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「うん、ルフェは本当にすごいよ。でも、良かった。植物の成長が速められるなら、生きているうちに先ほどの花の花束が見られるかな。」


ユリウスに全く悪気はなかった。自分の運命が変えられないことをとうに受け入れていたからだ。ユリウスはここのところ、ベッドから離れることができる日が少なくなっていた。


サイラスもアンナも、泣きそうに顔をゆがめるが、同じ病気でユリウスの祖父が亡くなっているため、この病の結末を良く知っていた。残された時間はきっとあと数年だろう。

この中でひとり、ルフェルニアには”フジノヤマイ”が未だ理解できていなかった。


「どうして…、ユリウスは死なないもん。ずっと一緒にいるもん。」


ルフェルニアは先ほどまでの上機嫌が嘘のように暗い声だ。


「ルフェ、ありがとう。僕のその時まで、ずっと一緒だよ。」


ユリウスは、ルフェルニアも本当は病が治らないことを知っていて、気休めでいってくれたのだとばかり思っていた。だからルフェルニアに心配してほしくなくて、穏やかに声をかける。


「だから!!ずっとは、ずっとだよ!!死なないもん!!」


ルフェルニアは急に立ち上がると、大声で怒鳴った。

ユリウスはルフェルニアの瞳から流れる涙を呆然と見つめることしかできなかった。

ルフェルニアはいつも笑顔で、泣いたところも怒ったところも見たことがなかった。

それに、ユリウスはルフェルニアが怒った理由が理解できなかった。


「ルフェルニア嬢、落ち着きなさい。」


サイラスが慌ててルフェルニアを座らせようとするが、ルフェルニアはその手を払った。


「どうして、みんな諦めているの!?今、生きているのに!!今、何かできるかもしれないのに!!」


ルフェルニアはぎゃんぎゃんと泣きわめき、声をつかえさせながら言うと、あっという間にユリウスの部屋から飛び出て行ってしまった。


_____


(みんな、なんでユリウスが死ぬって言うの…?)


ルフェルニアは、ユリウスの体調が良くならないことも悲しかったが、本人と周りの大人たちが”死ぬことが当然”であるかのような態度をとることに、いつも傷ついていた。


特に今日は、ユリウス本人が生きることを望んでいないようで、「ずっと一緒だと言ったくせに」と悲しみと怒りが混ぜこぜになってしまったのだ。


グリーンハウスに戻り少し落ち着いたルフェルニアは、先ほどの自分の言動が恥ずかしくなった。


(ユリウスと、ユリウスの御両親の方が辛いに決まっているのに。自分勝手に怒って、恥ずかしい。)

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