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ユリウスが癇癪を起した騒動の後、ユリウスの容態が落ち着くと、ルフェルニアは初めてユリウスの両親と面会することになった。
「ルフェルニア嬢、君には大人の都合でいろいろと嫌な思いをさせてすまない。一度離れることをお願いした身で勝手だが、ぜひこれからもユリウスと仲良くしてほしい。」
「ユリウスが怒ったり、笑ったり…、『普通』の生活を遠ざけて窮屈な思いをさせていたのだと、反省しているわ。」
ルフェルニアは、ユリウスの常にない様子を見て、病気の悪化が自分のせいだったらどうしよう、とシラー子爵の横で縮こまっていたが、優しげな表情で話しかけてくれるユリウスの両親を見て、ほっと一息をついた。
落ち着いたところで、ルフェルニアがようやくふたりに目線を合わせると、父サイラスはユリウスと同じ瞳が美しく輝き、母アンナはユリウスと同じ髪が豊かに流れている。ルフェルニアはユリウスと似ているふたりが一目で好きになった。
「私、ユリウスと一緒に居ても良いの…?」
「もちろんだとも!」
「…ルフェ、仲良くするのは良いが、ユリウス様は公爵令息であられるのだから、ちゃんと礼儀正しく接するんだよ?」
サイラスに再度許可を得て、ルフェルニアは満面の笑みを浮かべたが、隣に座る子爵オットマーがルフェルニアを窘めるように口を挟む。
「オットマー、君は相変わらず固いやつだな。ルフェルニア嬢、気にする必要はないよ。
ユリウスも君に気安く接してほしいと思っているさ。」
砕けた様子で話すサイラスにルフェルニアは目を瞬かせながらオットマーに問う。
「お父様は、ユリウスのお父様と昔から仲が良いの…?」
「サイラス様と私は、領地が近いから昔からお互いを知っていたし、学生時代の同級生なんだ。」
「なんだ、ずいぶん薄情な紹介じゃないか。学生時代は色々と一緒に悪さもしたというのに!」
サイラスは揶揄うように笑ったが、一呼吸おいて、打って変わった真剣な表情で話しを切り出す。
「オットマー、今も君の好意に甘えていて申し訳ないのだが、私とアンナがこちらに滞在する日数を増やしてもよいだろうか?」
サイラスとアンナは月に1回子爵寮を訪れていたが、今回の件もあり、病状が進んでいるユリウスの残された時間が少ないことを察していた。公爵領へ戻すことも考えたが、先日の様子を見るに、ルフェルニアと引き離すのはユリウスのためにならない。そう考えたサイラスとアンナは、自分たちが子爵領への滞在を増やすことを願い出たのだ。
「もちろんです。こちらで簡単な執務もできるよう、部屋も用意させましょう。なんといっても学生時代の“悪友”のお願いですからね。」
オットマーが悩む間もなく快く返事をすると、サイラスとアンナは笑顔を浮かべてお礼を言ったが、その声は心なしか震えていた。
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