でもない

ジェームス:(N)しかし、今日は、未明(みめい)に発生した、奇妙な事件の処理に追われ、気が付けば昼になっていた。


ジェームス:(N)そんな時は、俺はいつも、気分を変える為に、少し遠くても、街で人気の店にランチを食べに行く事にしている


ジェームス:(N)そして、その店で、俺は少し懐かしい人物に出会った


ジェームス:あれ? ウォルターか?


ウォルター:おぉ、ジェームス、久しぶりだな。


ジェームス:こんな所で会うなんてな


ウォルター:あぁ、何年ぶりだ、懐かしいな。 元気にしてたか?


ジェームス:あぁ、それなりにな


ウォルター:今、政府の機関にいるって聞いてたけど・・


ジェームス:うーん、詳しくは言えないんだけどな。 まぁ調べものばかりの、オフィスワークってところさ


ウォルター:へぇ、意外だな、お前は現場が好きだと思ってたよ


ジェームス:そうだな、俺も現場が好きだけど、こればっかりはな


ウォルター:まぁ、俺達は上から言われたら、従うしかないからな


ジェームス:そうそう、嫌な仕事でも、やらないとな


ジェームス:(N)俺は少し前の、ある事件が脳裏をよぎった


ウォルター:どうした? 何かあったのか?


ジェームス:いや・・ちょっと嫌な事を思い出しちまってな


ウォルター:そうか


ジェームス:その時は、やりたくもない仕事をさせられた上に、上司から、小言(こごと)を言われてな。


ウォルター:へぇ


ジェームス:「経費の使い過ぎだ」だってよ。

ジェームス:そりゃ、予算があるのは分かるし、その時は俺も「少し使い過ぎた」とは思ってるさ。

ジェームス:でも、民間人に依頼しなきゃ、出来ない事もあるんだよ

ジェームス:あんまり気分のいい仕事じゃなかったし、後味が悪くてな、それで少し思い出したのさ


ウォルター:大変だったな


ジェームス:もう、あんな仕事は二度とゴメンだよ


ウォルター:フフ、お前も苦労してるんだな


ジェームス:ウォルターこそ、どうしたんだ、こんな所で


ウォルター:ここが評判の店って聞いてな、気になってたんだ


ジェームス:そうか


ウォルター:本当は、もっと早く来たかったんだけどな、仕事が立て込んじまって

ウォルター:それで、今日、ようやくここに来れたってところさ


ジェームス:なかなか、思い通りにはならないもんだな・・

ジェームス:あ、そうだ、ウォルター! そういえば、聞いたぞ、保険省の汚職事件


ウォルター:あぁ・・


ジェームス:あれ、お前が解決した事件なんだって?


ウォルター:・・まぁ・・な


ジェームス:製薬会社と保険省の癒着(ゆちゃく)だけじゃなくて、インサイダー取引や、製薬会社のデータの改ざんまで、挙(あ)げたそうじゃないか


ウォルター:あぁ・・


ジェームス:どうかしたのか? 元気ないじゃないか。

ジェームス:ひょっとして、手柄でも横取りされたのか?


ウォルター:その逆だよ


ジェームス:え?


ウォルター:あれは、俺の手柄って訳じゃないんだよ


ジェームス:どういう事だよ?


ウォルター:(N)俺はジェームスに、RI(アールアイ」)製薬の事件の全貌(ぜんぼう)を話した

ウォルター:(N)とある殺人事件を切欠(きっかけ)に、大規模な捜査に発展していった事

ウォルター:(N)その殺人と思われた事件が、実は、巧妙な筋書きを描いた、自殺だったという事

ウォルター:(N)そして、それを自殺だと見抜いた人物が、警察の人間ではなく、探偵だという事も


ジェームス:そうだったのか・・


ウォルター:だから、この事件を俺の手柄と言われてもなぁ・・嬉しくも何ともないのさ


ジェームス:そうか・・ところで、それは本当に自殺だったのか?


ウォルター:あぁ、自殺という前提で、死体のあった部屋を念入りに調べて見たのさ、

ウォルター:そうしたら、本棚に僅かな凹みがあって、ナイフの柄の形と一致してな

ウォルター:それで、本棚にナイフを押し付ける形で、自分で背中にナイフを刺したって事が分かったのさ


ジェームス:そこまで、その探偵が見抜いたって事か?


ウォルター:いや、その探偵は、死体を見ただけで自殺だって分かったそうだ


ジェームス:どうして分かったんだ?


ウォルター:死体に殺意が無かったんだってよ


ジェームス:え?・・そいつは、本当に探偵なのか?


ウォルター:あぁ、それから、その探偵について調べて見たんだが、探偵という事以外は、何も出て来なかったよ

ウォルター:というか、逆に綺麗すぎるくらいなのさ、まるで、誰かがクリーニングしているかのようにな


ジェームス:で、その探偵の名前は?


ウォルター:アラン・フィ・・いや、やめておくよ


ジェームス:アラ・・ン・


ウォルター:どうした? 何か心当たりでもあるのか?


ジェームス:いや、そういう名前の『探偵』は知らないな


ウォルター:そうか、まぁあまり有名ではないみたいだしな

ウォルター:でも、何とも不思議な奴だったんだよな


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