12
季節が一巡りしたころ、サイラスが吉報を持ってきた。
ヴィアサル病の薬草の改良が進んだようだ。
「この改良した薬草から抽出したポーションは概ね臨床試験を合格していて、体外への魔力放出の効果が従来よりも極めて高いとされている。成分も人体に影響を与える物質は含まれていないことは確認が取れている。」
サイラスは自慢げにユリウスとルフェルニアに液体の入ったアンプルを見せたが、そのあとすぐに顔を曇らせた。
「ただ…、実際の人への投与については解析が不十分なところもあり、国の認可までは至っていないんだ。」
ユリウスはサイラスの言わんとすることがすぐに理解できた。
十分な治験と審査を待っていれば認可まであと5年はかかるだろう。
「お父様、僕はその薬にかけてみたい。せっかく、ルフェルニアの知識を活かして作ってくれた薬です。認可を待っていては、僕はいつまで持つかわかりません。」
サイラスも本当は十二分な検査を経たうえでユリウスに薬を届けたかった。
しかし、この1年で、ユリウスの病状はさらに進行してしまい、もうベッドの上で上半身を起こすこともままならない。今も返事をするのが少し苦しそうだ。
ユリウスのベッドの横で一緒に聞いていたルフェルニアの表情も暗い。ルフェルニアは不安で仕方がなかった。
「ルフェ、あの日から僕は生きることを諦めなくなった。だから、大丈夫。」
ユリウスはルフェルニアを安心させるように穏やかに言った。
「…うん、うん。きっと大丈夫、すぐに良くなるわ。もうじき、あの花の花束も両手いっぱいに用意できるの、もっと元気になった姿で受け取ってね。」
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